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29

Nov.

2022

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6 Oct. 2022

コンテンツにみる家族の多様性~家族のかたちの現在地③~

在原遥子
プロデューサー
在原遥子

家族の定義を点在するエピソードから考察するリレーコラムの第3弾として、コンテンツにみられる家族の多様性や、描かれる家族像の変化をまとめてみたいと思います。

「コンテンツ」といいましてもその形態やメディアは様々ですが、マスメディア、特に地上波テレビが描いてきた家族の変遷から見えてくるものがあるかもしれないと思い、調べてみました。観客がお金を払うエンタメコンテンツではないですし、文字通り「マスメディア」ですので、世相を反映していると見ることもできます。

 

社会の変化とドラマ

 

例えば「渡る世間は鬼ばかり」(1990~2011年放送、TBSテレビ)のようなドラマは、家族3世代が一緒に暮らしていて、親きょうだいの問題に常に巻き込まれている、嫁姑問題も家業に関わるので無視できない…など時代を感じるストーリーです。1993年にはアイコニックな家族ドラマとして「ひとつ屋根の下」(1993~1997年放送、フジテレビ)などもありましたが、両親がいないなか6人兄弟で力を合わせて生きていくお話で、ちょうどバブル崩壊の頃のドラマです。

そのあと、社会的には出生率の減少や晩婚化、離婚率増加、非婚化とドラスティックに進んでいくのですが、「人にやさしく」(2002年放送、フジテレビ)のような血の繋がらない家族にフォーカスしたものや「14才の母」(2006年放送、日本テレビ)「Woman」(2013年放送、日本テレビ)など実際の事件や貧困に向き合うような重めのテーマも出てきました。

上記は恣意的な抜粋ではありますが、そもそもエンタメコンテンツにおいては、普通のよくある家庭を描いてもなんのドラマにもエンタメにもなりませんので、設定や演出として例外的な家族を扱うことも多いということも言えるのではないかと思います。

 

昨今は、地上波ゴールデンプライム帯(夜7時~11時のことを言います)のドラマにも、ダイバーシティが見えるようになってきているなというのは、視聴者である皆さんも感じているかと思います。「最高の離婚」(2013年放送、フジテレビ)が先ほどの「Woman」と同じ年に放送されています。そのあと2016年に皆さんご存知、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBSテレビ)があり、夫婦の在り方、女性の生き方など非常にメッセージ性のあるドラマで社会現象にもなりました。2017年には「過保護のカホコ」(日本テレビ)というドラマがありまして、箱入りで過保護に育てられたカホコが親から自立し、親も子離れして、自分で道を選んでいくというストーリーでした。2020年に「私の家政婦ナギサさん」(TBSテレビ)、2021年に介護と伝統的な能の家系での世襲のテーマを扱った「俺の家の話」(TBSテレビ)、ジェーンスーさん原作の「生きるとか死ぬとか父親とか」(テレビ東京)というドラマ、シングルファーザーが新しい家族をつくっていく「#家族募集します」(TBSテレビ)と、心温まりつつもテーマ性が光るドラマが続きます。それぞれのドラマの名セリフは、皆さんの心に残っているものも多いのではないでしょうか。

 

映画界でのテーマ化

 

続きまして、人々がお金を出してでも見たいエンタメコンテンツ(主に映画)に起こっている家族の描き方については、例えば2018年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」は、実話に基づきつつも犯罪で繋がった家族という点はやはり例外的な設定ではあります。そして2020年にはトランスジェンダーの女性を主人公とした「ミッドナイトスワン」が、日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれました。劇場版「きのう何食べた?」はドラマがヒットして2021年に劇場版まで制作され、興行収入10億円を超えるヒットになりました。

 

上記にご紹介した様々な多様な家族を描いたコンテンツは、賛否両論であることも触れておきます。エンタメのなかで描くリアルの限界に対しての批判はもちろん、逆にマイノリティのストーリーをマスで堂々と展開していくことについてもまだまだ日本社会は違和感なく受け入れているわけではなく、語弊を恐れずに言うと嫌悪感を持つ人もいるということです。メッセージ性・テーマ性が強いドラマを避ける層も多い印象です。そういう意味では、ハリウッド作品などのように、大きなジャンル(アクション、ファンタジーなど)があるなかで、要素としてダイバーシティ表現が溶け込むところまでは来ていないと感じています。エンタメをきっかけに議論が起こるということは非常にいいことだと思いますが、制作側の知識・調査・意図はとても試されているのです。

 

ビジネス観点では、映画化されるコンテンツというのは興行収入や配信収入などで制作費を回収できる計画が必要ということになりますので、このような映画がヒットしていくという流れはすごくいいことで、メッセージとしての作品性・存在意義だけではなく売上が期待されるようになってきていると思います。また、企業の関心も、視聴者・観客の共感を得る作品に寄り添うという手法のマーケティングで、このような作品のニーズがこれから上がっていく可能性があります。

制作側の意識としては、「普通の家族はない」という起点を持つことが重要になると思います。アンコンシャス・バイアスを含めて、受け取る側に「呪いをかけない」ように配慮することも大切だと再認識しました。

刺身のつまから考える家族のかたち~家族のかたちの現在地②~はこちら

「自分の結婚式」がイメージできなかった私の場合~家族のかたちの現在地④はこちら~

 

取材・文: 在原遥子
Reporting and Statement: yokoarihara

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