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Nov.

2024

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20 Dec. 2018

みんなで山形の空を飛びたい!~ユニバーサルツーリズム体験記~

八木まどか
メディアプランナー
八木まどか

 「空の上に障害は関係ない~ユニバーサルツーリズムの課題~」で、加藤健一さんが立ち上げた山形バリアフリー観光ツアーセンター(以下ツアーセンター)を紹介した。10月末にツアーを実施すると聞き、車椅子専用パラグライダーの体験をメインとした山形県南陽市でのツアーに同行した。

東京から参加したのは、黒田さんと相馬さん。黒田さんは10年前から車椅子を利用している。二人は長年の友人でこれまでも国内外の旅行を共にしてきた。今回は、車椅子でパラグライダーが出来ると聞き、山形のツアーに申し込んだ。
案内人としてツアーセンターの加藤さん、そして筆者が加わった。

天候都合により、一部プランを変更しながら以下の行程となった。
【1日目】車椅子専用パラグライダー体験⇒熊野大社参拝⇒赤湯温泉宿泊
【2日目】ぶどう狩り⇒シベールファクトリーパーク見学・昼食⇒蔵王周辺散策


いざ、山形の空へ!

山形県南陽市赤湯駅に集合し、タクシーと自動車で移動。米沢牛のランチを味わったあと、パラグライダーをすべく、飛行場である南陽スカイパークを訪問した。

到着すると、そこには置賜盆地が一望できる壮大な景色が広がっていた。パラグライダーの飛行場は山の中腹にあって徒歩移動を要することが多く、車椅子での移動が困難な場合が目立つ。しかし、この南陽スカイパークは駅から近く、フライトエリアまで車で行けるため、車椅子ユーザーの移動が可能だ。

この日は、残念ながら強風のためにパラグライダーの実施を見送ることになった。

スカイスポーツは天候や風に大きく左右されるものである。加えて、車椅子パラグライダーの実施に際しては、より一層厳しめの安全面配慮をしており、今回のように実施できないこともある。

フライトが出来ず残念ではあったが、ツアーの案内人として経験豊富な加藤さんのエスコートにより、車椅子で訪れることを諦めがちな場所に訪れ、絶景を味わうことが出来た。

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右から、加藤さん、黒田さん、相馬さん

その後、室内でのシミュレーションを体験できるということで訪れたのは、ソアリングシステムパラグライダースクール。「車椅子でパラグライダーに挑戦したい!」という加藤さんの思いに賛同し、パラグライダー専用車椅子の開発や体験フライトに取り組んできた方々が開発したシミュレーターを体験した。

3 パラグライダー専用車椅子シミュレーターを体験する黒田さん。

パラグライダー飛行をする際、自身の体を安定させるにはある程度の経験を要するのだが、日頃から運動をしている黒田さんは、初体験にもかかわらず、すぐに体を安定させることができた。飛行中を想定して車椅子を揺らすと、むしろ楽しそうだった。

ソアリングシステムでは、加藤さんとの出会いをきっかけに、車椅子の製品改良や全国各地からの車椅子フライトの受入れ等、加藤さんと共にチャレンジを続けている。

 

南陽市周辺を巡る

その後、「東北の伊勢」とも呼ばれ、日本三大熊野の一つである熊野大社を訪問。

通常は階段(おみさか)を登ったところに社があるが、足腰の不自由な方や車椅子利用者の参拝のために、裏道を通ることで神社境内まで車で上ることができ、車椅子のまま参拝することが可能となっている。

神社の境内はほとんどが砂利道や石畳なので、車椅子ユーザーや足腰の不自由な高齢者の方にとってやや動きづらく境内の散策を諦めがちだ。しかし、熊野大社では「JINRIKI」という人力車のように前から車椅子を引っ張ることができる車椅子用の補助器具のレンタルをしているので、それを車椅子に装着することで移動をスムーズにすることができる。黒田さんと相馬さんは初めて「JINRIKI」を利用したが「これはすごい!」と言って境内をあちこち巡って楽しむことができた。

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参拝をする黒田さんと相馬さん。スロープがついているので、賽銭箱の前まで行ける。

参拝後は、今回の宿泊先である赤湯温泉の大文字屋へ。

宿にはバリアフリーに配慮した温泉付きの客室を複数備えている。夜は、源泉かけ流しの温泉や、山形の食材をふんだんに使った秋ならではの味覚を堪能し、眠りについた。

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山形の名所を巡りながら

 

翌日は、朝から雨。パラグライダーのフライトを断念し、加藤さんの提案により、上山市にぶどう狩りへ。

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高橋フルーツランドは車椅子からも直接手が届くぶどう棚が広がる。

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高級ぶどうを食べきれないほど取った。

続いて、天候をみながら、紅葉狩りと菓子工場の見学のため一路、蔵王方面を目指した。まずは、蔵王のふもとのシベールファクトリーパークで菓子工場の見学と昼食をとることに。こうした臨機応変な対応に加え、満足度の高いコンテンツ体験ができるのは、地元を知り尽くした案内人ならではだ。その後、山形県と宮城県にまたがる東北随一の観光名所で、スキー場やふもとの温泉地には多くの人が訪れる蔵王ロープウェイの山頂に向かった。

黒田さんが車椅子でロープウェイに乗るのは初めてだった。「今まで断られることが多かった」というが、この蔵王ロープウェイはユニバーサルツーリズムに対応しており、加藤さんも何度か利用していることもあって、階段やロープウェイの乗降の際はスタッフの方が手慣れた様子でサポートしてくれる。

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蔵王ロープウェイにて。

「誰か、先駆者がいるかどうかが大事」と加藤さんが言うように、バリアフリー対応の「物理的な設備」に加えて、宿泊先や観光施設のスタッフがユニバーサルツーリズムを受け入れた「経験」があるかどうか?という点が重要な観点となる。

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蔵王ロープウェイのゴンドラは、スキーヤーに対する配慮として段差や隙間がない設計で、ゴンドラ内のスペースも十分広いため、車椅子での利用も問題ない。

この日は初雪を観測、山形の厳しい冬の始まりを体感した一行は、山頂レストランで体を温めてから下山した。黒田さんと相馬さんは、山頂まで車椅子で到着できた達成感とロープウェイから見える紅葉の景色に感動し大満足の様子だった。その後、赤湯駅に戻り、今回の旅行はすべての行程を終えた。

 
ユニバーサルツーリズムが広まっていくために

一連の体験を通じて、ユニバーサルツーリズムに重要なのは、「一人ひとりにあった旅行プランの策定」「行程の柔軟性」「業種を越えた地域連携」だと感じた。

特に、一人ひとりに合った旅行プランをつくることは何より重要だ。ツアーセンターでは旅行者に対して事前ヒアリングを行い「カルテ」を作成する。そして、それをもとに十人十色のニーズを汲んだベストな旅行プランを提案している。旅行後のフィードバックももらい、常に旅行プランを進化させている。

また、旅行の観点に加え、加藤さん自身の経験や地域との関係性によって行程の柔軟性が保たれ、ツアー参加者の快適性・満足度を大切にしている点を強く感じた。

旅行を終えてみて、ツアーセンターのスタッフとは別に「地域サポートメンバー」を集め、ナレッジ共有をしたり、受皿を新たに開発出来たらさらに魅力的になると感じた。「できるかできないか」ではなく、「一緒に楽しむこと」をゴールにしてユニバーサルツーリズムを形成していく時代になってきているのでないだろうか。

ユニバーサルツーリズムを広めるための加藤さんたちのチャレンジはまだまだ続いていく。興味を持たれた方は、ぜひコンタクトを取っていただきたい。


☆山形バリアフリー観光ツアーセンター
電話:0238-20-6125
メールアドレス:support@yamagata-bftc.jp
URL:http://yamagata-bftc.jp/

※今回のツアーに関して、<企画協力>は山形バリアフリー観光ツアーセンター、<ツアー実施>は、八千代観光バス株式会社と協業いたしました。

 

 

取材・文: 八木まどか
Reporting and Statement: yagi

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