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17 Aug. 2018

高齢者の意欲と自信を引き出す、アクティビティとしてのテレビゲームとは!?

坂野広奈
プランナー
坂野広奈

「TECHNOLOGY Meets DIVERSITY」は最先端のテクノロジーやイノベーションを、ダイバーシティ&インクルージョンの視点から探求するプロジェクトです。

プロジェクト3本目に当たる本記事では、電通ダイバーシティ・ラボが扱う4つの領域の中で、ジェネレーションにスポットを当てました。

 

テレビゲーム×高齢者という新しいチャレンジ

テクノロジーを活用して高齢者に対するアクティビティを活性化している場所があると聞きつけ、神奈川県横浜市にある<プレイケアセンター横浜青葉>に取材に行ってきました。

こちらのケアセンターは介護老人福祉施設創生園の1階を活用して、周辺地域の方々に「健康」と「交流」を目的に、健康寿命延伸のためのアクティビティを提供している場です

TMD_3_2プレイケアセンター横浜青葉は、介護老人福祉施設創生園の1階にあります

 

私たちを大きな笑顔で出迎えてくださったのは、日本アクティビティ協会理事長でプレイケア代表の川崎陽一さんです。

TMD_3_3日本アクティビティ協会理事長兼プレイケア代表の川崎陽一さん

川崎さんが理事長を務める日本アクティビティ協会は、1997年の設立当初から、アクティビティを通じた高齢者の社会参加寿命の延伸を支援する様々な活動を行っています。

高齢者のコミュニティーでは、男性の参加率が低いという慢性的な課題があるのですが、昨年末、その課題に対してテレビゲームを使用した交流会を行ったところ、非常に大きく盛り上がり、男性参加比率が大幅にアップしたそうです。

今回は、実際にこの交流会に参加された方々4名にもお話をうかがいました。

 

ゲーム交流会に参加して

TMD_3_4ゲーム交流会参加者の中山さん(左)と松橋さん(右)

「本当に楽しかった」「また参加したい」と、ゲーム交流会の様子を話して下さったのは、体験者の中山さんと松橋さんです。プレイケアセンターでは、毎週1~3回ほど、体操や絵葉書作成など、様々なアクティビティが行われていますが、中山さんと松橋さんはその常連メンバーとして、自宅から通って参加しています。

お二人とも、テレビゲームに慣れ親しんでこなかったために、始める前は少しの抵抗感があったようですが、いざゲームが始まると勝ち負けに拘るほどに夢中してしまったと教えてくれました。中山さんは、「優勝しちゃったの!」と嬉しそうに賞状を持って来てくれました。

TMD_3_5ゲーム交流会での優勝賞状は、普段はご自宅で大切に飾っているとの事でした。

ゲーム交流会は目新しいアクティビティであるため、普段イベントに参加していない御友人にも声をかけやすく、新たな交流に繋がるといった発見もあったそうです。

 

続いて、この交流会にゲームの使い方を指導する立場で参加された奈良さんと角張さんにもお話を伺いました。

介護老人福祉施設創生園のスタッフでもある奈良さんは指導士の体験を通じて、生きる為に必須な「食べる」「出す」「寝る」にフォーカスされてしまっている高齢者の生活に、「楽しむ」要素を加えることの大切さを感じたとおっしゃっていました。

TMD_3_6ゲーム指導士として交流会に参加された奈良さん(左)と角張さん(中央)

角張さんは高齢者の課題として、話すきっかけや外出するきっかけがない為に孤立してしまうことを挙げられていました。

車の運転ゲームなどを行った交流会には、普段のアクティビティには参加しない男性も多く参加して盛り上がった為、今後も積極的に行っていきたいと感じたそうです。

 

高齢者アクティビティの課題とは

TMD_3_7

今回のゲーム交流会のように常に高齢者が楽しめる取り組みを考えていらっしゃる川崎さんですが、現在のような活動を始めたのはおもちゃメーカーバンダイに勤めていらっしゃった時であったそうです。

プライベートでたまたま参加された高齢者に対するボランティア活動で、高齢者が集まる機会があっても、そこで提供するコンテンツが不足している事に気づき、元々の知見を用いてアクティビティを提供されたのがきっかけでした。

 

そんな川崎さんは「通い場の創造」「担い手の発掘」「コンテンツ開発」の3点にたって高齢者向けアクティビティに関する活動をされています。

超高齢化社会である日本は、シニアマーケットにおいて世界に先駆ける程大きな市場を持っており、国が進めるヘルスケア産業の活性化や公的保険外サービスの強化に伴い、特に各地域での高齢者向けアクティビティニーズは拡大しています。

しかしそのようにアクティビティへの需要が高まる中でも、実際のアクティビティをやる場所、やる人、やる内容について、最適なマッチングができておらず、活動の十分な供給ができていないという課題があるそうです。

川崎さんが代表を務めるプレイケアでは、高齢者向け商品/サービス開発をしているメーカー企業等と地方自治体などを繋げる仲介者として立ち、最適化なコンテンツ創出に取り組む事で、ニーズのある地域でのアクティビティ活動を行っています。

 

これらの活動で永続的に成果を出すためには内容の工夫だけでなく、利益を獲得するビジネスモデルを作る事も重要だとおっしゃっていました。

プレイケアでは、メーカーに活動への出資をしてもらう代わりに、メーカーの高齢者向け商品/サービスを実際に体験してもらう場を作るなど、お互いに利益を得る事ができる取り組みをされています。

 

テクノロジー×ジェネレーションの領域と可能性

最後に、テクノロジー×ダイバーシティの可能性について川崎さんに伺いました。

シニアマーケット領域においても、介護ロボットなど徐々にテクノロジーが関わり始めており、VRなどの新たな技術が関係する可能性は高まっています。一方で「コンテンツ開発」を、常に高齢者目線で考えていらっしゃる川崎さんは、どんな技術についても利用者に合わせて柔軟に最適化させていくべきだと仰っていました。

例えば、現状のVR / AR技術はゲームなどエンターテインメントの領域で利用される事が多いですが、それをそのまま高齢者支援に活用しようとすると、イベントのような非日常の体験で終わってしまいます。

本来の目的である高齢者が日常的に楽しめるツールとしてこれらの技術を用いるには、実際に利用する高齢者の立場に立って、ニーズを再考する必要があると感じました。

 

おわりに

技術を、ユーザー目線に立って利用者が使いたくなるように都度最適化をすべきというお話が印象に残りました。きちんとそれぞれの人の視点から「本当に求めているものはなにか」考えていくことが、テクノロジーを活用したイノベーションの第一歩だと思います。

また、創生園で会った皆さん(体験者、指導士、川崎さん)の目がキラキラ輝いていた事も非常に印象的でした。テクノロジーには、年齢や年代の壁を超越する力があることを、皆さんの生き生きとした表情から強く感じられました。

TMD_3_8左から、坂野、川崎さん、大塚

 

取材・文: 坂野広奈
Reporting and Statement: hirona

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