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Dec.

2021

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18 Nov. 2021

アウトサイダーアートから考える、 エンタテインメント×ダイバーシティの可能性

厚木麻耶
クリエーティブ・テクノロジスト
厚木麻耶

アウトサイダーアートは、美術の教育を受けず、独学や趣味として素朴に制作された美術作品を指す言葉だったが、日本では障害のある人によるアート作品を「アウトサイダーアート」と呼ぶことが多い。今回、セガサミーホールディングス株式会社(以降、セガサミー)が主催するアウトサイダーアートの展示イベント2021 Art of The Rough Diamonds展に参加してきた。

 

■ 「障害がある」ことで正当な評価を受けられない現状を打破する

「エンタテインメントコンテンツ」「遊技機」「リゾート」の3つの事業を中心に幅広いフィールドでエンタテインメントを提供しているセガサミーは、エンタテインメントを通して、障害のある方の活躍の場をつくりたいという思いから、アウトサイダーアートの展示イベントを開催している。海外ではアウトサイダーアートは莫大な金額で取引をされる事例も多いが、取引の中間にいる人たちが搾取をし、アートの制作者に入る金額が限られることも少なくない。制作者が障害を持っていることで、正当な評価を受け入れられない現状を変えるべく、この展示では、アートの制作者が自身の作品の値付けを行い、展示会場内で作品を直接購入できる仕組みとなっている。

セガサミーが開催するアウトサイダーアート展は今回で2回目。昨年開催された第1回では62点の出品があり、2時間の展示時間で21点の作品が売れるほどの大きな反響があった。作品は、NPO法人Art of The Rough Diamondsと一般社団法人Arts and Creative Mindが、沖縄から北海道まで、ひとりひとり作家さんを訪ねて回り集めている。

 

■ アウトサイダーアートの魅力は親しみやすいモチーフ

展示会場では、オープニングイベントとしていくつかの作品をピックアップし紹介された。障害のあるアーティストは言葉でうまく伝えられない分だけ、心にある思いやパッションをアートとして表現する。色使いや力強いタッチはそこから生まれるそうだ。

作家:堀口好輝さん
厚い紙に鋭利なもので引っ掻いて作品を制作する。

 

 

作家:国保幸宏さん
「これはなにを描いているでしょう?」というクイズ形式で紹介。「正解は、フルーツサンドです」と答えが出た瞬間、納得と意外性に、会場では「あ〜!」と歓声が上がった。

 

作家:藤田ひなのさん
すべて一発一筆描きで描かれている。とてもカラフルで世界観が可愛く、飾ったら部屋を明るくしてくれそうだ。


 

 

作品展示の様子

作品を見て感じたことは、描かれるモチーフの多くが身近なものであることである。フルーツサンドや、犬・ライオン・猫などの動物、学校の体操服など、日常生活で誰もが目にしたことがあるような親しみやすいモチーフのものであった。描かれているモチーフを知っているからこそ、作家と自分の視点の違いを知り、意外性が高く、より愛着を持てるようになるのではないか。アウトサイダーアートの魅力は、ここにあると感じた。

 

■ エンタテインメントは社会をカラフルにする

ダイバーシティ&インクルージョンに積極的に取り組むセガサミー。その特例子会社セガサミービジネスサポート株式会社代表である一木社長に、今後の展望についてお話を伺った。

「セガサミーのミッションは『感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに。~』です。エンタテインメントの力で社会を元気に、カラフルにしていく、というミッションはグループ社員全員に共通する全ての判断・行動の大切な軸となっています。当然、障害者の活躍支援という切り口においても、感動体験で社会を元気にするというストーリーを大切にしていきたいと考えていて、支援の施策検討では相当なこだわりを持って判断しています。アートも、音楽も、ゲームも、沢山の人を夢中に、魅了するエンタテインメントです。エンタテインメントは受ける側のみならず、創る人自身をも元気に、幸せにする素晴らしい力があるという事を、様々な活動を重ねる度に実感し続けています。」と一木社長はいう。

一木社長はグループ本社の中で、兼務するホールディングスの部署と、障害者雇用の特例子会社を隣同士に配置し、障害のある社員とない社員が同じ空間で働く環境を作ったそうだ。「ホールディングスの部署のメンバー全員がこれまでずっと障害者と接点がない生活で、アンコンシャスバイアスがあったことに気づいた事が最初の一歩でした。二つの部署が出来るだけ共創する機会を作り、グループ全体で推進する試験的取組みのような仕掛けを色々と試しました。一緒に過ごす時間の中で、障害のある社員に伝えたいことを伝えるにはどうしたら良いのだろうと健常者の社員たちは、障害特性を考慮しながらコミュニケーションの取り方を考え、自発的に発案をするようになりました。そのアイデアの一つ一つがとても素敵で、障害のある社員をサポートしているつもりが、健常者の社員たちこそ沢山の学びを得て成長に繋がっています。」という。

人はみんな違うし、自分と他人も全然違う。だからこそ、頭の中だけでダイバーシティを完璧に理解することは難しい。一緒の環境で過ごすことで、想像の中では気づかなかった小さな問題を見つけることができるのだろう。

また、セガサミーは障害者雇用にも力を入れており、宮崎県にあるフェニックス・シーガイア・リゾートのクリーニング工場は、特例子会社が運営しており、700室を超えるホテルの客室から出る洗濯物や、プロ野球などのスポーツ合宿利用としても人気が高いため、スポーツ選手の大切なユニフォームなども全て、障害のある社員がクリーニングのプロとして仕事にこだわりをもって従事している。リゾートのゲストは、クリーニングをしてくれる人が障害者であろうが健常者であろうが関係なく、ホテルやレストランといった全ての施設やサービスに高いクオリティを求める。障害の有無ではなく、あくまで仕事のクオリティの高さで評価される環境があるからこそ、ここで働く障害者の方たちは、プライドを持って質の高い仕事を追求し、ホテルの他の従業員やお客さんもその価値を認めているという。

 

■ おわりに

人と人は、完全にわかり合うことが難しい。だから、対立してしまうことがある。反対運動が起きることがある。それによって悲しむ人や怒る人など、嫌な気持ちになる人が出てきてしまう。しかし、エンタテインメントは、嬉しい、楽しいなど、ポジティブな感情の動きをつくり、「共感」という形でハッピーに人と人とを繋いでくれる。エンタテインメントは、ハッピーに人の価値観を変え、社会を変える可能性を秘めていると私は思う。

 

 

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・一般社団法人Arts and Creative Mind
https://cococolor.jp/acmgallery
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・アウトサイダーアート発信プロジェクト「PR-y」
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取材・文: 厚木麻耶
Reporting and Statement: mayaatsuki

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