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Nov.

2020

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26 Dec. 2019

“SKY”スーパー空気読めないの正体~違いを超えた先にある未来~

高田愛
ソリューションプランナー/産業カウンセラー
高田愛

11月15日(金)開催された「世界の“考え方と仕事のやり方”~常識の裏に隠された非常識への気づき~」というセミナーです。「異文化」の背景を持つ電通・電通グループの社員が 普段感じていることが生の言葉で語られました。


パネリスト5名のうち、3名は、外国人で日本で働いている方。残りの2名は、日本人で海外で働いたことがある方です。1人目スーザンさんは、アイルランド出身。アイルランドの大学で、日本語と国際経営を専攻。滋賀県と大阪で働いた後、外資系広告代理店を経て、2004年から電通勤務。2人目澤さんは、滋賀県出身。北京で3年半の赴任経験あり。3人目カーティケヤさんは、インド出身。2010年に来日。日本が大好きで日本語勉強中。4人目坂本さんは、6~7年目くらいに休職し留学を経験。その後、オーストラリアのクリエーティブブティックに赴任経験あり。5人目スマイリーさんは、イギリスで生まれ、ベルギー、カナダで育ち、カナダの大学で日本語を学び、日本で就職。というパネラーです。どの人も、実感知のこもった、さらに、日本に対して愛のある話をしてくれました。

 

ビジネス上で感じた
カルチャーショック!!とは?

まず、スーザンさんが口火を切る。「クリエーティブ・プレゼンテーションに対する反応の違いに驚きました。クライアントのCMOは、“素晴らしいプレゼンをありがとう”と言われたのに、営業局長が“あまりうまくいかなかったのではないか”と言っていて、彼は、空気を読んでCMOの雰囲気から、ダメなこと感じていた。実際、正式なフィードバックが来た時に、やはりだめでした。ただ、本国のチームに結果を伝えた時に納得してもらうのは、大変でした。」

それに続き、スマイリーさんが「スーザンさん話に少し近いのですが、会議体に驚きを感じる。カナダの大学で、日本の言葉も文化も理解して来たつもりだった。しかし、会議の“YES”と“はい”の違いにぶち当たった。打ち合わせでは、うんうんと頷いている。それを見て、素直に納得して受け入れてるんだ。と思っていたら、打ち合わせから帰ってくると“日本のビジネス何もわかってない!!”と真逆の反応をしているのを見て驚いた。なんで、会議の場で言わないんだろうと思った。ヨーロッパだと、せっかく集まったのだから、その場である程度は決断したいと思う。しかし、日本は、なるべくその場で決めずに、考えた上で返事をしたい気持ちがあるようだ。日本の“YES”は、“はい、わかりました。はい、聞いてます。”という意味なんだなと。」

カーティケアさんは「日本で空気の読み方は、大切なことです。ある日、“カーティケアは、SKYだよ!”と言われた。エス・ケー・ワイ。SKYとは、スーパー空気読めないということ。15年間日本で働いてきたけど、そんなことを言われたのは、初めて!!また、日本に来てからほどなくして“根回し・仁義”を習いました。それまでは、一人で決めることに慣れていました。みんなで決めるというプロセスに驚いたし、ショッキングだった。ショックと言うのは、新しい価値を学ぶということなんです。」

澤さんは、逆に日本人が外国に行ったパターンで、北京赴任の際のエピーソードを語ってくれました。「北京で驚いたのは、スピードでした。経営会議の資料をお願いした。日本の感じだと2日間くらいで戻ってくるな。と構えていると、2時間で戻ってきた。中を見ると、荒いんです。結構雑やなと思った。でも後々、非常に合理的だなと思えるようになった。経営会議で意思決定したいのは、これでしょ。必要な情報はこれでしょ。追加で必要な情報があったら言ってね。みたいに、非常に速いレスポンスが返ってくる。他には、ある時、中国人の方には馴染まない会議のやり方に変えるとなった時に、自分としては1か月後の会議から変えるんやろうなと思っていた。しかし、来週から変えるもんだと思って、みんなが動いているのを見て、それについて行かなと思った。このスピード感は、学ばせてもらいました。」

坂本さんは「日本人なので、出遅れました(笑)オーストラリアのクリエーティブエージェンシーに行ったのですが、日本のクリエーティブでは、戦略もクリエーティブも、とにかくいろいろやりましょう。あえてそうすることで、新しいクリエーティブを生み出そうとしてきた。なので“そもそもこのオリエン違わない?”と言ったら、凄く嫌な顔をされた。向こうでは、マーケの人がブリーフにサインしていたら、そこからしか考えてはいけないんです。それが、どのくらい厳格なものか理解していなかった。また、日系クライアントに対してプレゼンするときに、日本語で話した方が伝わるだろうと思って、営業をサポートしたつもりだったが、逆に営業の人の顔をつぶしてしまった。区切られたプロッフェショナリズムがあり、いちスタッフがやるものではない。ということが、わからなかった。」

 

わかるでしょな
ハイコンテキスト文化と
わかるように伝える責任を問う
ローコンテキスト文化

よく耳にする話ではありますが、改めて、日本は世界の中でも最もハイコンテキストな文化と言われています。背景が共有されていることが前提のコミュニケーションが強まり、情報を受け取る側の能力が、過度に期待されています。これが、空気の正体ですが、空気を読むことに長けている結果、組織や個人の発信能力や説明能力に課題が生じやすい面もあるとのこと。これに対して、ローコンテキスト文化は、クリアに伝えないのは、スピーカーの責任だとするらしいですが、冷静に考えると、どちらも必要な能力ですよね。

 

クオリティーを重視する
ゴルフスタイルと
活発な発言・議論が好まれる
ラグビースタイル

どんな教育を受けてきたかが、会議スタイルに反映します。日本の教育は先生が情報を発信し、生徒はそれを聞く講義スタイルが一般的。会議でも、ゴルフのように1人の発言を周囲が傾聴するスタイルが好まれる。グローバルビジネスでは、会議中の活発な発言議論(ラグビー式)が好まれることが多く、日本人ビジネスパーソンの存在が薄くなりがちです。

これについて、坂本さんどうですか?と振られると「こういう瞬間にコメントできない。振られたら言えるけど。英語の時点で、ビハインドになりやすいですが……みんな40%くらいのアイデアをポンポン言い出す。私としては、90%のアイデアを1つ言ったほうが、いいじゃないかと心の底から思ってしまいなかなかできなかった。40%くらいのアイデアを、言えるようになるのに半年くらいかかりました。これは、どちらがいいというのではなくカルチャーの違いだなと思いました。」

続いて澤さんが「中国で仕事をしていると、ゴルフ式で話す人と、ラグビー式で話す人がごちゃ混ぜになる時がある。最初戸惑っていたが、営業時代にやっていたファシリテートで、いろんな人の意見をテーブルに出した上でどうする?ということで、解決できた。」という経験を語り、それに加えて、スマイリーさんが「チームをマネジメントする立場で、ファシリテートする機会が多い。ゴルフ式の人が多い場合でも、意識してしゃべる場を与えて、ラグビー式にシフトしていくことも出来る。」という自身の経験を語ってくれました。

 

文化ってどうやって作られる?

続いて、林さんにホストのバトンが渡り「オランダの人類文化学者ホフステードさん(元IBM人事)によって、文化という抽象的なものを世界で初めて数値化し、各国で比較できるようになりました。」と紹介がありました。今まで、話されてきたことの裏付けとして、しっくりくる理論なので、簡単にご紹介します。こちらは6つの指標で測られており、その指標は①権力格差「上司のありかた」②集団主義/個人主義「コミュニケーションの仕方」③女性性/男性性「モチベーション、動機付け」④不確実性の回避「ルールや規則への対応、PJマネジメント」⑤短期的志向/長期的志向⑥人生の楽しみ方。このうち①~④は、マネジメントに関わる指標となっています。

例えば、権力格差について言えば、
本日のパネリスト5名の関わっている国でいうと中国、インドは、比較的権力格差の高い国です。「部下は上司からの指示を待っている」といった特徴があります。一方、オーストラリア、イギリス、アイルランドは、比較的権力格差の低い国で「部下のイニシアティブを奨励」するといった特徴があります。

中でも中国は、権力格差の強い国なのですが、澤さん何か経験はありますか?と林さんが振ると「ある部署の人と、別の部署の方でコラボレーションしてもらおうと思ったことがあった。しかし、全く進まない。何故かというと、その仕事は、上司が望むものなのかを非常に気にするからです。それは、上司が1円単位で給与を決めるし、辞める・辞めないも決められるので、こちらの想像するレベルとは別次元で意識することが分かった。」という澤さんの実体験を語ってくれました。

また、個人主義か集団主義かについて、先ほど話した坂本さんの事例でもありましたが、オーストラリアは個人主義の強い国です。個人主義が強いと自分の領域には、徹底的に責任をもってやり抜くプロフェッショナリズムがあります。そのような背景から、他者の領域に踏み込む意見が歓迎されなかったと言えます。

このような異文化の背景を理解することによって、外国の方々と一緒にプロジェクトを進めるうえで、自分のストレス軽減することにもなるし、いいプロジェクトにしていくことが出来るんじゃないかなと思います。と、林さんは結びます。

結果、行きついたのは“AKY”
=あえて空気を読まないということ

ここから、再度野上さんにホストが戻ります。坂本さん、スマイリーさんも「相手の国の文化を理解して、そのやり方を出来るようになっただけだと、逆に、自分の市場価値がなくなる。付加価値が産まれないんじゃないかと思う。自分のバックグラウンドや経験を出していくことで、生き残っていける手掛かりになるのではないかと思う。行った先の文化を理解しつつ、自国の文化の良いところを教えていけると本当のグローバルな社会になるのではないかなと思う。」

カーティケヤさんは「柔軟に対応したり、バランスが大切。状況によって自分が表に出すものと、控えるもののバランスを取ることが重要です。」

スマイリーさんは「カーティケヤさんのSKYの話を聞いて、とても刺さった。僕は逆に、空気を読みすぎた。今、いいと思っているのは、SYKでもKYでもなく “AKY”あえて空気読まない。ということなんです。」

ドイツの経済学者 シュンペーターは「イノベーションの本質は、知と知の新しい組み合わせである。より遠い「知」を掛け合わせることで新しいものが産まれる。」という言葉を残しています。まさに今日のセッションは、この足掛かりとなるのではないかと思います。と野上さんが結びます。

 

最後に、イノベーションの本質に
近づくために必要だと思う言葉

「Coexistence&Empathy」カーティケヤさん
Coexistenceは、共存って訳すんだと思いますが、強みをまず理解するってことだと思います。1つの世界に2つ以上の違う価値観が、エコシステムの中で共存しうるということがCoexistenceの考え方だと思います。会社の中でも、海外拠点でもありますけど、それぞれの価値観がある。シンパシー(同情)と、エンパシー(その人の立場に立って、相手の心を本当に感じること)は似ているけど、違う。「おつかれさま」という言葉は、エンパシーそのものだと思う。ダイバーシティーは外側にあるモノではなくて、自分の考えや頭の中にあるモノ。違う価値観を責めることなく、それぞれを一つのユニットの中で共存させることが大切なことなんだ。

「好奇心」坂本さん 
違う人が、一緒にいるって面白いんじゃないかと思う。よくグローバルの作業は、必要以上に揉めるたり、すれ違ったりすることもあります。違うし、揉めたりするし、理解できないなと一瞬思うこともあるけど、半年後とかに消化できて、あ~だからあの時、揉めたんだとって、次に活かせたりする。“違って、大変なことがある瞬間が面白い”ので、好奇心を持っていきたいと思います。

「アジャイルコミュニケーション」スーザンさん
いつも自分のスタイルが正しいと思うのではなく、相手のことを理解してコミュニケーションスタイルを考えること。同じ会社の中でも、違う文化の場合もあるので、勘違いすることなく相手の背景を理解してコミュニケーション方法を考えることが大切。※野上さん「(かつての経験から)自分のやり方が正しいとか、それを証明しようとするところがある。初めから、アジャイルな心持でいたら違っただろうなと思います。」

「違いを楽しむ」澤さん
より遠い異質なものを組み合わせる~ということが出ていたと思いますが、産業すらも違う人たちとブレストすると噛み合わないことも、喧嘩になることも多い。しかし、そこから想像以上のアイデアが出てくる。一緒に、上がっていく “お!!きたっ”という瞬間が来るので、違いを楽しむことが大切だと思います。

「柔軟性」スマイリーさん
主に考え方の柔軟性が必要だと思います。年齢を重ねても新しい考え方に、柔軟である必要があります。私たちがアウトプットするものについて、それを見る側の文化も考えないといけないと思います。

 

体験談と、理論の裏付けの両者が揃った素晴らしいセミナーでした。一人一人のことばの粒が素敵で、結構忠実に書き起こしています。相手の背景を理解した上で、自分の独自性を出すというのは、相手のことも自分のこともよく知るように努め続けることだと思います。それが、私たちの創造性を高める方法の手掛かりなのだと改めて学ぶことが出来ました。

取材・文: 高田愛
Reporting and Statement: aitakata

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