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Apr.

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10 Nov. 2021

“世の中とLGBTの グッとくる接点をもっと” やる気あり美の「理解とラブの両輪」とは

河合はるか
プランナー
河合はるか

「やる気あり美」というクリエイターチームをご存じでしょうか。

“世の中とLGBTの グッとくる接点をもっと”をテーマに、なんだか笑っちゃうけど愛のある、LGBTコンテンツを生み出しています。

記事やアニメーションに実写動画。さらには音楽に脚本?イベント?!まで、幅広く活動されています。

今回、やる気あり美のエンターテイメント性にかねてより惹かれていたcococolor編集部員の熱いアプローチで取材が実現いたしました。

 

実は、やる気あり美は2021年にはいってから、YouTubeの更新やHP上のコンテンツも更新がない状態です。

そして、2021年も終わろうとしています。解散ですか?!もうコンテンツは更新されないのですか?!

今回は、やる気あり美にかける思いと、活動の今を編集長の太田さんにお伺いしました。

 

■「自分たちのための」居場所が欲しかった。

雑談8割だという、やる気あり美のミーティング。

“やる気あり美”というネーミングもさながら、その雑談からユーモアあるコンテンツが多く生まれている。

 

どうして、LGBTQをテーマにしたコンテンツ制作をはじめたのか?

まずは、やる気あり美の誕生秘話を伺いました。

 (左上:やる気あり美 太田さん/左下:やる気あり美 ゆーさん) 

 

Q.どのようにして”やる気あり美”は誕生したのですか?

「僕が新宿2丁目のクラブで踊り狂っていたとき、隣にいた人と始めたのが始まりなんですけど…笑」

 

そう。はじまりはいつだって、偶然。

あの日、あの時、あのクラブで、現在のメンバーである、みしぇうさんに出会ったそうです。

 

Q.クラブで意気投合!からの出会い。どんな想いを込めた活動ですか?

「ここ数年でも状況は変わったと思いますが、5年ほど前のLGBTの居場所って、極端に分けてしまえば大きく2つで。

二丁目のようなくだけた場と、NPO団体などが運営する真面目な場だったんです。どちらも重要な場なんですけど、僕は当時、二丁目を居場所とは思えなかった。

歓楽街は大人のディズニーランドみたいなものなんで、そこに住みたいくらいのガチ勢がいる一方、たまに遊びに行きたいだけの人もいて。僕は後者でした。大好きだけど居場所という感じではないな、みたいな。

なので真面目な場所もいろいろと通ったんですけど、

『さあ、今からLGBTの人権について語り合いましょう!』と言われても当時は自分ごとに思えなくて。

僕はただ自分が自分らしくいれる場所を探していたので、この二つの間というか、真面目さもカジュアルさもあるような、ホッとできる居場所を作りたいと思った、というのが1つ目のキッカケです。」

 

「もう1つは、

LGBTにかかわる大事な知識や情報に、多くの人が関心を示さないことに悔しさを感じていた、というのも大きいです。

どうすれば一人のLGBT当事者として伝えたいことを、受け手にとっての聞きたいことにできるのか。

そう考えた時に、コンテンツの力を借りたいな、と思うようになりました。

コンテンツを楽しんでいる中で自然と何か気付きがあったり、持ち帰るものがある。

そういったものが作りたかった。だから、やる気あり美では、コンテンツを中心としたクリエイションを続けてきました。」

 

Q.やる気あり美の仲間たちはどうやって集まったのですか?

「姉の友達もいるし、新卒の同期もいますね。この人たちは気が合うぞ!という僕の直感です。

 この子いたらまた面白くなりそう。モー娘。増やすみたいな感覚です。笑」

 

 日本の未来はまさに、Wow Wow。

これは、世界がやる気あり美を羨む日が近いかもしれません。

 

「共通しているのは、みんな面白いものが好きってことですね。

セクシャリティのつながりよりも、面白いものを作りたい!という思いのつながりを感じます。」

 

■狙いと笑いのバランス

Q.やる気あり美の活動で、太田さんが意識していることはありますか?

確かな狙いを持ちながら、狙いすぎじゃないコンテンツをつくること。 ですね。

コンテンツである以上、面白がってもらいたいですし、考えすぎないで見てもらいたい。

ただ面白いものをつくるなら、自由に作るんですけど、

僕たちは、”世の中とLGBTの グッとくる接点をつくる”という明確な狙いがあるので、狙いすぎは避けてこうね、と頑張ってます。全然うまくいかないことばかりですけどね。」

 

確かに、狙いすぎると笑えないですし。

LGBTをテーマにする中で、これって笑っていいの…?と正直、感じる場面もあります。

でも、やる気あり美のコンテンツって、ついクスっと笑いがこぼれます。

 

「僕、笑いっていうものが好きなんです。

笑いって「笑おう」とか「笑わずにいよう」とかできなくて、「笑っちゃう」もので、

だからこそ誰かを傷つけてしまう暴力性を孕んでいるし、一方で人の気持ちを一気につなぐパワーも持ってる。

そのスリルに賭けたいというか、その側にいたいというか、そんなことをいつも考えています。

 

だからやる気あり美のコンテンツを作る上でも、どうしても笑える方向で挑みたくなってしまいますね。

どうすればこの笑いが、暴力にならないのか。どう暴力にせず、可能性につなげていくのかという視点を大事にしています。」

 

やる気あり美のチームスローガンには「理解とラブの両輪」という言葉がある。

「狙いと笑いのバランス」はまさに、LGBTへの正しい理解、つまり論理的な人権の話を含めた狙いと、人の心を動かすラブのある笑いなのだろう。

 

 

Q.やる気あり美は、今はどのような活動状態なのでしょうか?活動休止中?

「今は、修行の時。なんですかね。

こうして細々とでも続けてくると、それぞれの力不足があらわになるというか。もっとコンテンツを作れる“地肩”を鍛えなくちゃいけないと思うようになりました。僕自身もあまり表には出していませんが、コソコソ頑張ってます。

 

今までは、LGBTというテーマがあるから見てもらえるというコンテンツが多かったと思っているんですが、

これからはもっともっと、コンテンツとしてかっこいい。素敵と思われるものを作れたら、と思います。」

 

確かに、一番直近にリリースされたMarriage For All Japanさんの動画


「おしえて!同性婚~ウチらはどうやって応援すればいいの?」は、今までのやる気あり美のコンテンツとは少し扱う内容が違うように感じました。

 

「これに関しては、すごくゴリっと狙いのある、ど真面目なテーマを取り扱ったものですが、

今こういう直球の企画をやるのってかっこいいなーと僕は思ったんです。

元々、『やる気あり美はゆるい』と言っていただくことが多かったんですが、自分としてはゆるいコンテンツをつくっているという自認はあまりなくて、その時代、時代にメッセージ性をもった、かっこいいコンテンツってなんだろう?と考えながら作ってきました。

やる気あり美を始めた5、6年前は、LGBTに対する社会的サポートはまだまだ期待できない時代で、

だからこそ『サポートなんかなくても楽しくやっていきま〜す』みたいなゆるさが僕にとってはかっこよかった。

 

ですけど、そこから沢山のアクティビストやいろんな方の活躍で社会が変わり始めて、今じゃそういうスカした感じというか、かわした感じがダサい気がするんですよね。

たとえばKemioくんって自分の動画の中でソーシャルイシューを取り扱う時、『ウチらで変えてこうね!』ってよく言うんですけど、

今って『大事なことだからちゃんと変えていった方がよくない?言った方がよくない?』という気運がある。

 

だから、こういう大事なテーマをドーンと取り扱うのっていいんじゃないかなと思って、作りました。」

 

■カミングアウトには正解の回答なんてない。

筆者がやる気あり美のコンテンツで、堪えきれずクスっと笑ってしまうのが、約4年前にやる気あり美で配信されていたシリーズ。”カミングアウトされる愛しのノンケたち”です。

LGBTであることを、職場の同期や高校のイツメンにカミングアウトされた場合にどうしたらいい?というシチュエーションをユーモアたっぷりで描いている映像作品です。

寝起きでのカミングアウトや、幼なじみのギャル。という細かく稀なシチュエーションまで網羅されています。

 

例えば、「海外帰任で一皮むけてきました」感のすごい、最近家を買った同期編なら

 

さりげなく3人で飲みに行こうよと誘ってくるのに、最後に社員旅行の部屋は別にしてくれよな。というようなやり取りがあります。

太田さん曰く、友達にはなりたくない。らしいですが、同期ならではの絶妙な距離感は、彼なりに大事に思っているという気遣いを感じます。

「最後の一言いらない~!」という指摘も誤解を生まないための工夫もバッチリです。

 

もう1本、筆者が好きなのは、

女性高時代のイツメンで映画を観ると、やたらめっちゃ泣く、彼氏いない いいやつ編

そもそも寝起きにカミングアウト?と思う方もいるかもしれませんが、これもまた絶妙なタイミングだと思いました。

イツメンで映画を観て、夜に話そうとおもったら寝てしまった…

ああ、タイミングを逃したのかもしれない。という時。

様々な妄想が働く中での、このイツメンの対応がたまらなく、イイんです。

 

イツメンの女子は、質問攻めしているようで、寄り添い攻めをします。

「明日、うち泊まって!?」「クッキーたべる?お母さんがつくってる」「バイトあったけど休む!」というようなやりとりには心救われます。

 

Q.どのような思いで制作されたシリーズなんですか?

「カミングアウトへの回答って、関係性次第で一般化できないものなんですね。

この愛しのノンケたちを題材に一番表現したかったのは、

上手じゃなくても『あなたのこと、大事におもっているんだよ。』と伝えたい人たちの素敵さでした。

 

もちろん、大事に思っているなら何を言っていいわけではないですし、カミングアウトを受けたことを誰かにアウティング(※1)してもいけません。

カミングアウトは雑に扱うべきではないです。

ですが、それでもやっぱりカミングアウトの反応に正解はないと思うんです。

 

僕なんて、仲の良い友達にカミングアウトしたら『今年一、笑った。』って言われて、いまだに腹立ってるんですけど。笑

でも、それが彼らしくて嬉しかった。全くもって不正解の反応ですけど、僕にはあの子なりの気遣いだったんだなぁ。と分かります。」

 

 

愛しのノンケたちの制作には、『あなたのこと、大事におもっているんだよ。』というラブが込められていると知り、

さらにシリーズとやる気あり美の世界観に飲み込まれていきました。

やる気あり美は絶賛活動休止中です。

 

が、この世はとても便利なことに、いつだってどこでもコンテンツを見ることができます。

YouTubeや太田さんのTwitterをチェックしながら、活動再開を待ちましょう。

 

Q.太田さん、これからもやる気あり美、楽しみしています!

「5年休止とか全然ある気がします…!笑

でも、常にやる気あり美でやりたいこと、できることを考えていますので、どうか気長にお待ちください!」

 

太田さん、ゆーさん、ありがとうございました。

 

 

(※1)アウティングとは

「あの人って同性パートナーいるらしいよ」など、ある人のセクシュアリティを許可なく第三者に言いふらしたり、SNSに書き込むこと。カミングアウトは当事者が自分で相手にセクシュアリティを打ち明けるものであることに対し、アウティングは自分でなく他の人が勝手に行うという点が異なる。

参考出展:JobRainbow

 

取材・文: 河合はるか
Reporting and Statement: haruka

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