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Oct.

2024

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17 Dec. 2018

“セックスのタブー”に挑むヘルスケアブランド

大塚深冬
プランナー
大塚深冬

性文化が抱える問題に対して、独自の価値観とプロダクトで挑むソーシャルベンチャーがあります。

韓国発のヘルスケアブランドEVE(イーヴ)は、“誰もが買えるコンドーム”やオーガニック生理用品を生産販売し、韓国社会の性意識に変革をもたらしています。

11月29日、渋谷で開催されたMASHING UPにEVEの創立者の一人パク・ジーナ氏がキーノートとして登壇しました。パク氏のプレゼンテーションとご本人へのインタビューを通して、性について考えを深めていきたいと思います。

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MASHING UP公式ページより

※MASHING UPとは、国籍や性別、業種や分野の垣根を超えて人々を混ぜ合わせること(=mashing up)で化学反応を生み出そうとするビジネスカンファレンス。2018年2月の初回に続く第2弾が11月29日と30日に渋谷TRUNK(HOTEL)にて開催された。

 

“タブー” と ”恥ずかしさ” という障壁

“10代の性交渉はタブー”とされてきた韓国では、今日でも若者がコンドームを購入する際に冷ややかな目で見られることや、女性は時に嫌がらせを受けることがあるといいます。学校も性教育については積極的ではなく、購入という行為自体に恥じらいや不快感がつきまとう環境下で10代の避妊率は40%とも60%ともいわれています。望まない妊娠の原因の一つと考えられています。

※EVEが実施したコンドームの無料配布プロジェクトを通した調査では約40%、韓国疾病管理本部(KDCD)の青少年健康行動報告書では約60%とされている。

 

韓国だけではありません。程度に差はあれど、アジアの国々では同様な問題が根付いていることは、欧米諸国と比べると顕著といえます。これは日本にも当てはまる話ではないでしょうか。コンドームが”アダルドグッズ”と呼ばれる韓国で、この問題に立ち向かうために3名の若者がEVEを立ち上げたのは2015年のことでした。

 

“誰もが買える”コンドームを

パク氏のプレゼンテーションは、“SEX”と書かれた一枚のスライドから始まりました。

mashing up cococolor photo (4)

 

「セックス。それは誰もがすることなのに、なかなか話されないものです。“話すべきではない”という社会的な固定概念が、セックスを“隠れた存在”にしています。コンドームは成人男性を対象にした挑発的なマーケティングがされ、女性は買うこと自体が難しい現状があるのです。」

 

アダルトグッズ” ではなく “ヘルスケアブランド”

年齢や性別・ジェンダーに関係なく、セックスを身近で快適なものにしたい。「健康」「自然」「平等」の三つのバリューを軸にビジネスを展開するEVE、その最初の製品はコンドームでした。

従来品とは異なり、動物実験も行わず動物性素材も使われないEVEの製品は、韓国初の“ヴィーガン”コンドームです。購入への恥ずかしさを払拭するために“ヘルスケアプロダクト”と位置づけ、デザインされ、販売経路もオンラインに絞りました。結果、購入者の約8割が成人男性といわれる通常のコンドームに対して、EVE製品は約8割が女性です。コンドームの後には、オーガニックのルブリカント・潤滑剤(通称ラブローション)を作っています。mashing up cococolor photo (5)

EVEが次に着目した分野は、セックスと同じように“話されず“に“隠れている”もの、月経です。月経中の女性の不快感や負担は軽減できるという信念のもと、ナプキンとタンポンに代わる新しい選択肢として独自の月経カップと月経パンティを開発しました。

ナプキンやタンポンはその廃棄物の量が環境問題となる中で、EVEの開発したプロダクトはどちらもリユースが可能です。2017年韓国で、あるメーカーの生理用ナプキンから有害物質が発見されたことは、韓国国民の、特に女性を震撼させるニュースとなりました。そのブランドシェアは20%ともいわれています。EVEのビジネスとは、消費者の身体に良いものを作りながら、環境と社会の問題にも真っ向から挑んでいるのです。

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月経カップと月経パンティ EVE公式ページより

EVEは現在、教師に対する性教育指導やカリキュラムの作成も行っています。3名の創立者はForbes紙の30 UNDER 30 ASIAに選出され、社は米ベネフィット・コーポレーションとして認可されています。「いずれ性領域におけるパタゴニア社のようになりたい」と語るパク氏は、2019年には日本での展開も検討。現在ビジネスパートナーを探しています。

※ベネフィット・コーポレーションとは2010年に米国でうまれた、株主優先主義と異なる新しい企業形態を指す。公共の利益や持続可能な価値の創造、社会と環境への影響にも配慮する企業に適用される。

 

愛、健康、セックス

早くも世界的に注目されるビジネスに成長したEVEですが、創立時は3名全員が20代前半。その功績やステージ上での雄弁な様子とは異なり、インタビューの席で直接お会いしたパク氏は、気鋭の新進若手起業家という一面の裏にある、若々しく気さくで謙虚な一面をみせてくれました。

女性目線で語られることの多いEVEのコンドームですが、本質的にはジェンダーフリーでユニバーサルです。実際韓国では、女性が使い始めるケースが多いですが、彼女に紹介されたからと使い始めた男性からも支持されているようです。恋人同士がEVE製品を選ぶことは、相手の身体への思いやりの意思表明ともいえます。本当に愛しているからこそ使ってほしいと語るパク氏の眼差しから、自社のビジネスにかける熱い思いと、人間に対する深い愛情を感じ取りました。

 

誰もが健全に平等に愛しあえる社会を目指して

quote

これは、パク氏がプレゼンテーションを締めくくった一言です。インタビューの席でも繰り返し、人にも地球環境にも健康な選択肢があることの意義、人が人を愛する権利は平等に与えられていることを話してくれました。

社会の意識が変わるには、時間がかかるでしょう。パク氏自身も、10年はかかるかもしれないと推測しています。しかしEVEは自社のビジネスを通して、少しずつであっても確実に、社会全体の意識を変革しているといえるでしょう。

本稿を通じて、自分自身やパートナーの性への考えを深められる、また健康や愛についても気づきがうまれたら嬉しく思います。

最後に、この様な記事を書く機会を与えてくださったMASHING UP事務局と、そして、パク・ジーナ氏に対してcococolor編集部より御礼申し上げます。

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参照リンク:
MASHING UP 公式ページ
EVE コンドーム 公式ページ (韓国語)
ベネフィット・コーポレーション(英語)

取材・文: 大塚深冬
Reporting and Statement: mifuyu

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