東日本大震災、あれから8年目の声
- メディアプランナー
- 八木まどか
小森はるかさん(手前)、瀬尾夏美さん(奥)
cococolorでは昨年に引き続き、東日本大震災で被災した地域における現実を追っていく。2018年は自然災害が多い年となったが、1つの災害への向き合い方もひとりひとり異なる。多様性の観点をもつことでお互いの理解や共生への豊かさが生まれるのではないだろうか。
あたらしいまち、あたらしい人間関係、あるいは、大事なものを急に失うような状況に向き合うこととなり、そのときの戸惑いや不安、時には悲しみを語れるまでの道のりは、決して誰もが同じスピードで歩めない。
心の準備ができていないのに、無理やり言葉にさせられるときもある。
東日本大震災からもうすぐ8年。
2012年から岩手県陸前高田市に移り住み、まちの人々の話を聞きながら、報道や大きな組織の中では伝わりづらい「声」を記録し発信し続けた2人の作家がいる。小森はるかさんと(映像作家)、瀬尾夏美さん(画家・作家)である。
彼女たちは東京藝術大学の院生だった2011年に、ボランティアで東北に赴き、そこで見聞きした言葉や風景に惹かれたことをきっかけに移住。美しかったまちが流されたあと、復興工事によってめまぐるしく変わる頃に現地で働きながら映像・絵・文章で記録を残してきた。その中には、明確な言葉にはしにくい人々の寂しさ・戸惑いが映し出されている。
それら記録作品による展覧会を、仙台や東北各地だけでなく、東京、神戸、広島など日本各地で開催。声を届けるとともに、対話の場を作って人々が安心して集まれるしくみを模索してきた。
巡回展「波のした、土のうえ」@KIITOデザイン・クリエイティブセンター神戸
今回、1月~2月の仙台で、彼女たちがほぼ8年のあいだに制作してきた作品がまとまって展示・上映される。今はテレビでも見ることが少なくなった、2011年から数年間の映像や言葉に、今改めて触れてみてはいかがだろうか。
1. ほぼ8年の間に制作した映像作品と新作「二重のまち/交代地のうたを編む(仮)」の上映会
新作「二重のまち/交代地のうたを編む(仮)」より
小森さんと瀬尾さんが2011年以降に陸前高田を中心に記録・制作した映像作品と、2018年9月陸前高田で行った滞在制作から生まれた新作を上映。3日には岡田利規氏(演劇作家・小説家)濱口竜介氏(映画監督)をゲストに迎え、「テキストを発話すること」をテーマにしたミニレクチャーとトークイベントを開催。
日時:2019年2月2日(土)、3日(日)
場所:せんだいメディアテーク7Fスタジオシアター
詳細プログラム、入場料等は以下。
http://komori-seo.main.jp/blog/2018/12/07/hobo8nen/
2. 瀬尾夏美 個展『あわいゆくころ』
2011年から現在まで、陸前高田を中心に沿岸部の人々の暮らしや風景を綴った記録的なテキストによって、被災からあたらしいまちが出来るまでの“あわいの日々”を構成する展覧会。
会場:東北リサーチとアートセンター[TRAC] 東北リサーチとアートセンターHP
会期:2019年1月11日(金)〜2月11日(月・祝)
開室時間:金土日の13:00〜20:00(2/11は臨時開室)
※ただし、2月2日(土)、3日(日)のみ10:00より開室。
そのほか仙台市内で関連イベントが多数行われる。詳細は以下。
☆小森はるか+瀬尾夏美「ほぼ8年感謝祭 あわいの終わり、まちの始まり」
http://komori-seo.main.jp/blog/2018/12/07/hobo8nen/
また、瀬尾夏美さんは初の著書『あわいゆくころ』を2月1日に出版する。昨年クラウドファンディングによってわずか9日間で目標金額を達成して実現。本書は、瀬尾さんが7年間Twitterで発信してきた言葉を〈歩行録〉としてまとめ、各年を語りなおしたエッセイと、未来の視点から当時を語る物語を追加した。映像や展覧会とはまた違った、リアルタイムの言葉も織り交ぜられた「日記文学」である。
瀬尾夏美『あわいゆくころ―陸前高田、震災後を生きる』
https://www.shobunsha.co.jp/?p=5006
彼女たちが丁寧に聞き取った話の中には、かさ上げ地への複雑な思いや、地域コミュニティがバラバラになってしまったことへの不安などが含まれる。そのような可視化しづらい「生きづらさ」の声は、他の被災地の人々の心にも重なりつつ、現代の日本で何かしら「生きづらさ」を抱える心にも響き、今、多くの人々に注目されている
まだ春遠い仙台だが、あたたかくしてぜひ一度足を運んでいただきたい。
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