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Oct.

2020

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2 Oct. 2020

ミュージカル劇団と学ぶ「アンコンシャス・バイアス」

高橋慶生
コピーライター
高橋慶生

人には誰でも「無意識の偏見」があると言われています。偏見というと大げさに聞こえますが、たとえば「あの職種の人ってこういうイメージ」「○○出身の人ってこうだよね」といった、私たちが何となく抱くような「思い込み」と表現すると、考えやすいかもしれません。

 

無意識という言葉の通り、アンコンシャス・バイアス自体はいいものでも、わるいものでもありません(ここは、このテーマを扱うときに私たちも気をつけているところです)。ただ、コミュニケーションにおいては、互いに悪気がなかったとしても、意図せぬすれ違いを生んでしまう可能性がある。そんな観点から、近年注目が集まるテーマでもあります。今回は、筆者のチームで企画した若手向け社内研修についてレポートします。

 

*本研修は2020年2月に実施。受講者はマスクを着用し、手洗い・手指消毒を実施した上で開催しました。

 

マイクを持って話す研修ファシリテーター

研修ファシリテーターを務める音楽座ミュージカルの藤田将範氏

 

体感型の研修プログラムとして一緒に企画・開発してくださったのは、音楽座ミュージカルの皆さんです。同社は日本でも珍しい「オリジナルのミュージカル作品」を上演する劇団であると同時に、シアターラーニングという企業研修を行う顔も持ちます。舞台で活躍する俳優が講師となって、参加者を巻き込んでいく独自のメソッドです。

 

今回の研修実施に向けて、私たちは音楽座さんと打ち合わせを重ね、ロールプレイのためのシナリオを制作しました。「中学校の教員が、林間学校のメインプログラムを決める会議」という設定で、議論を進めていきます。あえてふだんの業務と離れた状況にすることで、対話に集中してもらうことが狙いです。

 

音楽座ミュージカルの俳優によるプロの演技を全員で体感

 

まずはシナリオに沿って、俳優たちが舞台上で議論を繰り広げます。プロの演技に受講生がどんどん引き込まれているのが、会場後方にいた筆者にも伝わってきます。空気が明らかに変わった。そう思いました。

 

時間が進むにつれて、舞台上の議論は混迷を極めます。実はそれぞれの役柄設定に、お互いにアンコンシャス・バイアスが生じるような「すれ違い」を仕込んであります。たとえば、若手の積極性を引き出すために質問を重ねる先輩と、とにかく具体的な指示がほしい後輩、といった具合です。シナリオはあくまで学校現場の設定ですが、たしかにこういう場面、自分たちの仕事にもあるなあ…と実感してもらえたのではないかと思います。

 

グループに分かれて議論する受講生たち

グループに分かれてロールプレイに取り組む受講生

 

そしていよいよ、受講生がグループに分かれて、ロールプレイに取り組みます。それぞれの俳優から役柄のレクチャーを受け、設定や性格を頭に入れますが、具体的な発言や切り返しは、もちろん各自のオリジナルで。会場をあるきながら見ていると、各グループとも積極的に発言しあい、会話自体は盛り上がるものの、なかなか結論がひとつにまとまらずに苦労する様子です。

 

後半に入ると、講師から互いの役柄設定を開示します。「そういうことだったのか」「そりゃすれ違うわ」といった感想が続出。その後も立場やメンバーを変えてロールプレイを重ねましたが、「頭でわかっていても、できないことがある」と感想を伝えてくれた参加者がいました。それこそが、私たちがこの研修で気付いてほしかったことでした。

 

人には誰にでも、「無意識の偏見」がある。だからもっと柔軟なコミュニケーションを取る必要がある。そんな知識を得た直後でさえ、いざ人と向き合えば、伝わらないこと、わからないことはゼロにはならない。そんな「もどかしさ」を体感してもらうことも、アンコンシャス・バイアスというテーマを体感してもらうことに必要だと考えていたからです。

 

コミュニケーションに、唯一の正解はないのだと思います。人と人がわかりあうのは、簡単なことではない。けれども、そこであきらめるのではなく、「わかりあおうとする」その姿勢と行為自体が尊いものである。大げさな言い方かもしれませんが、私たちはそこから始めるしかないのだと思います。

 

何かができるようになることが、学びの基本です。けれども何かが「できないことを知る」こともまた、深い学びである。この研修をつくりあげる中で、自分自身そう実感する機会になりました。

 

ミュージカルらしい大団円で、研修を締めくくる

取材・文: 高橋慶生
Reporting and Statement: yoshiotakahashi

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