スポーツ×ロボット 『ボッチャ』と『プログラミング』を掛け合わせた次世代型スポーツとは!?
- デジタルプランナー
- 石田温香
ボッチャとは?
ボッチャは、人がボールを投げたり蹴ったりするパラスポーツです。最初に投げた白いジャックボール(目標球)を目印にして、赤・青のボールを投げいかに近づけるかを競います。
パラスポーツ独自の種目であるものの、障がいの有無に関わらず誰でも参加できるルールが特徴です。
もっと手軽に、新しい切り口のボッチャ
すべての人が一緒に競い合えるスポーツとして拡がりを見せるボッチャですが、その魅力をもっと手軽に、ボッチャとプログラミングを掛け合わせた兄弟スポーツの小学生向け講習会が2022年8月2日渋谷で開かれました。
ロボットを組み立てるところから始まるボッチャ
ロボット+ボッチャ=“ロボッチャⓇ”
この新しい要素を取り入れたボッチャは“ロボッチャⓇ”と呼ばれています。ボールを投げるためのロボットの組み立てから自分でスタートする必要があります。
更にボッチャと異なる部分として、ボッチャのコートは12.5m×6mという体育館を使用して行うような競技であるのに対してロボッチャⓇは10分の1の大きさのコートで実施できる省スペースな競技です。
簡単に作れる・動かせるロボット
ロボットを組み立てるといっても、ねじやトンカチが必要なものではなく、電源を搭載していて、タブレット上でプログラミングを組むことによって動かせるSPIKEという教育向けのレゴブロックを組み立てて作ります。
組み立てた後は、タブレット内のプログラミングツールを利用して、ボールを投げるときのアームの回転角度や速さを調整。調整が完了したら起動ボタンを押してアームを動かすことでボールを投げることができます。つまり自分の運動能力でボールを投球するのではなく、テクノロジーを駆使した競技です。
プログラミング…初体験の私も理解できるわかりやすさ
筆者もこの体験会で既に組立てられているロボットを使ってボールを投げてみました。『プログラミング』を用いて『ロボット』を作り・動かすと聞いて、未知の世界だった私は不安いっぱいで、準備頂いた組立て済みのロボットに一安心…しかし、もし組立てから行う場合も分かりやすい説明書が用意されており、投げるためのアームの動かし方の調整もタブレット上でできるシンプルなものでした。
どんどん工夫したくなる
最初はどれくらいの角度や速さでどこまでどのようにボールが飛ぶのか見当が付かず、適当に投げるとコート外まで飛んでしまったり、手前で止まってしまったりしました。一筋縄ではいかないからこそ試行錯誤を重ねる意味がありそうです。前述のとおり、競技コートが小さいのでボードゲーム感覚で遊ぶことができます。やり込むほど思った通りのところにボールを投げることができる点はボッチャと同じですが、運動が得意かどうかで勝負が決まらないスポーツのため、心理的に誰でもチャレンジしやすく感じました。
ロボッチャ®は「集中力」の獲得や「チームビルディング」経験にも
この日は8名の小学生が参加しました。2名ずつのペアになり、ロボッチャⓇの遊び方の説明、実際に動かす練習の時間を経て、最後はペア同士1対1で試合をしました。
参加した小学生のほとんどは初めてのロボッチャⓇ。しかし、普段からスマホやタブレットを使用しているのか、プログラミングの画面に抵抗を感じることなく、スタッフのアドバイスを基にそれぞれ調整をしていました。
ロボットがレゴ製であるため、組立て直すことにも興味が向くのかアームの改良に熱心に取り組む姿が印象的でした。改良に集中する姿を見たスタッフの方が
「たくさん投げる練習をした方が試合で勝てるよ」
と声をかける場面もあり、アームの改良だけでなく投げる角度や速度の試行錯誤を重ねていました。ロボッチャⓇはプログラミング学習として受け入れられているのではなく、一つの遊びとして楽しまれていました。
当日参加した小学生の多くは初対面同士。最初は物静かな様子でしたが、ロボッチャⓇを始めると自然と会話が弾んでいきました。ペアを組んだ2人の間で「このほうが良いよ」と声を掛け合うだけでなく、他のペアのロボットや投げ方から学んで真似るペアもいて、真似をされた側が「真似しないでよ〜!」と闘志剥き出しな場面も。スポーツのゲーム性による気持ちの高ぶりが小学生たちの間で起き、終わった後はノーサイドで仲良くなっていました。
また、チームで活動する時に起こる、『最初は相手の出方を見ている→目的を達成するために話し合いを始め→途中で意見がぶつかってけんかをする→でも最後にはロボッチャⓇを通して仲良くなる』というチームビルディングの仕組みを手軽に楽しく取り入れられる点もロボッチャⓇの強みだと感じました。
ロボッチャ®はボッチャの入り口を増やすための戦略でもある
ロボッチャⓇが誕生した背景は、ボッチャをもっと沢山の人に広めるために何かテクノロジーと掛け合わせることはできないかというものでした。はじめは自動得点カウント機能のようなボッチャそのものの中にテクノロジーを組み込む案などもありましたが、ボッチャの精神に貢献でき、もっと楽しめる仕組みを模索しました。ロボッチャⓇを考案した株式会社エデュソル*がプログラミング教室を運営していたこともあり、プログラミングとスポーツであるボッチャを組み合わせるロボッチャⓇが誕生しました。
異なる分野を組み合わせることで、ボッチャに関心を持ってもらう入り口がスポーツ、パラ(障がい)以外にも、ロボットやプログラミングに関心がある人にまで拡がりました。
教育機関をはじめ様々な場でロボッチャⓇを
今後は今回のような体験会を継続的に行うだけでなく、学校教育の場にも取り入れてもらうことができないかを模索しているようです。また、初動は使用の対象として小学生を想定していますが、年齢・性別、障がいの有無関係なく楽しめる特徴を活かし、大学生が教育を学ぶ際にボッチャの使用方法を小学生に教えるという使い方や、企業でのチームビルディングに活用するなど、様々な機会での活用提案が検討されています。
体験から感じて学ぶ
小学生がゲームを重ねる度に自らの工夫を凝らして勝つために真剣になる様子を見ていると、ロボッチャⓇの面白さやロボッチャ®の経験を通じて小学生が獲得する集中力・コミュニケーション能力などを客観的に感じることができました。筆者自身、ロボットでボールを投げてみても、思うように飛ばないもどかしさを感じ「もう一度…!」という気持ちが沸き上がってきて、何度もトライしていました。
気軽にゲームに参加できる仕組みだからこそ、「プログラミング」や「インクルージョン」といった実態がつかみにくいキーワードに対して向き合い体験型で学ぶことができるし、ロボッチャⓇを通じてその先にあるボッチャにも興味を抱くきっかけになると感じました。
*株式会社エデュソル:ロボッチャⓇの開発・競技化を推進する母体企業
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