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19 Mar. 2021

広がる、スポーツの楽しみ方~パラ陸上競技の魅力とは?~

八木まどか
メディアプランナー
八木まどか

2020年は、多くのスポーツイベントが中止や延期となり、開催できても観客の入場制限などがあったものの、メディア等で見聞きする機会が増えてきたパラスポーツ。

とはいえ、「興味はあるけれど、楽しみ方がわからない」「何が魅力なの?」と感じる方もいるかもしれません。

本記事では、そんな方々に向けて、パラスポーツの中でも高い認知度を誇る「パラ陸上競技」の楽しみ方を、陸上競技経験のある3人の編集部員が紹介します。

☆パラ陸上競技とは

「走る」「跳ぶ」「投げる」の各種目において、さまざまな障害の種類・程度によってクラス分けして戦う競技。特徴は、義足など器具の使用、伴走者などアシスタントの存在、こん棒投げなどパラ陸上競技ならではの種目やルールもあること。パラリンピックの夏季大会競技で参加人数は最多。

 

パラ陸上競技を知ったきっかけ

―編集部員T

都内の大学で陸上競技サークルに所属し、長距離に取り組んでいたのですが、複数の大学が集まる練習会で、現在パラ陸上競技の日本代表として活躍するH選手に出会いました。当時は同じくらいのタイムだったので、ライバルとして、お互い意識する存在でした。

出会った当初は、弱視という彼の障害に気づきませんでした。ただ、時間をともにする中で、例えば夜間の練習では、周りが見えにくくなってしまうようで、暗くても見えやすい色のビブスを着用していたことはありました。でも特別なことは、本当にそのくらいだったと思います。

彼とはライバルとして仲良くなったこともあり、今でもときどき連絡を取っています。彼が大会に出場する際は、応援に行ったり、ニュースをチェックしたりします。やっぱり彼が活躍すると嬉しいですね。

 

―編集部員Y

大学の陸上部にいた先輩が初めて出会ったパラアスリートでしたが、先輩とは、練習も試合も一緒にしており、パラスポーツの話をしたことはありませんでした。

その後、仕事でパラスポーツに関わることになり、障害のある選手たちに出会う機会が増えました。そこで先輩に連絡を取り、義足や義手を使う人向けのランニング教室に連れて行ってもらったりしました。

 

―編集部員S

私も大学まで陸上競技をしていて、全国から選手が集まるチームだったのですが、パラアスリートは一人もいませんでした。他の部にはパラリンピックで活躍する選手もいたりしましたが、当時は接する機会はほとんどありませんでした。

パラ陸上競技に惹かれたきっかけは三つあります。一つ目は、東京2020オリンピック・パラリンピックをきっかけにもっといろいろなアスリートを知りたいと思ったこと。二つ目は、SNSで義足クラスの選手の映像を見かけたときに、走りが驚異的で衝撃を受けたこと。三つ目は、幼い頃に日本縦断マラソンをしていた全盲のランナーを、私の叔母が伴走していたことです。

※参考 世界のパラ陸上競技名場面集

 

楽しみ方①:違いの中で確立される、モチベーションとパフォーマンス

―編集部員S

パラ陸上選手の競技やコメント等を見ていると、順位や記録を目指す楽しさ以外にも、別のモチベーションがあるのではないか、選手それぞれに違う走り方はどういう練習をしているのだろうと、パフォーマンスの裏にあるストーリーに興味を持ちます。

例えば義足で8mの跳躍をする世界を、私には想像できません。それも、走り方がみんなそれぞれ違い、自分だけに最適化された走りをしている点に衝撃を受けます。選手それぞれのストーリーや身体の特性が、競技に全て表れているようで、観ていてとてもワクワクします。

スポーツ観戦が人の楽しさは、選手や試合のパフォーマンスの高さだけではありません。どんなレベルの選手・試合であろうと、自分の限界に挑む人たちの姿には、心を動かされたり、さまざまな発見があるので、その観点からパラスポーツやパラアスリートに惹かれているのかもしれません。

 

―編集部員Y

パラ陸上競技選手と一緒に走った時、例えば肩甲骨の使い方や、左右のバランスの取り方などが、非常にうまいとわかりました。義足で走るだけでも、相当な訓練が必要。それをあれだけのレベルで扱うためには、身体の使い方を熟知していないといけません。

つまり、自分の身体を最大限活かすために、選手一人ひとりが自分の限界に挑んでいる、ということだと思います。

 

―編集部員S

陸上競技をしている人は、シューズなどにも興味があると思うのですが、パラ陸上競技特有の器具にも興味があります。どんな器具を使って、どんなパフォーマンスをしているか。車いすレーサーや義足、義手を使いこなせるだけでもかっこいいと思います。

 

―編集部員Y

パラ陸上競技の魅力の一つは、器具を使いこなすという観点なので、注目するとおもしろいですよ。ちなみに、車いす選手は、グローブをつけて競技しますが、なんと3Dプリンターで作ったりしているそうです。

 

楽しみ方②:サポートメンバーも、アスリートとして戦う

―編集部員Y

パラ陸上競技の魅力として、“チーム”ということがあげられると思います。これは、“個人スポーツ”と思われがちな陸上競技には意外な要素かもしれません。

例えば、義足の選手は、義肢装具士の方と二人三脚でチャレンジすることもあります。器具との相性は記録に大きくかかわるので、選手の特徴が分かっていて、信頼できる方でないといけません。練習や試合にも同行している技師の方もいますね。競技用車いすも、車いすを製作する人も一緒に戦っている様子が見て取れます。

伴走者の存在も同様です。また、視覚障害クラスの走り幅跳びでは、アシスタントがつくこともあります。選手は、見えない中で、全力疾走して、踏み切って、跳躍するわけですが、それを声や音で誘導する人のことを言います。何度も練習を重ね、信頼できていなければ絶対に任せることはできませんよね。チームワークがなせる技だと思います。

 

―編集部員S

大森盛一さんという、400mを専門とする元オリンピック選手は、競技引退後、一度は民間企業で務めたのち、現在は視覚障害クラスの選手の伴走をしていらっしゃいます。

伴走者は、選手と同じ速度で走らないといけないので、まずアスリート並みのトレーニングをしなければなりません。また、選手とタイミングや動きまで正確に合わせなくてはならないですし、その時々の選手のコンディションにも合わせなくてはなりません。これは相当なチームワークが求められるものだと思います。選手だけではなく、伴走者の方のモチベーションやストーリーも興味があります。きっと、No.1を目指すだけではない想いもあるのだろうと思います。

よくスポーツでは、サポートメンバーも一緒に戦うと言いますが、パラ陸上競技の場合は、本当に一緒に戦っているので、もはやサポートメンバーと言うより、ともに戦うアスリートかもしれないですね。

楽しみ方③:選手のパーソナリティに注目

―編集部員T

実は私は、パラ陸上競技全般にはあまり興味を持ったことがありませんでした。あくまでも 、つながりのある選手のファンであって、大会を見に行っても、本人だけ応援しているような感じです。

プライベートでも親交があって、その選手のパーソナリティも知っているので、当然のように応援したくなるんです。なんで?とわざわざ考えたことはないですし、これからも応援していきたいと思います。

 

編集部員Y

頑張る人を応援したいという純粋な気持ちは、スポーツファンの根底にあるものだと思います。

最近では、パラアスリートがSNSを使って発信したり、試合や練習風景をメディアで見たりする機会が増えていて、選手のパーソナリティを知るきっかけが多くあります。特にコロナ禍では、パラアスリートたちもさまざまな取り組みや発言を行っており、その多様性も普段より可視化されているように思います。医師と競技を両立していて新型コロナウイルス対策の最前線で活躍する選手 や 自宅でできるユニークなトレーニングを紹介する選手など、国際パラリンピック委員会(IPC)のウェブサイトにもいくつかありました。 

 

スポーツに“横”の広がりをくれる、パラスポーツ

―編集部員S

私は大学まで競技をしてきて、記録のNo.1だけを目指す世界にいましたが、パラ陸上競技のアスリートが目指すNo.1は様々な視点があり、パラ陸上競技ならではの広がりを感じました。

 

―編集部員T

パラ陸上競技は、私が取り組んでいた陸上競技に“横”の広がりを与えてくれるものだということです。

陸上競技はすごく過酷で、常に記録を追い求めなければいけないし、タイムで人と比べられがち。ただそれは広がりの少ない、一本道を突き進むような、“縦”の世界。

でも、本当は、それぞれの人が、自分はどこまでいけるのだろう?という純粋な楽しさが、陸上競技をはじめ、さまざまなスポーツにはあるのだと思います。人によって目標や環境も違う。そんな中で、チームで取り組んだり、自分なりの工夫をしたりと、スポーツの楽しさを“縦”だけでなく“横”にも広げてくれるのが、パラスポーツかもしれません。

 

―編集部員Y

パラスポーツだから…と意識しすぎることはないのかなと思います。競技のルールはあっても、楽しみ方にルールはなく、人それぞれ。

ところで、パラ陸上競技の日本選手権が今週末開催され、オンライン観戦もできます。オンラインで楽しめるパラスポーツの大会やイベントはたくさんあるので、まずは気軽にのぞいてみるのをおすすめします!

 

・・・

 

☆WPA公認 第32回日本パラ陸上競技選手権大会

日程:3/20(土)~21(日)

会場:東京都世田谷区 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場

オンライン配信URL:https://jpa-2021jc.gnzo.com/

詳細:日本パラ陸上競技連盟HP https://jaafd.org/

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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