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17 Apr. 2021

行動経済学(ナッジ)とデザイン思考で、地方自治体から政策を変える!

半澤絵里奈
編集長 / プロデューサー
半澤絵里奈

2021年1月、特定非営利活動法人Policy Garage(ポリシーガレージ)が設立された。

地方自治体に軸足を置き、単独では確保が難しいスキルや経験を備えた仲間を提供し、地方自治体、省庁、アカデミア、民間事業者、NPO、市民の間に存在する深い谷を橋渡しすることによって、政策のオープンイノベーションを実現することがミッションだという。

法人の構成員も官公庁や自治体勤務のメンバーを多く含みながら、他に民間からはデザイナーやコンサルティング、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など専門領域は多岐に渡る。

Policy Garageで企画広報を務め、自らも地方自治体職員として政策に携わりながら、大学院にも通いつつ、行動デザインへの探求を続ける大山紘平さんを中心に、同じPolicyGarageのメンバーである勝山明日香さん、赤塚永貴さんの3名に話を伺った。

 

公務員の世界で今、何が起きているのか?

Policy Garageという組織が立ち上がった経緯が非常に気になるが、話を伺うと大きく2点重要なポイントがあると感じた。

一つは、普段の業務を通じて改善の発想が生まれたり、担務以外の領域へのアイデアがあっても、そこに関わる、関わり続けることの難しさ。
担当ではないから関係ないのだという意識ではなく、むしろ「管轄」以外に踏み込むハードルを感じたり、「横やりは失礼になるのではないか?」と躊躇してしまう雰囲気もあるという。
また人事異動などの都合によって、担務が変わることで関わり続けられず残念と思うこともあるようだ。埋もれてしまっている専門性や知見を活用し、改善の発想やアイデアを実践することが今の自治体に必要なのではないか?という想いを持っている。

もう一つは、政策づくりの前提として、政策の対象たる市民のことも完璧すぎる市民像を想定してしまっている傾向があるというもの。人間の人間による人間のための、人間らしい政策づくりを行いたいと訴える。

 

なぜ、今までやってこなかった「共有」をPolicy Garageはするのか?

現在、全国に約1700の市町村がある。これらの自治体が同じタイミングに同じ課題に向き合っていることがある、これは非常にもったいない。公務員というのは、競争性がある企業の社員と異なり、公益性を目的に情報共有をすることが推奨される存在。

だったらもっとやっていこうよ、というのがPolicy Garageの発想のようだ。

情報を共有することで、時間的・人的・開発財源的リソースが効率化する。よい事例は、参考情報として前例として積み重ねられる。うまくいかない事例もみんなのラーニングとなる。自分の所属する自治体では採用されなかったアイデアでも他の自治体で採用されたりする。可能性が拡がっていく。

ただ、これらの動きを自治体や行政という組織同士で行うにはまだ時間がかかりそうなのでPolicy Garageで積極的に挑戦し、蓄積していこうとしている。Policy Garageの扉を開けば、組織では異端児とみられていた自分の仲間が見つかることも多いという。

 

行動経済学(ナッジ)とデザイン思考がなぜ必要なのか

Policy Garageのユニークなアクション手法として、ナッジとデザイン思考を特徴的にあげている。ナッジとは、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が提唱した理論の一つで、「ナッジ=肘で小突く」という言葉が示すように、そっと行動を後押しするような工夫、手助けする方法のこと。また、デザイン思考とは、デザイナーが商品やサービスの先にいるユーザーのことをよく理解してものづくりを行うデザインプロセスの手法を活用して、解決策を生み出すアプローチのこと。

この2つの理論と思考を重要視する理由は、複雑化した社会のなかで徹底的にターゲット(自治体の場合は当該市民)のことをリサーチし、向き合って欲しい課題に対してより良い選択を取ってもらったり、つまづいているときに必要な手助けを行うためだ。

そのためには、行政側のマインドセットを変え、徹底的に人間思考な政策づくりが必要となるため、手法として行動経済学(ナッジ)とデザイン思考を取り入れている。

 

多様な価値観とキャリアのメンバーが集まる組織の面白さ

Policy Garageのメンバーのバッググラウンドは様々。

業種や職種が異なるだけではなく、オンライン環境を活用して国内の異なる地域や海外に在住するメンバーもコミットできるようにして多面的な視点や経験の拡充を強化している。一方で、組織としての輪郭がはっきりしておらず、気付いたら「中の人」になっている!ということも。

その曖昧さ、ゆるさもメンバーにとっては魅力のようだ。

挑戦に対して共感できる仲間を得たり、全員に主体性があることで、1人ではできないことを達成できる実感がある。誰しもが巻き込み合う感じがあり、かつ心理的安全性が高い場だと感じている様子だ。立場が異なる人々が一堂に会する場で心理的安全性を担保するのは非常に難しいことだが、これを支えているのは組織の輪郭の曖昧さや一人ひとりの参加に対する主体性かもしれない。

 

設立から4か月、早くも多様なパートナーとアクション開始

設立からわずか4か月だが、既に複数の活動実績も有している。

例えば、「人間中心な政策立案の手法を体験できる」ワークショップ型研修を北海道、鹿児島県出水市、沖縄県地球温暖化防止活動推進センター等で実施。日々政策を検討するなかですぐ活きるソリューションやノウハウを伴走型支援という形で提供している。また、東京大学公共政策大学院CAMPUS Asiaプログラムでは北海道余市町と連携して、学生を対象に具体的な行政課題を取り上げ、行動経済学とデザイン思考を用いて解決に向かうことを体感する講義も実施しているという。

 

4/21~4/25にかけて、NPO法人設立記念イベントを実施!

そして、NPO法人の設立を記念して2021年4月21日から25日の5日間に渡りオンラインイベントを開催する。
イベント情報詳細はこちらから(事前申し込みが必要です)。

各界の最前線で活躍する方々を招いたオンラインセッションやインタビュー、デザイン思考の体験ワークショップ、参加型の交流セクションなどの複数プログラムを実施予定。現在の業務や働き方に課題感を感じている公務員の方、自治体や行政に関心のある公務員以外の方、「どんな人とも一緒に日本の政策の未来を語る会にしたい」と言う。(本記事の筆者である私も応援メッセージをお送りさせて頂くこととなりました。)

 

取材を終えて

個人の働き方・生き方だけではなく、政策の在り方もアップデートされていく時代に突入している。自治体・行政のスタイルが変わっていけば、私たち市民の生活も確実に変化する。変化の時代、私たちは、それを待つのか?それとも一緒につくりにいくのか?

未来の豊かさは関わる人の多様性で大きくちがってくるのかもしれない。

さあどうしようか?
私はぜひ一緒につくりにいきたい、と感じた。

 

取材・文: 半澤絵里奈
Reporting and Statement: elinahanzawa

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