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15

Apr.

2024

interview
25 Jul. 2023

海の恵みを持続的にいただく~練り物から考えるインクルーシブなおいしさ~

増山晶
副編集長 / クリエーティブディレクター/DENTSU TOPPA!代表
増山晶

2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉は、当初は耳慣れないものだった。その後ニュースなどで話題になることも増え、環境や生物多様性への意識は、エコバック使用や食品ロスをなくす取り組みなど、少しずつ日常の暮らしに浸透してきた。

かまぼこでおなじみのカネテツデリカフーズ株式会社(以下、カネテツ)の商品、「のんカニ™ MSC*」(以下、「のんカニ™」)は、カニ由来の原料を使用せずに、カニの旨みを再現したカニ風味かまぼこだ。カニなのか、カニではないのか、なぜカニ風味なのか。そこには、甲殻類アレルギー対応以外にも、環境への取り組みが反映されているという。

SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」においても食べもの作りを通じて取り組みを続ける、カネテツ経営戦略室長の高浦さんとマーケティング部の真砂さんにお話を伺った。

(真砂さんとおもな商品ランナップ)

―カネテツはかまぼこなど、海の恵みから作る練り物を中心とした食品会社です。「海の豊かさ」に対する基本的な思いを聞かせてください。

練り物という水産資源を扱う会社として、水産資源の保護を大切にしています。例えば、本物のカニを再現したカニ風味かまぼこ「ほぼカニ®」を販売することによって資源としてのカニを救うことができていることなどは、自社ホームページでも公開しています。もともと、安価にカニの贅沢感を味わっていただけるよう開発しましたが、カニが世界的な不漁となる中、持続可能な商品作りにもなっています。「ほぼうなぎ®」も、エキスを含めうなぎを一切使わずに本物のうなぎを再現することで、うなぎの保護につなげています。会社の姿勢として、資源の保護と日本の食卓への水産資源の安定供給を目指すことに取り組んでいます。

(「ほぼカニ®」と「ほぼうなぎ®」)

―ウミガメ保護活動のサポートもされています。

きれいな海を守り、ウミガメやウミガメを取り巻く生態系全体を保全する活動の支援をしています。私たちの事業を支える自然の恵みと同じ海の資源ということで、ウミガメの保護については、SDGsが国際目標となる前から、全社員の思いとして共有し、取り組んでいます。コロナ禍での中断はありましたが、継続的に毎年、環境について話し合う会議への参加や保護活動への協賛などを続けています。

(ウミガメ:カネテツ提供)

―海への思いを込めたMSC認証商品、「のんカニ™」開発のきっかけはなんでしょうか。

MSC認証マークがついているものは、持続可能な漁業で獲られたスケトウダラを使っています。現在は「のんカニ™」「いいちく MSC」が認証商品です。「のんカニ™」は、カニではなく、MSC認証のアラスカ産スケソウダラを100%使用しています。

カニかまやちくわなどのシンプルな人気商品の中で、さらに環境に配慮したものを開発しようと思い、MSC認証商品にラインナップを広げました。

(「のんカニ™」とMSC認証マーク)

*MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の証。

―「ほぼカニ®」と「のんカニ™」の開発理念の違いや共通点を教えてください。

企業ステートメントに掲げているネリバーサルデザインとは、ユニバーサルデザイン(筆者注:すべて人のためのデザイン、みんなにやさしいデザイン)の練り物版です。人に寄り添うものづくりという基本的な考え方をそれぞれの商品に活かしていくというものです。

お客様の色々な要望や困りごとを解決したいとの思いで商品の開発をしています。例えばほぼシリーズでは、「ほぼカニ®」は本物のズワイガニを再現することで、手軽にカニ気分を味わえる楽しさをお届けしたいと考えました。「ほぼいくら」は、見た目もいくらそっくりで魚卵アレルギーフリーを実現しました。ひな祭りにちらし寿司のトッピングとして使用していただいたり、アレルギー等で魚卵を召し上がれない方にも楽しんでいただいたりしています。

「のんカニ™」は、カニかまを食べられなかった甲殻類アレルギー*の方にも召し上がっていただきたいという思いから開発を行いました。(*アレルゲンフリーではございません。魚肉練り製品を食べることができる軽度の甲殻類アレルギーの方に推奨。)いずれも、色々な事情でこれまで食べることが難しかった方が少しでも食べられる商品をお届けしたいと考えて、開発を進めました。

―地域や次世代との向き合いについてはいかがでしょうか。

地域社会との連携としては、神戸市との食育プロジェクトでの「ほぼカニ®」のレシピ紹介などがあります。コロナ禍には、大学生と栄養バランスの良いレシピを考え、食生活応援の取り組みなどを行いました。また、魚のたんぱく質周知の取り組みとして、フィッシュプロテインマークを広く伝える活動も練り業界全体で行っています。

(フィッシュプロテインマーク)

―最後に、海の恵みを届ける企業としてメッセージをお願いします。

アレルギー対応や、日々のおべんとう作りをサポートするなど、幅広い世代のさまざまな困りごとを解決したいと思います。パッケージに大きく書かれている「※カニではありません」という注釈は、カニ入りという優良誤認を避けるために真面目に記載したものですが、店頭やネットなどで、関西ブランドらしくユニークだと評判になりました。

(「ほぼカニ®」のパッケージ表記)

真面目にものづくりに取り組んでいますが、それをそのまま真面目に伝えるのでなく、ユニークに、SDGsもカネテツらしく、自分たちも楽しみながら伝えていけたらと思います。

■取材を終えて

一見ユニークさを訴求しているように思える商品にも、ただ売るための戦略ではなく、「人と環境のためになっているのか?」を問い続けるもの作りの姿勢が反映されていた。海の恵みをいただくという食生活は、いのちのつながりの持続的なあり方をひとつひとつ大切にする中で守っていくもの。食卓の一皿が海につながっていることを、あらためて認識した。

なお、筆者も食べ比べを楽しんでみたが、「ほぼカニ®」はほぼカニで、「のんカニ™」はほぼ「ほぼカニ®」だった。

(写真左から:「ほぼカニ®」 「のんカニ™」)

もの作りの奥にある環境への持続的な思いを知ることで、海の豊かさを守るためにできることをひとりひとりが楽しく考えるきっかけになればよいと願う。

カネテツデリカフーズ株式会社ホームページ https://www.kanetetsu.com/

取材・文: 増山晶
Reporting and Statement: akimasuyama

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