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May.

2019

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19 Apr. 2019

ことばの選択肢が増えたむすめの話

半澤絵里奈
cococolor副編集長 / プロデューサー
半澤絵里奈

7歳の娘は、このところ、夜寝る準備を終えると「タイレンちゃんねるをつけてほしい」という。

タイレンちゃんねるとはYouTubeで配信されているタイタイとレンレンという男の子のふたごが出ている手話講座の動画である。2017年の秋、渋谷で開催されていた超福祉展に行ってから手話の勉強に面白さを見出した娘は、YouTubeや書籍でのんびりと、しかし確実に手話を自分のものにし始め、第一言語「日本語」、第二言語「手話」といっても過言ではない。

そして何より、娘には境界線がない。彼女の辞書にはまだ「障害者」ということばさえ存在しない。とにかくあらゆる手段を駆使して、いろんな人と友達になりたいと言う。

東京パラリンピックが500日前に迫った4月13日。パラリンピックの競技体験やダイバーシティ&インクルージョンの勉強になるものなど、様々なイベントが都内の至るところで実施されていたが、私たちは有明のパナソニックセンター東京で開催された『Braille Neue(ブレイルノイエ)ワークショップ』に参加した。

Braille Neueは、目でも指でも読める文字として高橋鴻介氏によって発明された文字で昨年大変話題になり、現在あらゆる施設や企業の機能表示などに導入されている。その高橋さんが講師を務めるというので、これは娘にとってすごくたのしくなるぞ!という予感がした。

※本記事は、お子さんとも楽しんで頂けるように写真多めでお伝えしたいと思います。

パナソニックセンター東京にはパラスポーツを紹介するものや触図絵本が多く、なかなかワークショップ会場の椅子にたどり着かない。初めて会ったはずの子どもたちは絵本を前に、「これ点字なのかな?あ!絵のまわりにもボコボコがついてる」「一緒に目をつむって触ってみようよ」とすぐに仲良くなって楽しそう。

いよいよ、ワークショップが始まると最初にBraille neueの説明と今日みんなで取り組むことが簡単に説明された。ワークショップ自体は1時間、すべての内容が簡潔に優しいことばで説明され、各テーブルのサポーター役として手話話者の方がいたり、進行自体が多様性に溢れたものだった。

発明家の高橋鴻介さんより、これまで多く使われてきた点字とBraille neueの説明。子ども向けのワークショップとあって、資料のすべてにルビがふられ、参加者ひとりひとりの表情を確かめながらゆっくり丁寧に話す高橋さん。隣で手話通訳をしているのは未来言語の和田夏実さん。スクリーンに映し出された<点字が読めると・・・>の説明が「ともだちにあんごうをおくれる」「くらいところでもほんがよめる」「なによりゆびでなぞるだけでよめたらかっこいい」など、子どもたちをワクワクさせる言葉で溢れている。

みんなに点字一覧表が配られ、まずは点字の仕組みを知ることからスタート。ずっと眺めていると、6つの点が乱雑に並んでいるのではなく、母音と子音で点を打つルールが見えてくる。この後に点字を読むクイズを出すよ!と言われて娘は早速覚えようと必死で一覧表を見つめていた。

点字クイズでひとしきり子どもたちが元気に手を挙げたり、声を出したりした後に配られたのは点字器。これで点字つきの自分の名刺をつくろうというチャレンジだ。

先程の点字一覧表を裏返すと、点字を打つときのために文字が反転して印刷されている。指で触る面に凸がくるようにするためには、紙を裏返して反対側からデコボコをつくらなければいけない。先程の名前だけが書かれた名刺を裏返し、点字器に挟んで後ろからアイスピックで点を打つ要領で自分の名前に点字を打っていく。実際にやってみると、固い用紙にプチプチとピックを刺していく感覚が面白く、大人も子どももつい止まらなくなってしまっていた。

点字打ちが終わるとこのような感じで完成する。それをまた指の腹でなぞって確かめる。目をつむってなぞって「うーん、まだ指で読むのはむずかしい。最初から目の見えないひとたちはどうやって勉強するんだろう。すごい」と娘。

次にチャレンジしたのは、触図カードでの神経衰弱。同じテーブルに座ったみんながアイマスクをし、2枚ずつセットになるはずのカードを指だけで選び、何枚取れたかを競い合った。点が打たれたようなカードや波模様、斜線などシンプルなはずなのに、幅や大きさが異なり指先でその違いを確かめるのが実に難しい。これは指先の感覚が繊細な子どもが得意なのか、圧倒的に大人よりも子どもたちが強かった。

あっという間に1時間が過ぎ、ワークショップは終了となったが点字の面白さにとりこになった子どもたちは手元に余っている紙にどんどん絵や点字を書いていく。

パナソニックセンターを後にしてもずっと肌身離さず点字一覧表を持ち歩き、街のなかにある点字を探しながら帰った。

ワークショップに参加できなかったパパにも点字の読み方を教えて、その日一日ずっと点字のクイズを出し合い、我が家は五十音がほとんど読めるようになった。

翌日、娘は「日本語だけではなくて、手話と点字もわかるようになった!ことばって、いろいろあるね。もっと街のなかの点字を見つけたい」と言って、ピクニックにも点字一覧表を持って行った。その姿を見てワークショップに参加してよかったなあと感じた。公園のなかにはなかなか点字は見つからなかったが、私の飲んでいるビールを見て「そこ、<おさけ>って書いてあるよ!」と教えてくれた。そして、ワークショップの日に他の人と話しながら「パラリンピックがきたら車いすテニスが見たいの」と言っている姿を見て、わたしが思っているよりも娘はパラスポーツのことを良く知っていて、観戦したり体験したいと思っている気持ちを知ることができた。

あと1年とちょっとで東京パラリンピック。
娘とたくさんの体験イベントに繰り出そうと改めて決意した。

取材・文: 半澤絵里奈
Reporting and Statement: elinahanzawa

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