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Dec.

2024

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18 Jan. 2022

「寄り道」がキャリアをつくる “Life Detour” Makes Your Career

在原遥子
プロデューサー
在原遥子

ご自分の生き方や働き方を振り返るとき、「もともと思い描いていた道とは違って、紆余曲折あったな・・」と感じる方も、多いのではないでしょうか。2021年11月19日に行われたMASHING UPカンファレンス vol.5『「寄り道」がキャリアをつくる』というセッションのイベントレポートをお送りします。人々の人生が多様化するなか、「一本道のキャリア」=成功という概念は過去のものとなっていますし、むしろ柔軟な視点でキャリアを描くためのヒントをユニークな道を歩んできたゲストに聞いている、とても刺激的な内容です。
(冒頭画像 ⒸMASHING UP)

左から岡島悦子さん、山口有紀子さん、安部敏樹さん、鈴木涼美さん(ⒸMASHING UP)

 

【多様なキャリアを持つパネラーたち】

今回ご登壇された4名の方々のキャリアは、実に多様です。

山口有希子さん(パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社 常務 CMO DEI担当役員、写真内左から2番目)

現在の所属であるパナソニックは、山口さんにとって10社目。最初の会社ではマンション営業・求人広告営業などをされて、毎日100件飛び込み営業して深夜2時3時まで働いていたそうです。体が悲鳴をあげて25歳のときにその会社を辞めますが、ちょうどバブルがはじけてしまい、転職活動で数十社受けて落ち続けて、「自分に価値がないと思っていた」とお話しされていました。そのあとは「絶対海外プロジェクトができるところに再就職したい」と思い、名古屋の中小企業に女性の総合職第一号として入社するも、展示会でヘッドハンターの人に声を掛けられて外資系に転職…など色んなことを経験するなかで、まわりまわっていまパナソニックにいらっしゃるとのことでした。

 

安部敏樹さん(株式会社リディラバ 代表取締役、写真内右から2番目)

安部さんは就職活動をしたことがなく、「何をメインストリームと考えてどこから外れたか考えるのも難しい」と言います。大学時代に文系から理転したのもそのあと博士課程まで行ったのも、一つの寄り道だったのではと振り返っていました。初めての仕事は、なんとマグロ漁師。『ONE PIECE』を読んで、「海賊は難しいけど海の男になろう」と思い、19~24歳までオーストラリアとギリシャでマグロを獲っていたそうです。漁師をやりながら、現在の会社と研究者をやっていたのも、ご自身にとっては寄り道という感覚ではなく、それが普通だったということです。また、小中学校時代には不登校の時期もあり、そのあと路上生活していた時期もあったそうで、自分が社会問題の当事者だった経験が今の仕事にも繋がっているというお話もありました。

(ⒸMASHING UP)

鈴木涼美さん(フリーランスライター、写真内一番右)

鈴木さんはまたとても個性的な経歴で、慶應義塾大学を卒業したあとキャバ嬢、AV女優、そして新聞記者というキャリアを歩んでいます。会社に所属していたのは日本経済新聞社だけですが、鈴木さんにとってはそちらの方が寄り道だということで、「寄り道の定義がみんな違う」というお話が、まさに今回のセッションの大きな気付きとなります。ご自身として興味があってやってみたかったのはAV女優で、得意なのは勉強や新聞社の仕事だったのだと言います。両親親戚含め、まわりの大人で研究や執筆をしている人が多かったこともあり、小学校のときには自分も本を書く人になると思っていたそうです。

 

岡島悦子さん(株式会社プロノバ 代表取締役社長、写真内一番左)

岡島さんのキャリアは三菱商事から始まり、ハーバードビジネススクール、マッキンゼー、グロービスと続き、そしていまはプロノバでユーグレナのCHRと6社の上場企業の経営陣をされています。約3万人のリーダーのキャリアを見てきている岡島さんは、「みんな優等生の鎧を着て、なんて大変そうなんだ」と思うそうです。またプライベートでは52歳で母親になられて、いま3歳のお嬢さんがいらっしゃるという意味では、「ライフイベントでは相当寄り道しています!」とおっしゃっていました。

 

 

【若い時に考えていたこと】

それぞれのゲストの方も、順風満帆に歩んできたわけではなく、どうすればいいか分からず悩んだ時期があったときのお話をされていました。

鈴木さん:若いときって何がしたいのかわからないから、就職活動していても、どこまで自分の条件を拡げたり下げたりしたらいいのか分からなかったです。

山口さん:学生時代は英語をしていたので、「海外ビジネスがやりたい」ということだけは基軸に置いてあとはどの会社でもいいと思っていました。そうしたら拾ってもらえたんです。

岡島さん:そこでなんでも拾ってやった、という経験が次に繋がっていったんですね。信頼貯金をしておいてチャンスを掴んだら、がっつり実績を出すことが大切だと思います。

(ⒸMASHING UP)

 

【寄り道の価値】

メインロードと寄り道との両立をしていることによって、精神的に救われたというお話もありました。複数のコミュニティに所属していることが、鬱病予防になるというデータもあるそうです。

安部さん:社会課題に関心を持ちやすい人はどういう人かリサーチしていると、「越境体験によるマイノリティ性を獲得した人」というデータがあるんですよ。寄り道したことによって、そのような違和感に気付く機会になったのではないかと思います。

岡島さん:企業の経営層が、「越境体験」を持っていないケースも多いです。違和感に気付けて初めて共感できるので、大切ですよね。

鈴木さん:大学生とAV女優の二本立てで、どっちかがうまくいかなくても辛くないんですよ。旧来的な男性の人生だと仕事一本で逃げ道がなくて、それがうまくいかないと絶望してしまうのではないかと思います。

岡島さん:男性のキャリアははしご、女性はジャングルジムと言われているんですよね。ウェルビーイング経営を色んなところでやっていますが、幸福は「選択肢が適切な数あって、かつ自分で選べる」ということが大切です。

 

 

【自分と向き合う】

最後にゲストの皆さんがコメントされていたことにも、共通点がみえてきます。

安部さん:寄り道かどうかというより、自分との対話が一定量ないと、道を作れないと思うんです。なにか問いが出てきた瞬間に、自分の中に答えがある状態です。悩む前に自分との対話を増やしておいて、悩むタイミングに来たときに自分の行動を選べることで、リスクを取れるようになると思います。

鈴木さん:人生の選択肢は優劣で並んではいなくて、自分に合うものは16歳のときにはわからなかったです。そんなに早いうちから考えられることじゃないので、目の前のことだけを考えて生きてきましたね。あまり先のことは考えず、やりたいことをやっていいと思います。ただ「元AV女優」は引退できないので、いまだにその経歴で選択肢は狭まることはありますよ。大学院も慶應じゃなくて東大に行ったのは、「元AV女優」を上塗りできるかと思ったけどダメでした(笑)。でも生きていけるんで大丈夫ですよ。

山口さん:20代の自分に言いたいことは、「大丈夫。なんとかなる。根拠のない自信でいい。すべてのことは結局自分の糧になっていくから」。あとからなんとかなるので、やりたいことをやればいいのだと思います。

 

岡島さんも「無駄なことはひとつもない」とおっしゃっていて、寄り道は「好きなことにたどり着くための旅で、その方法はひとつじゃない」というお話が印象に残りました。セッションを通して話されていた、「そもそも正しい道ってなに?どこからが寄り道なの?」という問いがとてもいい視点です。またゲストの皆さんがとても楽しそうにご自身の人生やキャリアについてお話しされているのを見て、この先どうなっていくか分からない自分を楽しむというマインドセットもヒントであると感じました。皆さんも改めて、「寄り道」が今のご自分にどんな影響を与えているか、振り返ってみてはいかがでしょうか。

取材・文: 在原遥子
Reporting and Statement: yokoarihara

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