ユナイテッドアローズから学ぶサステナビリティ推進のポイント
- ビジネスプロデューサー
- 秋田ゆかり
みなさんは、ユナイテッドアローズのSARROWSをご存知でしょうか?
ユナイテッドアローズはサステナビリティ活動をSARROWSとネーミングし、循環するファッションを追い求める「サーキュラリティ」、永遠に美しい地球をめざす「カーボンニュートラル」、そしてそれらの活動を健やかに支える「ヒューマニティ」をテーマに掲げて取り組んでいます。
本記事では、SARROWSが立ち上がったきっかけから、ファッション産業の未来まで、ユナイテッドアローズ サステナビリティ推進部 玉井さんにお話を伺いました。
株式会社ユナイテッドアローズ サステナビリティ推進部 玉井 菜緒氏
SARROWSはなぜ立ち上がったのか?
そもそも、SARROWSはなぜ立ち上がったのでしょうか?SARROWSが立ち上がった背景を紐解いていくと、自社のオリジナル性・自分ゴト化というキーワードが見えてきました。
玉井「2020年4月にユナイテッドアローズでは、サステナ文脈における重要課題を定めました。課題を特定するにあたり、重要視したのは抜け漏れがないようにすることです。一方で、抜け漏れがないように課題設定はできたものの、特徴がなくなってしまい、ユナイテッドアローズでなくても他社にも当てはまるものになってしまいました。
網羅性を重視した結果であるため、ある程度仕方がない部分はあるものの、従業員の自分ゴト化が進まなかったことに加え、ステークホルダーの巻き込みも十分にできていませんでした。そこで、ユナイテッドアローズらしくサステナビリティ活動を進めていくため、アプローチを工夫することにしました。SARROWSという名前でレーベル化し、各目標に対して明確な数値を設ける、という方法です。」
各社サステナビリティ活動を積極的に行っているかと思いますが、この自社のオリジナル性・自分ゴト化というポイントはとても重要だと感じました。各社が取り組んでいるからこそ、自社の取り組みと他社の取り組みの差別化が難しくなったり、言葉が上滑りになってしまったりすることがあるかと思うからです。
その中で、SARROWSが取り組んでいるような見せ方や雰囲気作り、達成すべき目標の数値化は、どの会社においてもサステナ活動を推進する上で、取り組むべき重要な点だと感じました。
お客様も巻き込みながら進める「サーキュラリティ」
ここからは、SARROWSの活動を詳しくお伝えしていきます。まず、「サーキュラリティ」の活動についてです。
玉井「サーキュラリティは、循環するファッションを追求する取り組みです。例えば、紙袋の利用を減らす取り組みや、衣料品の回収・再利用を行うリユース・リサイクルプロジェクトのUA RECYCLE ACTIONを実施しています。プロジェクトを広げていく上では、特にお客様の巻き込みを意識しています。例えば、ポイント還元やクーポンの配布を行うことで、お客様にもメリットを感じてもらいながら、サーキュラリティの活動に参加しやすいサービスを提供しています。」
こういった活動は、お客さんにも好評を博しているようです。エコバッグを持って買い物をしてくれるお客さんも増えたり、店舗に来て初めてユナイテッドアローズのサーキュラリティ活動を知った人も「良い取り組みだね」と賛同してくれたりする人が増えてきたとのことでした。個人の力だけでは、中々実現しないサーキュラリティの活動も、どう仲間づくりをして達成していくかが押さえておくべきポイントになりそうです。
縦・横のつながりが重要な「カーボンニュートラル」
続いてご紹介するのは、「カーボンニュートラル」の活動です。
玉井:「カーボンニュートラルの取り組みでは、透明性を高めることに力を入れています。カーボンニュートラルはサプライチェーン全体で取り組むことが重要です。そのため、誰がどのように素材を調達して、商品を生産しているのか、そしてその商品をユナイテッドアローズがどのように提供しているかをきちんと把握・管理するように努めています。一方で、商品が数万点に及ぶことやサプライチェーンが長く複雑であるため、全てを把握しきれていないこと、お客様への開示が不十分であることが課題です。」
また、サプライチェーン全体で取り組むという縦の連携に加え、ファッション業界という横のつながりでカーボンニュートラルに関する取り組みを進めているようです。
玉井:「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)にも参画しています。この団体は、ファッション・繊維業界を中心に、サステナブルファッションに関する知見の共有、ファッションロスゼロ・カーボンニュートラルに向けた協働、国内外の重要動向の先行把握、業界内の共通課題を改善するために必要な政策提言を行っています。個社では解決が難しい課題であるため、共同で解決策を導き出していくことを目指しています。」
これまで横のつながりで団体を形成して議論する機会が少ない中、JSFAは設立されたようです。どの業界においても川上・川中・川下で連携する重要性を、玉井さんのお話を伺いながら感じました。
従業員を笑顔にする「ヒューマニティ」
最後にご紹介するのが、「ヒューマニティ」活動です。
玉井:「ヒューマニティの活動では、ユナイテッドアローズに勤める従業員が生き生きと働けるような環境作りを目指しています。例えば、従業員に好評なのは各種資格取得や外部研修です。様々な分野で活躍できる力を身につけてもらうことを意識しながら、ビジネス支援を行っています。こういったビジネス支援は、結果として社内にも還元されると考えているからです。」
また、人事評価に偏りがないか、不公平さが出ていないかを確認するために、数値をこまめにチェックしているようです。
玉井:「人事評価が定性的にならないように、数値管理は細かく行っています。男女別で差が出ていないか、人事評価基準の不透明性はないかなど、できるだけオープンに、かつ数字を参照することで公平な評価を実施できるよう努めています。」
従業員のエンゲージメントスコアも2021年時点で70%を記録しているユナイテッドアローズですが、2030年にはこのスコアを80%にまで押し上げることを目指しているとのことでした。高い水準の目標であるものの、ユナイテッドアローズならばこの目標も実現させるのであろうという期待に胸が膨らみました。
ユナイテッドアローズでは、「束矢大學」(束:ユナイテッド、矢:アローズ)という名の下で社内研修を実施しています。
SARROWSの活動は学びの宝庫
今回取材を行う中で、SARROWSの活動は学びの宝庫だなと改めて感じました。「サーキュラリティ」「カーボンニュートラル」「ヒューマニティ」という、あらゆる会社が今後取り組んでいかなければならない課題に対し、どうオリジナル性を出すか、顧客や他社と連携していくかという知見を得ることができたと感じました。
今回のSARROWSからの学びを、ぜひ読者のみなさまにも活用頂ければと思います!
取材協力:
株式会社ユナイテッドアローズ サステナビリティ推進部 玉井 菜緒氏
1999年、株式会社ユナイテッドアローズ入社。情報システム部門でコミュニケーションツールの企画・運用を行う。自ら志願して2004年に社会・環境活動の推進業務担当に就く。継続してCSR推進業務に携わり、経営企画室 広報・CSRチームを経て、現在はサステナビリティ推進部部長を務める。
注目のキーワード
関連ワード
-
ポテンシャルドライブPotential Drive
これからの働くを考える企業横断プロジェクトチーム「ワークリードプロジェクト」が提唱する、これからの時代にあるべき”働く”を考え、作り上げていくための指針としての概念。 「ひとりひとりが秘めたポテンシャルを最…詳しく知る
-
特例子会社Special subsidiary company
障害者の雇用促進・安定を目的に設立される子会社。障害者に特別に配慮するなど一定の条件を満たすことで、特例として親会社に雇用されているものとみなされる。企業側は、障害者雇用率制度で義務づけられている実雇用…詳しく知る
-
越境ワーカーEkkyo-worker
各参加企業が選定した課題に対し、出向の形ではなく相互インターンシップという柔軟な枠組みで対応することが特徴。社員の学びの場となるだけでなく、多様な見識や経験を持つ社員による活発な意見交換を通して、イノベ…詳しく知る