超福祉展2020② ~『出展者の視点』:超福祉展が残したもの~
- 共同執筆
- ココカラー編集部
シリーズ記事「超福祉展2020」、第2回のテーマは『出展者の視点』。
2018年から、3年間にわたっていくつかのプロジェクトを出展した高橋から、自身のプロジェクトが、そして超福祉展が、どう変わっていったのかをレポートします。
超福祉との出会い
超福祉展への関わりのきっかけは、友人の紹介でピープルデザイン研究所・代表の須藤さんに出会ったところから始まりました。
自身の発明である、点字と文字を組み合わせた書体『Braille Neue』を紹介し、意気投合。当時はまだ、ほとんど実装先も決まっていなかったこの書体を、超福祉展の会場サイン設計に入れ込もう!と一緒に盛り上がったことを覚えています。そのときに印象的だったのは、須藤さんの「とりあえずやってみること。試さなきゃ、良いところも悪いところも見えてこない」という言葉。ものごとに失敗はつきものですが、それで一歩目を踏み出せないようでは仕方ない、と言われているような気がして、より実践に近いエレベータの点字サインや、出版物(超福祉MOOK本)への実装にチャレンジ。
超福祉展として、ヒカリエの施設そのものに手を加えるということは今まであまり行われてこなかったのですが、その制約を打ち破る一助になりました。その結果、晴眼者の方からも、視覚障害者の方からも様々な意見や感想をいただくことができました。例えば、当事者の方の「施設内に点字があるということが、そもそも周知されていない場合がある。それの解消に役立つかもしれない」という意見や、「見える人と一緒に見に来たが、点字についての理解が深まってよかった」という感想。逆に、「見えることで、点字の文法や表記について誤解されてしまう点があるかも」といった懸念などもさまざま。
そのときに得られた「生の言葉」が、渋谷区役所や様々な施設へ広げていく際に、とても役立ちました。
様々な実験を許容する超福祉展
2年目以降も、さまざまな実験的プロジェクトを展示しました。
例えば、当事者とともに楽しく施設改善するワークショップ『ふだんクエスト』。『ふだんクエスト』は、Braille Neueのヒカリエへの実装をきっかけに、東急電鉄の皆さまと一緒に進めてきたプロジェクト。点字対応はもちろんのこと、ユニバーサル対応のときに行われていることって意外と知らない。でも、そんな過程にこそ、今使っている施設をより良いものにするヒントが隠れているのでは? そんな視点から、施設担当者と、車椅子、視覚障害といった障害当事者の皆さまと一緒に、ヒカリエ内をクエストのように巡り、隠れている課題(モンスター)を探すというワークショップです。
また、身体機能をテクノロジーを通じてシェアするボディシェアリングロボット『NIN_NIN』も展示。見せる展示だけでなく、実際にNIN_NINを背負ってヒカリエ内をナビゲーションしてもらう実験的な体験を提供したり。
3年目の今年は、コロナ禍の影響もあり、オンライン開催。ちょうどその頃実験していたオンラインスポーツ『ARゆるスポーツ』を展示し、顔だけで参加できる、ユニバーサルなスポーツ大会を実施したりしました。
展示→実装へ進む3年間
3年間を通して変わらなかったところは、超福祉展が常に「実験区」であるということ。福祉という分野では、たくさんの当事者の方に意見をもらえる機会というのは決して多くありません。どのような価値があるか、まだわかっていないようなものであるほど、超福祉展のような多様な人が集う場所に置いてみることで、新しい価値が発見できたりするのかもしれません。
そして、1年目から3年目にかけて、展示と銘打ちつつ、実装へと重心が移り変わっている気がしました。展示会場の中だけで閉じるのではなく、街の中にその考え方をインストールしていくという点がとても新鮮で、インクルーシブで「超福祉」な未来を、体験するのではなく街に残していこうとする気概を感じました。
そんな超福祉展も、今年で一区切り。ここで生まれてきたものが、これからも様々な場所で実装されることを、そして、このような「実験区」の活動が来年以降も続くことを、出展者の1人として願っています。
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※参考:超福祉展cococolorシリーズ記事そのほかの記事
執筆者 高橋鴻介
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