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Mar.

2019

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28 Jan. 2019

「世界の障害のある子どもたちの写真展プロジェクト(後編)」

国が違っても世界の子ども達は皆ポジティブなエネルギーにあふれていました。

世界4カ国で子ども達を撮影して感じたことは、国によって障害者への意識が全く違っているという文化の違いです。ミャンマーはまだ専門の施設もなく、人々は障害者への認識がほとんどありません。現地で雇用したガイド兼通訳もダウン症や自閉症について知識が全くなく、「それはうつらないのか?」と言っていたほどでした。
かたや、英国は生まれ持った障害は個性ととらえる文化があり、街で障害者をよく見かけます。人々は、彼らを特別扱いするわけでなく、普通に接して当たり前のことのように手助けしています。また、福祉施設も日本だと、ダウン症も自閉症も「療育センター」という同じ施設で一緒にされていますが、英国は障害の種類、症状、年齢に応じて入れる場所が細かく別れています。
そんな福祉の状況から人々の意識まで、日本は英国に10年は遅れていると感じました。ミャンマーはその日本にも追いついていないと言えるでしょう。でも、ミャンマーはまだ新興国なので、これから発展していくでしょうが、開発途上国の中には障害児が生まれたら魔物扱いされ遺棄されている国もあると聞きます。

それでも国や文化が違っても、撮影してきた世界の子ども達については、皆ポジティブなエネルギーにあふれていて、家族の中で大切に育てられていました。そして、毎回感じるのは、心がきれいというか、とても純粋な「魂」に触れている感じがして、撮っていくにつれ、こちらの心が洗われていく感覚がありました。ご家族は皆とても仲がいい方ばかりでしたが、ひょっとしたら、その子がいることでまとまっているのかもしれないという気がしました。

Fumio Nabata Children Images

Taken by Fumio Nabata

 
ロンドン写真展に向けて

ミャンマー、南アフリカ取材の後、その都度英国に立ち寄り、写真展会場の交渉やコラボレーションする写真家らと打ち合わせを重ねていきました。
「Shifting Perspective」メンバーに、出生前診断でダウン症とわかった上で産むと決めた妊婦のポートレートを撮影しているフィオナ・イーロン・フィールド氏が加わり、リチャード ・ベイリー氏の 成人して様々な職業につき自立している姿の作品と、名畑文巨の世界の子どもたちとで、ダウン症のある人の人生を表現する展示構成に決まりました。現在日本では、出生前診断で胎児がダウン症とわかると96%の人が堕胎を選択しています。英国でも同じような状況だと言います。「写真展がそんな苦渋の選択をしなければならない人たちの、不安な気持ちを取り除けるきっかけになれるようなものにしよう」というところで3人の意見が一致しました。

そして本年5月に、写真展「Positive Energies」は、二つの財団やNPO法人からの助成・協賛を得て、日本大使館、ジャパンソサエティ、日本・英国・ミャンマー・南アフリカ各国のダウン症協会の後援を得てロンドンで開催されました。そして2019年は南アメリカ取材(予定)を経て2020年に東京五輪の関連事業としての開催を目標しています。

 

美しい写真が偏見を取り除いていく

最後にこの写真展への想いとコンセプトについてお話しします。
私は子どもを撮るときに大事にしている心構えがあります。それはその子を全面的に受け入れることから始めることです。わがままでも、いたずら好きでも、その子の性格や価値観を全部を受け入れて、その上でたくさんのおもちゃを駆使してテンションを上げていって、子どもの持つポジティブなエネルギーを引き出していきます。ふざけてばかりで、言うことを聞いてくれなくても絶対に怒ることはありません。だから撮影した子どもには、いつもとても好かれています。

そうやって子どものポジティブなエネルギーを引き出して撮った写真は、人に希望を与えることができます。そして障害のある子どもにはそのエネルギーに強いものがあることに気がつきました。どちらと言うと、世の中の人々の障害者へのイメージは、障害のある部分をクローズアップした、ネガティブなイメージが大きいと思います。でも、このとても強いエネルギーは、ネガティブどころか、多くの人に希望を与えられるものではないかと思いました。

そして、私の撮影する子どもたちの写真は広告写真のようなキレイな撮り方をして、幸せそうな笑顔のいい部分だけを見せています。もちろん、ご家族にとっては育児も大変だろうし、いろいろな苦労もあると思います。でも、私はこの見せ方が一番必要だと思っています。
今回の展示のコンセプトについて、リチャードさんやフィオナさんとディスカッションをしました 。彼らはダウン症の子どもを持つ親なので、私とは違う想いがありました。作品はいい部分だけではなく、現実のリアルな部分も伝えなければダメだと言いました。いい面も、大変な面も伝えて、その上で理解してもらいたいという想いでした。
確かにそれも必要だとは思います。でも、私は当事者ではないだけに、彼らとは別の視点でとらえることができると思っています。かつて自分も偏見を持っていただけに、偏見をぶち破るには何が必要かがわかる気がするのです。偏見を持っている人たちの認識を変えるには、「こんな良い部分があるんだ」と、美しい写真でいい面を見せることで、今までのネガティブなイメージを払拭させて、まずは受け入れさせることが必要だと思います。一旦受け入れられてしまえば、リアルな現実は後から自然と受け入れられていくものではないでしょうか。

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偏見を持っていて、恐れて受け入れなければ、いつまでも人の意識は変わらないと思います。 今、LGBTの人たちが、社会に受け入れられつつあります。一昔前までは偏見の対象でしかなかった彼らが、同性婚を認める国も出てきて、普通に個性として受け入れられてきています。一旦受け 入れると、「なかなかユニークだな」とか、「こんないい面があるんだ」など、良い部分が 見えてくるのだと思います。

私は子どもの撮影をするときに、積極的に相手の全てを受け入れることで、Positive Energyという 素晴らしい面を見つけることができました。だから障害者への接しかたも、「なんとなく怖 いし、面倒だから関わらないでおこう」など消極的な考えではなくて、「多様性を受け入れるこ とで、自分が豊かになれるかも」という積極的な考えをしてみるという、発想の転換に気付けばいいのです。この写真展「Positive Energies」が、子どもたちの前向きな部分を見せることで、 その「気付き」へのきっかけになれればいいと思っています。

寄稿:名畑文巨(写真家)
URL:「世界の障害のある子どもたち写真展プロジェクト

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor
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