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17 Apr. 2019

そのブランドを使っている自分を想像できますか?

清水鈴
コミュニケーションプランナー
清水鈴

先日SNSをスクロールしているとある記事が目にとまりました。

Barbie introduces dolls with wheelchairs and prosthetic limbs(参照:CNN.com)」

「バービーから車椅子と義足の人形が発売」とのことです。

 

なんのことだろう?と思いクリックをするとタイトル通り、バービー人形のラインナップの中に車椅子に乗っているバービーや、義足をしたバービーがいました。

バービーを生産しているマテル社は実際に身体障害者の方や車椅子ユーザーと協力し、リアルに近い動きをするバービーを共同で開発したとのことです。また、付属のバービードリームハウスに関しても斜道付きにするなど、車椅子でも移動できるような作りになっているということです。

実はこういったダイバーシティーを取り入れたバービーのデザインは今に始まったわけではありません。2016年には様々な人種やボディータイプを取り入れたバービーシリーズを発表、2017年には初めてヒジャブを着用したバービーや同性婚バービーセットなども発表しています。

自身の幼少期を振り返ると、当時はあまりバービーに強い興味はなく、日本製のリカちゃん人形を欲しがっていた記憶があります。ただ、私はカナダで生まれ育ったので日本製の人形よりもバービーの方に実際は馴染みがありました。

しかし、当時なぜ私がバービーに関心を持たなかったのか今はわかるような気がします。それは、バービーが自分をrepresent(表す・象徴)するような人形ではなかったからということです。リカちゃんみたいにお目目がくりくりしていて細いわけではないのですが、長いブロンドの髪で青い目をしたバービー人形は私が共感できるポイントがなかったということです。憧れでこういった人形を購入することはあると思いますが、自分を投影してお人形遊びをしていた私にとっては、その意味をなしてくれないデザインだったように思います。

 

そしてこのrepresentationというのは、人形選びだけでなく、最近のビジネス・マーケティングにおいては非常に重要になっているのではないかと思います。かつては単一的だったカルチャーや人種が、移民や活発なグローバル交流によって多様化・複雑化し、象徴的な人物や憧れの存在が一つの形だけでは表せなくなって来ました。人種の違いなどは欧米で特に注目される社会課題だと思いますが、今回の発表にある義足や車椅子利用のバービーの存在は、多様性の可視化をさらに加速させてくれる象徴的な出来事かもしれません。

今日、海外で「representation」という言葉が女性の下着業界においてホットなワードになっているようです。莫大な販売量を誇っていたある大手下着メーカーは毎年ランウェイを実施し、世の中の女の人の憧れのブランドでした。しかし、次第にシェアが下がってきているとのこと。理由は、まさに、「representation」の課題です。

煌びやかにランウェイを歩いているモデルに対して、オーディエンスである消費者が共感を持てなくなっているのです。自分を投影できない、そのモデルと自分の共通性がない時点で、その商品を着ている自分が想像できないのでしょう。私が昔、バービーを積極的に欲しがらなかったのと同じように感じます。

一人一人がユニークなこの世の中で、その一人一人をrepresentすることはかなり難しいことだと思います。ただ、だからといってある人種やあるタイプの人間だけを象徴的に起用して表すのではなく、多様なあり方を可視化していくことが社会を豊かにしていくのかもしれません。

取材・文: 清水鈴
Reporting and Statement: rinshimizu

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