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3 Apr. 2020

ダボス会議見聞録:加速する経営上のダイバーシティ&インクルージョン

岸本かほり
副編集長 / ストラテジックプランナー
岸本かほり

2020年1月20〜24日にスイス、ダボスで開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の視察に行ってきた。世界中のリーダー達が集まり、世界経済や環境問題など幅広いテーマを議論する。今年は、スウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリさんをはじめとする10代の活動家10名や、米トランプ大統領など各国リーダー層の出席があり、世界的にも大きな注目を集めた。

 

■加速する経営上のダイバーシティ&インクルージョン

今回はその中での、ダイバーシティ&インクルージョンに関連する動きを紹介したい。 ゴールドマンサックスのCEO、デービッド・ソロモン氏の発表、 「最低一人以上のダイバーシティ人材の取締役への起用を、IPO(新規株式公開)の条件とする」というものだ。

 この取り決めは2020年7月より、ヨーロッパ・アメリカを対象に始まり、 2021年以降は、ダイバーシティ人材の数を2人以上とするなど、今後拡大していく予定だ。

2016年以降、1人以上の女性役員がいた企業の方が、そうでない企業と比較し、固定概念に捉われない判断や決定を下したことによって、より良い業績を残す傾向があった。

ESG投資の流れもあり、今後の企業の成長に必要な要素として、投資家もこの部分を投資判断材料とすることは目に見えている。 ゴールドマンサックスは、役員のリーダーにナイジェリア人を配置、11人の役員の中に4人の女性役員が存在する。 彼らの実体験としても、その方が長期視点で見たときに、より賢明な判断が下せることを確信している。

 

 

■日本はこの動きに追随できるか

今回、ヨーロッパ・アメリカ以外の地域は対象になっていないが、その他の地域においても、この影響を受ける日はそう遠くないだろう。 そうなったときに、ダイバーシティ人材の役員登用が遅れている日本企業は、大きな変革を求められることとなる。

 また、今回のこのニュースを海外メディアは「取締役に一人以上のダイバーシティ人材」として報じているのに、 日本メディアの多くは「取締役に一人以上の女性」と強調していることにも注目したい。 日本は“ダイバーシティ”の捉え方・考え方の幅が少し狭いように感じる。

 

ジャパンナイトで各社代表の社長・役員が登壇した際の様子。

 

2019年のジェンダー・ギャップ指数では、153か国中121位と、G7の中で最低のスコアをマークした日本。サイドイベントの中でも、Human Rights Watchのケン・ロス氏が、「東アジア、特に日本はダイバーシティ推進が酷く遅れている。」と訴えた。

彼はこう続けた「東京は、オリンピック・パラリンピック開催をきっかけに世界の注目が集まっているため、問題を認識し始めている。 しかし、その他の地方エリアは進展する兆しがない。 (terribleという言葉が繰り返し使われていた) 」。

 首都圏とその他の地域でダイバーシティに関する理解に大きな差があることを指摘されていた。

私は地方出身のため、東京と地方での差を大きく感じることがある。 日本は、この状態を真摯に捉え、変わるために何が必要なのか?本腰を入れて向き合う必要があるのではないか。

 

 

■ダイバーシティ&インクルージョンが進まないのは、当事者の責任ではない

 ダボス会議のサイドイベントの中で、感銘を受けた言葉がある。

「女性の活躍が進まないのは、女性の問題ではない。女性以外の人々が同様に問題意識を持って動く必要がある。」

 この言葉は、どんな当事者に対しても当てはまるだろう。 活躍を阻んでいるのは、当事者本人ではなく、それ以外の人々だ。 ダイバーシティ&インクルージョンが経営課題の一つの柱になろうとしている今、 変わるためには、当事者も当事者の視点のみから語るのではなく、他者がその問題にどのように関係していて、 改善することでどのようなメリットがあるのか?を実感させることが重要であると感じる。

他者の視点に立って考える想像力を巡らせることで、この先のビジネスや経営において、大きなヒントが見えてくるかもしれない。

取材・文: 岸本かほり
Reporting and Statement: kahorikishimoto

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