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7 Aug. 2019

日々の暮らしに、生きる歓びを運ぶアート。 〜ACM Galleryが提案する、人生を謳歌する美しき選択

伊藤亜実
cococolor編集員 / ライター
伊藤亜実

 

■都心の一等地に現れる、唯一無二のアートギャラリー「ACM Gallery」。

 

恵比寿西一丁目交差点。おしゃれなカフェやバーや所せましとひしめき合う五差路の一角に、ひときわ明るく目立つ外観のギャラリー。それがACMギャラリーだ。

ギャラリーの奥に広がるスペースには、開催されている展覧会の一押し作品が展示されており、ほんままいさんによる作品「はな」の温かい色味が印象的だ。

ACMギャラリーのオーナーであり、一般社団法人 Arts and Creative Mind 代表理事の杉本志乃さんは、ニューヨークやロンドンでアートについて学び、日本での画廊勤務を経て、アートコンサルタントとして活動してきた。2018年8月30日に、障害者アーティストの作品を展示する、常設のギャラリーを開館。障害者アートのギャラリーが、なぜ、こんな都心の一等地に?杉本さんにお聞きした。

 

 

■アールブリュット?アウトサイダーアート?そこにある価値。そして引力。

ギャラリー開館のきっかけは、2017年に原宿の商業施設GYLEで行った展覧会「アールブリュット?アウトサイダーアート?それとも?そこにある価値」展だ。障害者アーティストによるアート作品を、福祉とは離れ、その作品性で評価してほしい、そして、新しいお客様、若い人たちにこそ触れてほしいという思いで、原宿のど真ん中で展覧会を開催した。

結果は上々。来場したお客様からも、作家に障害があるからすごいのではなく、作品そのものの魅力を口々に評価してもらえた。

「障害者アーティストによる作品には価値がある。」お客様の反応で、自分が良いと思ってきたこれらの作品を、世に強く押し出していくことの価値、意義を確信した。

そこで、次に杉本さんがチャレンジしたのは、一時的な展覧会だけでなく、常に多くの人の目に触れたり、購入されたりする環境の整備だ。まずは既存のギャラリーにその素晴らしさを説いて回った。しかし、なかなか一緒に取り組んでもらえるギャラリーとは出会えない。一時は諦めかけたが、この価値を多くの人に伝えたいという思いは募るばかり。そこで、あるとき、「自分でやってしまおう。きっと力を貸してくれる人がいるに違いない。」と決意をした。

出会ってきたアート作品たちの、魅力を超えた引力に、杉本さん自身の未来が、動かされた瞬間だった。

そのときの想いを、杉本さんはこう語る。

 

「2020年は日本にとって大きなきっかけになる年です。私自身も、どうしてもやりたかったこの取り組みを実現するのに、この機を逸してはいけない。そう思いました。」

 

自ら立ち上げたクラウドファンディングのミッションは成功。そうして、この恵比寿の一等地に、障害のある作家の作品を、一年中いつ行っても見ることができ、そしてさらに、購入して家に持ち帰ることのできる、日本で初めてのギャラリーが誕生したのだ。

 

■消費社会に埋もれるよりも、アートを買うことで生まれる関係性を楽しんでほしい。

開館から1年、やっと軌道に乗ってきたと、語る一方で、杉本さん自身が金銭面で負担するような場面もまだまだ少なくないという。それでも、閉じたり、当初の想いを曲げたりせずに続けるのには、杉本さんが20年以上関わってきたという、「日本のアート業界全体」への想いも、強く関係している。

 

「日本では、アートを購入するということは一般的ではありません。数がたくさん売れないから、ギャラリーも富裕層向けの高価なものだけを扱うようになってしまう。

でも、もっと日常的にアートを購入することが浸透すれば、若手アーティストが生きていく道となり、アーティストを目指す人が生まれ、より良い作品が生まれる循環になっていきます。」

「作品を買うことは、作家を支援すること。服を買うのと同じくらいのお金を使って、たった一人の、ユニークで、新しい視点を持った作家との交流が生まれる。そのことは、何物にも代えがたい経験になります。」

 

ACMギャラリーで展示する作品の価格は、数万円程度。確かに、一般人が購入できる価格設定になっている。

例えば、このほんままいさんの作品「とりと葉っぱ」は5万円。

岡部志士さんの作品「Scratch Works Yay!Yay!No.3」は12万円。

今展覧会のアーティストが通う障害者施設では、他にはない油彩を使った制作に取り組んでおり、それが作品としての完成度を上げ、表現の幅を広げている。

ほんまさんの作品では、鳥は身近な人たちを表すという。作家が愛にあふれた環境で、安心して制作していることがにじみ出ていて、観ているこちらも心地よくなってくる。

 

■生活空間に、世界でただ一つの、温かく包み込まれるようなアート作品を。

「現代美術はどんどん難解になってきています。相当なレベルの知識と教養が必要とされ、一般人にはどうしても近寄りがたいものになってしまっています。それに比べて、このアーティストたちの作品は、作為のない、アートへの純粋な衝動が作らせているもの。だから、ダイレクトに心に響くのです。」

 

杉本さんがそう言語化する障害者アーティストによる作品たちは、なるほど、表現することの喜び、純粋な感情が表れているように感じる。

筆者にとって、現代美術鑑賞は、その作品の意味などを向き合う対話の時間だ。一方で、今回の展覧会では、小難しい話は置いておいて、あなたがただ一人、そこに存在していることが奇跡なんだ、と、あらゆることを肯定してもらっているような、包み込まれるような空気感が広がっていた。

 

もし、あなたがこの週末に恵比寿の街を歩くことがあったらば、ぜひ気軽に、ACMギャラリーに立ち寄ってもらいたい。

美術上級者も、そうでない人も。直感的に心地よく鑑賞でき、ありのまま生きることの美しさ、歓びを感じられる作品に出会えるだろう。

 

 

≪現在会期中の展覧会情報≫

青い鳥を探せ!:ほんままい、岡部志士の2人展

会期:6月15日(土)〜8月11日(日)

場所:ACMギャラリー

http://aacm.tokyo/exhibitions/%e9%9d%92%e3%81%84%e9%b3%a5%e3%82%92%e6%8e%a2%e3%81%9b%ef%bc%81/

 

≪今後の展覧会情報≫

現代 アウトサイダーアート リアル ー現代美術の先にあるものー

Contemporary Outsider Art REAL – What comes next for contemporary art? –

会期:2019年9月7日-10月27日

場所:GYRE Gallery

http://aacm.tokyo/exhibitions/%e7%8f%be%e4%bb%a3%e3%80%80%e3%82%a2%e3%82%a6%e3%83%88%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%80%e3%83%bc%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%88%e3%80%80%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%80%80%e3%83%bc%e7%8f%be%e4%bb%a3%e7%be%8e/

 

 

取材・文: 伊藤亜実
Reporting and Statement: atimo

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