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22

Apr.

2021

interview
17 Mar. 2021

食のダイバーシティ・アテンダント #2 「実は日本はニッチ市場?日本から考える、フードダイバーシティ」

河合はるか
プランナー
河合はるか

3回に分けてお届けする、『食のダイバーシティ・アテンダント』

ダイバーシティ・アテンダントとは、「多様な人々への深い理解とまなざしを持つ人」のことです。

今回は衣食住の中でも国や宗教、文化で大きく異なる「食」について着目していきたいと思います。

 

前回の記事はコチラ

食のダイバーシティ・アテンダント #1 「コロナ禍で加速した食のダイバーシティ?」

 

前回は、食の制限の分類を中心に、日本で広がりつつあるヴィーガンメニューを紹介しました。

Vol.2の本記事では、フードダイバーシティ(食の多文化共生)をテーマに自社商品へイスラム教、ベジタリアン、ヴィーガン対応を行う名古屋の老舗味噌煮込みうどん屋、大久手山本屋の青木裕典さんにお話しを伺いました。


大久手山本屋でのムスリムフレンドリーメニューとフレンドリーポリシー

味噌煮込みうどんは、大豆からできた味噌、小麦が材料の大半であるため、醤油と鶏肉の変更で対応。

ハラール食材が混在する調理道具などは、別のものを使用しているそうです。

 

食の禁忌(タブー) に取り組んだきっかけ

Q.青木さんが、ムスリム対応を行おうと思ったきっかけを教えてください。

「前職では、ITベンチャー系で建設機械をテーマにしていたのですが、建設機械のバイヤーは、中東の方が多く、競りの場では、3割がムスリムなんです。

お昼には、『日本の人~イスラム教徒の人~』というかたちで、オークションの主催者がお弁当を渡してくれるのですが、ムスリムの人々はいつも手でインドカレーを食べていたんですよ。

その時は、支給されるお弁当について、何か思うことはなかったのですが、実家のうどん屋を継いでから、そういえば・・・僕たちでいう普通のご飯を食べられない人って結構いたな。ということに気づきました。」

 

せっかく来てくれたのに、

この味噌煮込みうどんを食べることができないのか?

ムスリムの友人だけ違うものを食べなくてはいけないのか?

前職の関係で訪れたムスリムの友人たちとの食事の場で、このような課題に直面したという青木さん。

だからこそ、ご飯はその場で同じものを食べられるほうがいいにきまってる。と、

「食」を扱う仕事に就いたからこそ、捉えることができたダイバーシティ・アテンダントの一例です。

 

対応への反対意見は、元々あったダイバーシティ・アテンダントの発想で

ハラールメニューを正式にリリースをする前でも、ムスリムの友人を経由して1日に10名ほどのイスラム教徒の来客があったそうですが、名古屋のムスリム向け料理は、ケバブやインドカレーなどしかなく、東京大阪京都に比べると、圧倒的に遅れているとのこと。

実際の名古屋モスクのレストラン情報(宗教法人名古屋イスラミックセンター名古屋モスクより)を見ても、まだまだカレーとケバブが多いことがわかります。

 

Q.味噌煮込みうどんをハラール対応にするのには、どのくらいの時間がかかりましたか?

「実際、味噌煮込みうどんは、アルコール添加していない醤油と、鶏肉をハラールチキンに替えることで対応ができるので、ハラールメニューにするのにかかったのは、1か月ほどです。

ただ、販売までに半年かかったのは、100年続く老舗で「ハラール対応」していくか、という考え方の部分でした。

日本語じゃない言葉がいっぱい聞こえてきたら、今までの常連さんはどう思うのだろう?という声がありましたね。」

 

グローバル化、そしてダイバーシティ・アテンドをしていく上で、青木さんが食のコンサルを務める企業の多くでも、現実問題としてこのような意見はあるようです。

味噌煮込みうどんの老舗にも、同じ課題がありました。

 

Q.どのように、社内を説得していったのですか?

「大久手山本屋に関しては、僕が無理やり、やりました笑

元々、母親がケアマネジャーをやっていたこともあって、店内でも視覚障がいの方への対応をしていました。考え方としては、一緒のことじゃない?と説明したら最初は心配していた従業員も分かってくれました。

お客様に関しては、”食事を起点に、多文化共生の場を作りたい”という僕の気持ちと、同じ味噌煮込みうどんを美味しそうに楽しむムスリムの方の様子が伝わり、居心地の良い店舗空間を作ることができましたね。」

座敷だけでなく、足の不自由な方や車いすでも使用できるテーブル席や、お一人様でも気兼ねなく来店できるカウンター席の設置など、至る所に気が配られています。

 

日本の国産思考へのこだわりと、世界規格への遅れ

Q.ハラールチキンの輸入そのものは、難しくないのですか?

「実は、業務スーパーなどで普通に売っています。オーストラリア、ブラジルから入ってくるお肉は全て、ハラールと畜がしてあるので、輸入されているチキンのほとんどがハラールチキン(※1)です。」

(※1)ハラールチキン:一般的にはハラールチキンは、イスラム教徒がと畜を行い、アラーにお祈りをしながら行う、血抜きを丁寧にしたもの。

ー―

コストコで実際にチキンコーナーを見てみると、ハラール対応されているチキンを見つけることができました。

「身近なところだと、バーガーキングの無料のケチャップもよくみるとハラールマークがありますよ!」と青木さんから教えてもらったので、身の周りのハラールマークを探してみたいと思います。

 

Q.ハラールチキンの各国の対応は、ニーズがあるからなのでしょうか?

「ニーズがあるというよりも、食を世界規格にしておくことを目指しているということだと思います。オーストラリアから船を出して、インドネシアに寄る時に、ハラールチキンでないと売れないため、オーストラリアやブラジルは国策として、その多くがハラール対応していいるのでしょう。

比べて、日本の鶏肉、和牛の多くが世界規格ではないので、なんでも食べられるエリアにしか売れていないというギャップがあります。この食の世界規格、実は日本は遅れています。」

 

ニッチな市場ジャパン

今回のキーワードは、「食の世界規格」。

食材の世界規格を知り、日本人の食文化は、決してスタンダードではないということに気づきました。

無意識のうちに、ムスリム対応・ムスリムメニューというように、『ムスリムに対応している』という視点をもっていたのです。

日本人の食文化は、決してスタンダードではない。

むしろ、ニッチなんだ。という視点が身についたことで、食への向き合い方が180°変わりそうです。

 

次回も引き続き、青木さんの取材から『食から広げ、繋げるダイバーシティ・アテンダントの未来』 を考えていきます。

 

 

青木裕典さんプロフィール

家業の味噌煮込みうどんの有限会社山本屋の5代目だけでなく、フードロス改善、多文化共生対応、北米展開支援を行うキールアンドカンパニーグループ株式会社の取締役でもある。

食のロス、ダイバーシティ関係の講師活動や愛知県企業との連携など活動は広く、多岐にわたる。元々は、海外の建設現場へ建設機械を届ける事業のスタートアップにも関わった、若き敏腕代表。

 

 

 

取材:増山晶、高橋大、河合はるか

文:河合はるか

取材・文: 河合はるか
Reporting and Statement: haruka

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