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13

Apr.

2024

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20 Apr. 2023

インクルーシブデザインをやってみる キッズ向け「くるくるデザインワークショップ」レポート

高田愛
産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
高田愛

4月5日(水)に行われた「くるくるデザインワークショップ」を取材した。これは、dentsu Japan各社で働く社員の子どもたちを対象にベータ版として社会貢献部の運営支援を受けて行われたものである。12名が参加し、最初は、それぞれのグループに子どもたちの発想を形にするサポート役としてファシリテーターがついた。

そもそもインクルーシブデザインとは何か、耳慣れない方もいるかもしれない。インクルーシブデザインは、これまで一般ユーザーから取り残されていた人々に着目することを起点として、より多くの人が機能性を共に享受できる、新たなデザインを共創するアプローチである。例えば、障害のあるアスリートたちの意見や想いを反映して開発した、手を使わずに着脱できるシューズも、その一例といえる。障害のある人だけでなく、子どもを抱えて靴を履いたり、脱いだりしたい子育て中の人、子どもなど、誰にとっても履きやすい商品だ。

つまりデザインされたものが実は、みんなの生活に欠かせないものとなっていくことを、子どものうちから体験し、学ぶことができるのがこのワークショップとなっている。

 

Before Afterの妙

このワークショップの面白いところは、同じお題なのに、インクルーシブデザインに関する情報インプットの前後で、子どもたちが作るものや、コンセプトが全く変わるということだ。お題は「みんなのコップ」を作ること。どのような変化があるのか気になっているだろう。全部素晴らしいが、ここではいくつか紹介する。

このように、作るものが変わり、視点が茫洋としたものからフォーカスがあってくる感じだ。どうしてこのように変化するかというと、インプットに秘密がある。

※手の指が使えない。耳が聞こえない。目が見えない。を体験する子どもたち。

 

変化の秘密:ちょっと変な休憩

その秘密は、講義的なインプットがあるのかと思いきや、みんなで休憩する間に、グループごと4つの不具合を体験することにある。その不具合とは、1人は、手でグーを作りバンテージでぐるぐる巻きにし、指を使えないようにする。2人目は、耳栓をし、ヘッドフォンをつけ耳を聞こえないようにする。3人目は、アイマスクにゴーグルを重ねてつけ、目が見えないようにする。最後の一人は、骨折した時のように利き腕を、使えないようにする。

そして体験するのは、2つのこと。1つは、除菌シートでレジャーシートを拭く。2つ目は、ペットボトルの水を紙コップに注いで飲む、というものだ。そのうち、水を飲むほうを紹介する。

見えない子が手探りでペットボトルのふたを開け、「水を注ぐから、コップを注ぎ口に当てて」と周囲に声をかける。すると周囲は、こぼれないようにコップを合わせに行く。耳が聞こえない子は、ミッションや状況を理解してもらうため、よく観察して、大きなジェスチャーで関わっていく。利き腕が固定されていると、動きに制限ができコップを倒してしまった瞬間もあった。

いつもは感じることのない不自由さの中で、それぞれが気が付いたことがあり、また、自然に声を掛け合いながら体験をしていく様子にも感慨深いものがあった。そして参加してくれた子どもたちのアンケートでは、楽しかったこと№1はこの体験なのだ。


※与えられた15分で、真剣にコップを作る子どもたち。「短い~」と漏らす子も、ファシリテーターから「時間もデザインだよ」と声掛けすると、即、気持ちを切り替えていた。

みんなの学び:3つのいいことと、気づき

このワークショップの3つのいいことは、「はじめて会った友だちと仲よくできた」「子どものころからいろんな視点を持つきっかけとなった」「作品を作り、みんなの前で発表することができた」である。

そして、ワークショップを通じて何を学んだのか、アンケート回答を見てみよう。それぞれ、大人びていて面白いのだが「デザインは、かっこいいとか、きれいとか、面白いだけではなくて、みんなにわかりやすくデザインする事も大事な事だと思いました。奥が深いと思いました。」「“デザイン”について、アートのことではなく計画も含まれる考え方であり、時刻表やこのワークショップ自体もデザインだということを初めて知った」など、デザインの概念が広がった様子。

また、他には、「1つ目のカップは何も考えずに、ただ楽しく作れた。2つ目は、指がくっついている人が飲みやすいようにしたし、指がくっついていないには滑り止めにもなるコップにした。どうやったら指がくっついている人が飲めるようになるか考えることが楽しかった。」など、ただ好きなようにコップを作るのもいいけど、どうやったら困っている人のためのコップが作れるかを考えるのも、両方楽しかったという感想があった。

そして、ワークショップの中でそれぞれの不自由さに関する解説があったところ「目が見えない人にとって、目が見えない状態はそれが普通の状態であって、かわいそうだということではないということが分かった。困っていることを解決しつつ楽しめるような工夫、デザインをしてみたい。」など、体験して得た視点で今後もデザインしてみたいという意見もあった。

最後に、記者である私の息子もこのワークショップに参加しており、親の目線から感想を述べてみる。もともと息子は、作ることが大好きで、毎日何かしら作っている。特に、ロボットや武器に凝っていて、ドカーンバーン、がお決まりだ。親としては、時々心配になることもある。意識している3つのことは、「視点のバリエーションを持てるように」「様々な立場に立って考えられるように」「作成意図を説明できるように」で、本や体験、コンテンツにさりげなく触れられるようにしている。今回のワークショップは、この3つが揃っているのだ。息子にとって、人生を豊かにする宝物のような2時間半となったはず。もっと、多くの子どもたちにも参加してもらいたい。そして、私自身もインクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違いを認識したり、それをきっかけに参加者の親御さんと会話したり、家に帰って家族と会話する中で、親も一緒に気が付いたり、学んで行けるのも嬉しい。

商品や、街や、サービスをデザインするとき、アプローチの一つとして、困りごとのあるのことを考えることから、みんなもうれしいデザインが生まれるかもしれない。自分がいつもと違う不自由な体験をすることで、これまで思いもしなかったことに気が付く。それが、発想のもとになっていくことを体感できた春休み最終日だった。

 

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取材・文: 高田愛
Reporting and Statement: aitakata

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