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Dec.

2024

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8 Sep. 2022

自閉症の新米弁護士ドラマ、Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』

在原遥子
プロデューサー
在原遥子

Netflixで配信されている韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』という作品は、自閉スペクトラム症の主人公という重みのあるテーマながら、心温まる人間ドラマとウ・ヨンウ(パク・ウンビン)がスカッと事件を解決する面白さが人気です。実際に視聴してみると、社会問題やダイバーシティをテーマに取り上げつつ、思わず感嘆するような工夫がたくさん散りばめられていました。過去にも韓国コンテンツを記事に取り上げている著者が、cococolor視点のレビューとしてまとめてみました。

 

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』あらすじ

主人公のウ・ヨンウは、ソウル大学ロースクールを首席で卒業したあと、大手法律事務所ハンバダで働くことになった新人弁護士。法律をすべてそらんじることができる驚異的な記憶力がありますが、自閉スペクトラム症という発達障害があり、対人関係やコミュニケーションが少し苦手です。自己紹介が長い、クジラの話をすると止まらなくなってしまう、部屋に入るときは3秒数えてからでないと入れない、基本的にはキンパ(のり巻き)しか食べない、などのこだわりもあり、会社で働くにも多くのハードルがあります。弁護士として事件を担当しながら、ヨンウは様々な偏見や差別にもさらされますが、IQ164の頭脳とクリエーティブな発想で事件を解決し、一人前の弁護士として成長していきます。

新人弁護士としてハンバダで奔走するウ・ヨンウ  
Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixで独占配信中

 

ヨンウは「普通じゃない」

自閉スペクトラム症とは「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」の総称で、コミュニケーションをとることが困難、こだわりが強いといった特徴があります。自閉スペクトラム症を含む発達障害は、能力の欠如や優劣ではなく、「脳や神経に由来する個性」と考えられるようになってきており、ニューロダイバーシティと表現されます。ヨンウを支えてくれる登場人物たちとヨンウとのやり取りは、私たちの実世界での多様な人とのコミュニケーションへの気付きも与えてくれます。

 父親グァンホ→幼い頃から親子としての意思疎通が難しかったヨンウに粘り強く向き合って、シングルファザーとして男手一つでヨンウを育てました。グァンホ自身も法学部卒で、家には六法全書が置いてあったこともあり、ヨンウが最初に話した言葉はなんと、「傷害罪」。

 チェ・スヨン→ロースクールの同期で、ハンバダでも同僚。勝ち気で言葉は強いですが、ヨンウの特性を理解して差別やいじめから守り、ヨンウが堂々と働けるように激励してくれます。

 チョン・ミョンソク→ヨンウの上司。はじめはハンバダの社長に「なぜ自閉スペクトラム症の人を採用したのか」と食い下がったこともありましたが、共に仕事をするなかでヨンウの人並み外れた優秀さを目の当たりにし、ヨンウを信頼するようになりました。ヨンウが少し空気を読まない発言をしても、最後まで話を聞き、ヨンウの主張を尊重します。

 イ・ジュノ→ハンバダの訴訟チームのスタッフで、ヨンウが困っていると常に助けてくれる青年。ヨンウのこだわりにも広い心で付き合ってくれます。

 トン・グラミ→ヨンウの高校の同級生で、唯一の友達。グラミも一匹狼で学校では孤立していましたがヨンウと意気投合し、ヨンウの悩みを聞くといつも強めにヨンウの背中を押します。(ちなみに「トングラミ」は韓国語で「円・丸」という意味で、とても可愛い名前に聞こえます。)

ヨンウの上司であるチョン・ミョンソクが、物語の後半に「ウ・ヨンウは普通の弁護士じゃない」と語る場面があるのですがそれは悪口ではなく、ヨンウの特性や言動、努力も分かったうえで、「唯一無二の、掛けがえのないメンバー(戦力)だ」というミョンソクの想いを感じるセリフでした。

 

法廷で感情をあらわにするウ・ヨンウをなだめるチョン・ミョンソク  
Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixで独占配信中

 

事件を通して描く多様性

このドラマは法廷ヒューマンドラマというジャンルで、各話オムニバス的に様々な法律トラブル・訴訟をヨンウが担当していく形式で物語が進んでいきます。その1つ1つの事件でも、韓国の家父長制の強さや宗教観、同性愛などダイバーシティがテーマになっており、考えさせられる場面が多いです。

そんななかで、第3話ではヨンウは自閉症の被告人の弁護を担当することになります。ヨンウとは全く違う特性で、精神年齢が低く母親との意思疎通も難しい被告人です。「自閉症といっても症状はさまざま」ということを視聴者に自然に伝え、「自閉症の人は、みんなウ・ヨンウみたいな特性を持っているのだ」という誤解を与えないようにとの工夫が見られます。また別の回では、性的暴行を受けたという訴えを起こした知的障がいがある女性の母親が、ヨンウに対して「障がい者の代表にでもなったつもり?!」と怒りをぶつけるシーンもあり、「障がい者」とひとくくりにしがちな社会に一石を投じているのではないかと感じました。

 

自閉症の被告人の心を開こうと、コミュニケーションの糸口を探すウ・ヨンウ  
Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixで独占配信中

 

障がい者は弱者?強者?

先ほど紹介した登場人物のように、たしかにヨンウには味方が多いですが、ヨンウのことをよく思わない人もいます。ヨンウの同僚のクォン・ミヌは、ヨンウのハンバダへの就職が不正採用であったと主張し、「自閉スペクトラム症【なのに】天才」「障がいがあるからみんなに優しくされている、優遇されている」と思い込んでいました。ヨンウをかばうスヨンに対し、ミヌが「あいつは弱者じゃない、強者なんだぞ。目を覚ませ!」と激高するシーンでは、分かりあえないと諦めたのか何も言い返さないスヨンの表情がとても切ないです。そのあと、萎縮するヨンウにスヨンが「ソウル大を首席で卒業した人はみんな大企業に内定するのに、ヨンウに内定が出なかったのは差別なのよ!ハンバダに入れたのは実力なのよ!」と発破をかけるのを見て、やっと胸がすく思いがしました。

 

はじめは自分に自信がなく、できないことばかりだったヨンウが、少しずつ成長してチームに貢献していくストーリーも、目が離せません。最終回でヨンウが自分の人生について語る台詞は、思わずノートに書き留めたくなるほど素晴らしいので是非ご覧ください。

 

文・在原遥子

 

Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixで独占配信中

https://www.netflix.com/jp/title/81518991

取材・文: 在原遥子
Reporting and Statement: yokoarihara

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