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27 Sep. 2019

渋谷のふだんを攻略せよ!「ふだんクエスト@渋谷ヒカリエ」 in 超福祉展

ふだんクエストが超福祉展に現れた!

 

今回は9月3日~9月9日に渋谷ヒカリエで開催された「超福祉展」にcococolor編集部自治体研修生チームで突撃。前回取材した「会社の中の「ふだん」に潜むモンスターを攻略?「ふだんクエスト」が渋谷を舞台に実施されたということを聞きつけ、「ふだんクエスト@渋谷ヒカリエ」をテーマにしたシンポジウムに参加してきました!

cococolor読者の皆さんはよくご存じかもしれませんが、そもそも超福祉展とは、「2020年やその先の2030年に向けて、カッコいい!カワイイ!デザイン、最新のヤバイ!テクノロジーを駆使したプロダクトの展示、福祉の枠を超えた幅広い分野のプレゼンターが登壇するシンポジウムなど、従来の福祉のイメージを超えて福祉を日常化させよう!」という目的で、渋谷ヒカリエのメイン会場を中心に渋谷区各所を巻き込んで開催されているイベントで、正式名称は『2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展』です。期間中は様々な展示やモビリティ体験、シンポジウムが開催されており、なんと今年で6回目、参加者数は年々増加しているそうです。

 


(超福祉展の様子)

 

その超福祉展で、9月5日に「ふだんクエスト」(8月26日に渋谷ヒカリエでワークショップを開催。渋谷ヒカリエの運営チーム、支配人、警備員、受付等も参加し、およそ30体近くのモンスターが発見されました。)の振り返りと対談のシンポジウムが行われ、クエストにマスターとして参加した、岡村さん(車いす)、株式会社19の浅野さん(後天性の弱視)、東急株式会社の篠田さん他の渋谷ヒカリエ運営チームと、前回ふだんクエスト@電通を作り出しcococolor編集部も参画しているInclusive Hint!チームが登壇しました。

 
(シンポジウムの様子)

   
(8月26日に実施されたふだんクエスト@渋谷ヒカリエ」)

「人それぞれ見つけるモンスターは違います。色んな立場の人になって物事を考えてみると、今までは見えなかったモンスターが見えてくると思います。」というお話しで始まったふだんクエストシンポジウムは、渋谷ヒカリエを舞台として、福祉をもっと明るく楽しく捉え、みんなが同じ目線や違った目線で考えておもしろおかしい世界に変えていくにはどうしたらいいのか、をみなさんに感じでいただきたいという思いで開催されたそうです。

 
(ワークショップで発見されたモンスターたちが紹介されました!)

ワークショップを振り返って、「自動ドアと窓ガラスの違いが分からない」「優先エレベーターも混んでいると譲ってくれない」と話す各チームのリーダー。また「優先を付けずに、みんな一緒にしてくれた方がありがたいこともある。パーテションのロープも弱視や全盲の方はぶつかると危ない。ただ分けるだけではなく、一人一人が気付き行動できるようになるのが望ましい。アメリカでは優先者に譲るファースト精神が根付いている。日本でも心遣いのアクションが広まってほしい。」と、岡村さんは話します。


(気になったモンスターについて話す岡村さん)

きっと障害の有無によらず、誰しもが生活の中で不便に感じていることがあると思います。不便なことを自分で解決することも必要ですが、その不自由にこそ暮らしを楽しくする方法であったり、新たなビジネスチャンスのヒントがあったりするかもしれません。みんなが安心して自分の「不自由」について「自由に」話せる場があったら面白いと感じました。

 

これからの渋谷

 

シンポジウムの後半で印象的な場面がありました。

「渋谷という街はこれからどうなって行くのでしょうかね?」

「私なんかは古めかしい焼鳥屋が並ぶ渋谷が好きですけどね」

と岡村さんは言います。続けてInclusive Hint!チームとして参加していたcococolor林編集長は「老若男女を問わず、渋谷のどこへ行っても新しい発見があり、究極には迷うことすらも楽しむことができる渋谷を目的に来てくれる人がいる街になっていくかもしれないですね。」と話していました。

「じゃあ渋谷ヒカリエはどうなっていくのでしょうか?」という問いに対して篠田さんは、

「ふだんクエストは渋谷ヒカリエをどうしていくかという視点でとても刺激になりました。渋谷の都市開発を進めていく中で、渋谷ヒカリエという存在が基準となり見本となることもあると思います。建てればいい、オープンすればいいという発想ではなく、色んな人をお迎えできる施設・まちであるために、このような会に参加し、考えることが出来たのはとても良かったと思います。」と答えます。

ワークショップの参加者もシンポジウムに参加されており、「障害者になってふだんの生活を体験する。しかもゲーム形式として行うことで、体験への障壁を無くし、参加者も楽しく前向きに福祉について考えることが出来ると思います。」と、感想を話していました。

これからの行政によるまちづくりも、ハコモノを建てれば終わりではなく、そこに暮らす人々の生活や将来までを考える必要があります。既存の建物の有効活用や人が集まるコミュニティづくり等を、行政だけでなく、学校や企業、住民に地域、内外問わず巻き込み、全盲・弱視・車いすなどの様々な当事者の視点を入れて考え、「その街」のあるべき姿を面白おかしく模索していく。このふだんクエストのように、みんなが当事者としてモンスターを考え、理想の未来を前向きに実現できる方法を楽しく考えていくことが大切なのだと思います。


(シンポジウム後にモンスターについて考える様子)

 

ふだんクエスト~行政の視点から~

 

さて、来年は2020東京オリンピック・パラリンピックが開催され、この渋谷にも実に多くの方が来訪し、さらに混沌とすることが予想されます。しかしそんな不安を吹き飛ばすように、障害も肩書も超えた色とりどりの方が集まり、今まで関わりが無かった人も、分けられていた人も巻き込んで一緒に考えていくという素敵な姿が「ふだんクエスト」にはありました。

また、おそらく全国各地にある行政は、「人口減少・少子化・高齢化・担い手不足…」等の様々な問題を、複雑なしがらみと共に抱えています。ふだんクエストの体験を通して、「行政」の視点から感じたことを3つご紹介したいと思います。

 

1.シリアスなテーマこそふざけてみる。

行政の仕事の中でも、福祉は比較的「守り」の分野で、つらいものという印象が強いです。しかも、近年では「インクルーシブ」「ダイバーシティ」というカッコいい言葉まで現れて、行政としては取り組まなければいけない大テーマというイメージがあります。しかし今回のイベントに参加してみて、「インクルーシブ」「ダイバーシティ」など大上段に構えて、過剰に課題意識を持つ必要はないのかなと感じました。一見シリアスなテーマだからこそ、眉間に皺を寄せて話し合うのではなく、色んな人が自由な発想で、時にふざけながら話せる場や雰囲気づくりが求められている気がしました。

2.属性の境界を超える。

今回のイベントを通じて特に感じたのは、こうしたイベントでありがちな「(健常者である方々が)障害を持った方と触れ合う機会」という雰囲気が感じられなかったことです。障害のある方は普段の生活の中ではマイノリティーであり、大多数の方との壁を感じることも多いのではと思いますが、今回のイベントでは多数派も少数派もなく、「健常者」「障害者」という枠を超えて自由な議論を交わしていました。こういう場はまだまだ少ないと思いますし、イベントが終わりヒカリエを出た途端、「少数派の障害者」という壁にぶつかるかもしれません。行政としては、障害や肩書を超え、こうした場を更に広げていくことはもちろん、福祉分野に限らず「境界を超える」発想がこれから求められていくように思いました。

3.「自分のために」が未来を切り開く。

公共の福祉を担う立場の人間が何をおっしゃいますか?という意見はさておき、ストローもウォシュレットも、最初は障害者のためにつくられたものと言われていますが、今やその需要は世界に広がっており、私たちの生活に利便性をもたらしてくれています。同様に今後高齢化がさらに加速していくと思われる人口動態の中で、障害者のための取り組みが実は高齢者のため、高齢者のための取り組みが実は将来の私たちのためになっていくことは想像に易いものです。今まさにこの時代に、選挙だけでなく○○会議や○○ワークショップ、地域のコミュニティといったものに参加し、自分の意見をぶつけ、周りの意見も聞き、実現のために動くことが、巡り巡って自分のためになる可能性があることを実感しました。行政としては、その声をサポートして行ける仕組み、ハブとして求められていることの整理などをしていく必要があることを再認識しました。

シンポジウムの終盤、モンスターは見つけ出して倒すものではなく、誰にとっても楽しくなるような仲間にしていくことがインクルーシブなのではないかという話もありました。シンポジウムの最中でもそれぞれの意見を聞き、新たなアイデアを生み、一歩一歩進んでいく皆さんの姿に、ワクワクせずにはいられませんでした。


(モンスターを仲間にしていこうという議論)

 

行政として、街の住民として、障がいの有無にかかわらず、同じ目線で考えて面白おかしい街づくりに関わっていくこと。行き過ぎたハードやソフトの整備に頼らず、ちょっとしたハードづくり、ちょっとした交流づくりのキッカケとして「ふだんクエスト」のような考え方を用いた前向きなワークショップを行うこと。この「ふだんクエスト」から、様々な人を巻き込み、様々なアイデアを生み、福祉の分野を超えて活かしていくことが出来る可能性を感じることが出来ました。

 

文責:五十嵐隆志

取材・文:自治体研修生チーム

取材・文: SCP塾TEAM
Reporting and Statement: scpteam

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