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2024

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17 Dec. 2020

重度難聴Youtuber 牧野友香子さんに、こんなことまで聞いてみた。

高橋慶生
コピーライター
高橋慶生

ダイバーシティやインクルージョンのことを、もっと気軽に話せる場を。

そんな考えのもと、電通グループ社内向けにオンライン・セッションが開催されました。社外からゲストの方を迎え、参加者との対話を大切にする「カフェ形式」です。発起人でありカフェの「オーナー」は、社内で“心のバリアフリーセミナー”を運営してきた高田愛さんです。

参考記事:「心のバリアフリーセミナーの作り方」

今回のイベントは社員向けに開催されましたが、内容の一部をこの記事でご紹介したいと思います。

ゲストとしてお越しいただいたのは、株式会社デフサポ代表取締役の牧野友香子さん。「難聴者の未来を華やかに」をビジョンに掲げ、聞こえない人自身の支援や、その親御さんのサポートを続けています。

ご自身は先天性の重度難聴者で、補聴器をつけても音はほとんど聞こえません。これまでの経験や世の中に対するメッセージを発信するYoutuberでもあります。

 

 

そして社内からは本記事の筆者、高橋慶生が登壇。ダウン症のある子どもを育てる親としての参加です。ふだんから、息子の障害について周囲に隠してはいません。しかし仕事上の会話で子どもについての深い話になることはそう多くなく、今回初めて知ったという声もありました。

 

障害を、選択肢を減らす理由にしない。

牧野さんの大きな転機となったのは、お子さんに骨の難病があることがわかったこと。調べても、情報がまったく得られない。お子さんの将来も、そして自分のキャリアも、先が見えない。そのことが何より不安だったと言います。

障害のある子を育てる親として。そして、難聴の障害当事者として。自分にできることはなんだろう?と考え抜き、難聴児をサポートする「デフサポ」を立ち上げました。

 

 

障害があっても「選択肢」が当たり前にある人生を。この言葉に、とても重みを感じました。社会が変わるスピードよりも、自分の子供が育っていくスピードのほうが速い。そんな想いから、ライフステージごとに異なる課題に向き合い、さまざまなサポートに取り組んでいます。

ホームページでの情報発信に加え、Youtubeの「デフサポチャンネル」ではさまざまなエピソードや想いを素直に、そして何より楽しく発信しています。(URLは記事末尾に記載)

 

デフサポがサポートする領域は多岐に渡る

 

ダウン症のある子は、どう育っていく?

つづいて、筆者もスライドをつかって話しました。息子にダウン症があることがわかってから、「障害の当事者」とは誰のことなんだろう? と考えてきました。

親である自分は「当事者」なのか?  本人の兄弟はどうだろう? そもそも、息子本人を当事者だと捉えることで、大事なものが見えなくなっていないか? そんなことを考えてきました。いま自分の中に確かな答えがあるわけではありません。でも、だからこそ参加者の皆さんとも話してみたい大きなテーマのひとつでした。

 

 

そして子育ての中で気づいたのは、障害があるからできない、というより「ゆっくり、できるようになる」ことが、息子自身の特長だということです。

この先、就学や就労のことでカベにぶつかることは起きると思います。それでも、親がいちばん彼自身の可能性を信じる存在でなければ。そう思いながら、少し遅めのイヤイヤ期を迎えた5才児と、日々向き合っています。

 

 

カフェ形式で質問コーナー。

後半は、参加者の方からコメントや質問をもらいながら、インタラクティブに進行しました。いくつか印象的だったトピックを紹介します。

 

Q:障害がある方に、職場でどんな感じで声をかけたらいいでしょうか?どこまで踏み込んで聞くべきなのか、迷います。

牧野:改まって言われると構えてしまうけど、ちょっとしたときに「困ってない?」の一言があるだけで嬉しいし、気軽に要望を伝えやすいです。また、同じ人に何度もお願いをするのも気が引けるので、いろんな人が声をかけてくれる方が、ありがたいなあと。

高田:がんサバイバーでも同じだと思います。何を話すか、の内容よりも「どう?」と目を向けてくれること自体にありがたさを感じることもあります。

 

Q:牧野さんは、すごく「がんばる」人に見えています。ご自身の「がんばる」という感覚はどれくらい強いものなんでしょうか?

牧野: 選択肢をふやすために勉強するんだよ、と親からよく言われていました。学歴はひとつのきっぷだよって。納得して、自分で決める素地を親がつくってくれたんです。選択肢を示してくれて、決めるのは自分。だから言い訳できない。やるしかないんですよね。

 

Q:「ゆっくりできるようになる」という話はよくわかったが、企業などで「生産性」が求められる社会を、どう変えていくべきだと思いますか?

高橋: 合わせてください、と要望を伝えることも大切だとは思いますが、それよりも「“ゆっくり”には“ゆっくり”のいいことがある」ことを伝えていければと思っています。どちらかが「合わせる」よりも、互いに歩み寄れるようになりたいですね。

 

事前に参加者から寄せられていた質問

 

 

対話のはじまりは、目を向けることから。

1時間半のセッションを終えて、ZOOM越しではありますが、あたたかい場になった実感がありました。参加者の皆さんも、そう感じてくださっていたら良いのですが。

ダイバーシティやインクルージョンというテーマには、実にいろんな観点があります。でも、だからこそ話すしかない。さまざまな立場から、対話を重ねていくしかないのだと思います。

「何と声をかけてくれたか、よりも、目を向けてくれたこと自体が嬉しいと感じる」。セッションの中で高田さんから出た言葉に、筆者はハッとしました。

私たちは、自分とは違った困難を抱える人に対して、何を話すべきか? と考えることが多いのではないでしょうか。けれども、まず目を向けることからコミュニケーションは始まるんだ。対話のきっかけが生まれるんだ。ふっと視野が広がったような感覚がありました。

終了後のアンケートでは「自分の業務にも活かせる気づきがあった」という回答や「今後も参加したいですか?」の質問に、ポジティブなフィードバックが集まっています。今後も新たなゲストを迎えて実施した際は、cococolorでレポート記事を掲載する予定です。ご期待ください。

 

*牧野友香子さんが運営するデフサポのホームページとYoutubeチャンネルです。ぜひ一度アクセスしてみてください。

デフサポ 公式HP

Youtube デフサポチャンネル

取材・文: 高橋慶生
Reporting and Statement: yoshiotakahashi

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