あなたらしいアライになるために!きっと役に立つ4つの方法 ~P&Gアライ育成研修レポート~
- ビジネスプロデューサー
- 秋田ゆかり
「LGBTQ+の力になりたいけれど…具体的に何をしたら良いのだろう…?」
LGBTという言葉の浸透率が80.1%になっている昨今(『LGBTQ+調査2020』電通ダイバーシティ・ラボより)、こう感じる方も増えているのではないでしょうか?実際に、私も同様の悩みを抱えたことがあります。
そこで、本記事では2021年5月から社外への無償提供を始めたP&Gアライ育成研修に筆者が参加した様子をレポートとしてお届けします。アライとは、LGBTQ+のことを理解し、味方となるLGBTQ+フレンドリーな人のことです。アライになるためのただ1つの正解があるわけではありませんが、自分らしいアライになるためのヒントを、私はこの研修でいくつか見つけることができました。ぜひこのヒントを読者のみなさまにお伝えしたいと思います!
まずは、こちらのケースを想像してみてください
P&Gアライ育成研修の中で、特に印象に残っているのがグループワークです。下記のケースを想定しながら、自分ならどういうアクションを取るかを考え、グループで話し合いました。読者のみなさまも、「自分がこの場に居合わせたら、どういう行動をとるのか」ぜひ考えてみてください。
『先日、近しい同僚から本人のセクシュアリティについてカミングアウトがありました。職場で知っているのはまだあなただけで、差別や誤解が心配だから周囲には言わないで欲しいと言われました。
ある日の休憩中、世間話の流れで、あなたも同僚もいる場で別の同僚の話が出ました。先輩の一人が、「あの人の仕草って時々変わってて気持ち悪いよね…。ひょっとしてホモ!?クライアントや媒体も気持ち悪いって思っているかも。どう思う?」とあなたに話を振りました。カジュアルな雰囲気であったこともあり、周りの皆も笑っていましたが、同僚はとても暗い顔つきをしています。』(『P&Gアライ育成研修』より抜粋)
私はこのケースを想定した時に、きちんと先輩に注意をしなければいけないと思いました。この場で注意をしなければ、きっとこの先輩は他の場所でも同じことを言ってしまい、さらに同僚を傷つけることになると感じたからです。でも、注意の仕方には気を付けないといけない、先輩に注意をするのは勇気がいるな…など、様々な懸念点も同時に思い浮かびました。
グループディスカッションの際に、そういった思いを共有すると、私の懸念点を他の人が感じていたことも分かりました。
「先輩だったらまだ注意しやすいかもしれないけれど、直属の上司だったら上手く注意できるかな?」
「注意の仕方もきちんと考えないといけないよね…。大勢の前で注意されたことで、恥をかかされたと思って、逆上されたら嫌だよね…。」などなど。
読者のみなさまは、どう感じたでしょうか?
あなたらしいアライになるための4つの方法
そこで、研修の中で紹介されたのが、下記の4つの方法です。
スイッチャー:他の話題に切り替える
ストッパー:その場で注意する
シェルター:後から声がけなどのフォローをする
レポーター:ハラスメントを報告する
私自身もはっとさせられたのが、スイッチャーやシェルターの役割です。どうしても、ストッパーとして、同僚を助けなければいけないと強く思っていたのですが、スイッチャーやシェルターの役割を果たすことで、同僚のサポートを行うこともできるということに気づきました。そして、私やチームが感じていた懸念点も、スイッチャーやシェルターであれば回避することができそうです。
この4つの方法は、アライになるための一例ではあるものの、ご紹介したようなケースはまだまだ身近に起こっているのが現実だと思います。アライとして何をすれば良いのかが分からない人など、ぜひこの4つの方法を試してみてください。
P&Gがアライ育成研修に込める想いとは?
ここまでは、アライ育成研修の中身を中心にお伝えしました。それでは、このアライ育成研修を開発し、社外に提供を行うP&Gはどんな想いをこの研修に込めているのでしょうか?P&Gの住友さん・松野さんに取材しました。
(P&G住友さん)
(P&G松野さん)
会社にとって最重要資産は人材であり、多様な人材が自分らしく生き生きと働くことで、良いビジネスが生まれるという考え方をP&Gは重視しています。そのため、30年以上にわたって日本でインクルージョンに取り組んできたP&Gは、2016年に社外向け啓発組織「ダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」を立ち上げ、社外発信を始めました。更なる社外啓発を進めるべく2019年に経営層を巻き込み、LGBTQ+においても2020年から本格的に社内への落とし込みに力を入れたようです。その一環で、アライ育成研修が開発されました。
また、アライ育成研修の社外向け無償提供を推進するきっかけとして、P&Gが2021年に調査した『LGBTQ+とアライ(理解者・支援者)に関する全国調査』があります。こちらの調査によると、LGBTQ+層対象者が自分らしく生きるのに苦労を感じるコミュニティは、20代~60代で職場がトップを占めています。
この憂うべき事態を改善し、誰もが自分らしく活躍できるインクルーシブな職場づくりに貢献したいという想いから、P&Gはアライ育成研修の無償提供を始めたようです。アライ育成研修を通して、伝えたかったメッセージを住友さん・松野さんから頂きました。
住友「身近にLGBTQ+の人がいないという人がいますが、いないのではなく、カミングアウトができていないというのが実情です。自分の職場やチームにもいるかもしれないという想いの下、このアライ育成研修を通して、自分らしく生きることができる職場が増えていって欲しいと思います。」
松野「アライ育成研修では、LGBTQ+を中心にお話をしましたが、LGBTQ+だけではなく、いろいろなダイバーシティのアライになってほしいと思っています。そして、アライ育成研修でお伝えした内容は、他のダイバーシティ課題にも通じるものだと考えています。」
さいごに
アライ育成研修を終えたいま、「あなたらしいアライに」という言葉に何度も背中を押されています。今回ご紹介した4つの方法以外にも、LGBTQ+について学んだり、アライであることをレインボーグッズで表明したり、日ごろの言葉使いを見直したり…アライになるための様々な方法が存在しています。だからこそ、正解があるわけではありません。
アライ育成研修を通してお伝えした4つの方法が、「あなたらしいアライに」なるために役に立てれば幸いです。
電通ダイバーシティ・ラボでは、当事者やアライの声を参考に、具体的なアクションをお伝えする『アライアクションガイド』を作成しています。ぜひこちらもご活用ください。
最新の2022年度版はこちらから。
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