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Dec.

2024

column
10 Sep. 2020

今、こどもと一緒に学びたい「人種」のはなし

半澤絵里奈
編集長 / プロデューサー
半澤絵里奈

人種問題は以前から数多く存在する一方で、その全体を捉え、さらに整理することは難易度が高い。
ゆえに、「こどもに説明することを諦めている」自分に気付かされてしまった出来事がある。

この夏、8歳の娘から”ブラックライブズマター”という言葉が飛び出した。
テレビやラジオの番組で知ったらしく、アメリカで起きたジョージ・フロイド殺害事件のことも理解しているようだ。
しかし、その事件を1つの点ではなく、過去から続く文脈を含め人種問題として面で捉えることはまだ彼女には難しい。

私には3つの選択肢があった。
A.ひどい事件だね、と相槌を打って終わる
B.ジョージ・フロイド殺害事件をきっかけにアメリカにおける人種問題を娘と探究する
C.まずは人種や人の多様性を知る機会をつくる


実は私自身、幼少期に海外で暮らす中で人種のちがいによる差別行為を受けた1人だ。だから(A)の選択肢はまず消えた。それに、日本が島国とはいえ、少子化によって日本も多様化するだろうし、このグローバル&情報化社会で、人種問題との向き合いは避けられない。(B)と(C)で迷ったが、アメリカの人種問題については、私自身の知識や学びが不足していると感じたので(C)で娘と向き合うことにした。

そして、本を2冊準備した。

1.せかいのひとびと(原書:People)



オランダ出身の作家であるピーター・スピアー氏の絵本。評論社によると「私たちのこの地球には、いったいどんな人たちが暮らしているんだろう? 体の大きさ、肌の色、顔の形、住んでる家、好きな遊び、話す言葉…。世界にはさまざまな民族、風習、言語、文化などがあることを、やさしく説明。それぞれがちがっていることの素晴らしさを伝える大型絵本」。現在は小学4年生向けの国語の教科書にも採用されているそうだ。この本は私自身が母から与えられ、小さい頃より何度も読み返しているもの。見た目の違い、生活文化のちがいという人種の話から拡張して、そもそも1人1人が違うということに目が向けられている。この絵本の終わりには、世界の魅力は違いによって作られているんだということが発見できるページが待っている。


2.人間図鑑



いろは出版によると「世界には、たくさんの当たり前がある。『みんな ちがって 当たり前』体や生活や考え方など、人間のあらゆるちがいを集めてイラストで紹介。友達や家族、遠い国のみんなのことを思いやる気持ちを育てます。多様性を学ぶ入門書として、親子で楽しく読める図鑑です」とのこと。<体のちがい><生活のちがい><コミュニケーションのちがい><感じ方のちがい><考え方のちがい>という5領域に分けて紹介されているのは人々の多様性。人種について学ぶヒント以外にも、ダイバーシティ課題全体に触れられるものになっている。出版社によると小学校中高学年向けということだったが、低学年でもイラストを中心に楽しめるつくりになっている。

 

準備したこれらの本について、「人種の勉強しよう」などと言わずに娘の前にぽんとおいておくことからスタートした。
娘が先に手に取ったのは「人間図鑑」で、数日かけて丁寧に読み、知っていることも知らないこともいっぱい書いてあって面白いよと言う。そして「せかいのひとびと」もさらっと確認。

本は読み終わっているが、人種問題についての議論はまだ始めていない。大人が大人の価値観で伝えようとすると、こどもは「それが正しいこと」だと受け止めて考えが固定されてしまったり、反発したりという現象が起きる。だから私は今、それぞれが読んだこの2冊の本について話す別の機会を急がずに探している。コロナ禍の今、海外旅行に連れていって多様なオリジンを持つ人たちと交流をはかることは難しいので、コンテンツを通して少しずつ娘と対話していくつもりだ。



私と娘の関係においては、本による探究学習がとても有効だと感じているが、どんなコンテンツがより理解や共感を得やすいかは人それぞれ。
アメリカの人種問題を知ろうとするなかで、セサミストリートに出てくるエルモというキャラクターがお父さんにブラックライブスマターの問題に関連した抗議活動について質問をする動画がある。こどもの視点からわかりやすく描かれていたので最後に紹介したい。

取材・文: 半澤絵里奈
Reporting and Statement: elinahanzawa

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