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May.

2020

interview
24 Apr. 2020

優しさの見える化をしたい ~「席ゆずりますマーク」制作者、椎野祐輔さんインタビュー

海東彩加
ソリューション・プランナー
海東彩加

「席ゆずりますマーク」をご存知だろうか。

妊婦さん自身がつけるマタニティマークに対し、

周囲の人々が「妊婦さんに席を譲りたい気持ちがあることを表明する」マークである。

 

今年の初め頃、あるツイートから話題となり、

「席を譲りたいが、なかなか声をかけづらい」といった想いを持つ人たちから支持を集めた。

 

今回は「席ゆずりますマーク」の考案者である椎野さんに、

考案のきっかけから作成時のこだわり、また「席ゆずりますマーク」に込めた想いを伺った。

 

ちなみに今回の取材では、

安全に配慮し取材を行うため、感染症対策としてテレビ会議にて取材を行った。

 

 

■自身の経験から生まれた「席ゆずりますマーク」

 

そもそも、この「席ゆずりますマーク」はどのような経緯で生まれたのか。

 

椎野さんのパートナーが妊娠9か月のある日、二人で電車に乗り込むと、座席がすべて埋まっていた。そんな中、席を譲ると声をかけてくれたのは優先席に座るお年寄りの方。

 

このとき、周りにいた若い人たちがなぜ席を譲らなかったのか、と考えるうちに、椎野さん自身の経験と重ね合わせて、「席を譲りたい気持ちはあるが、声をかけづらい」ことが原因なのではないかという考えに行きついた。

 

席を譲らなかった人たちへ不満の感情を持つどころか、相手の立場に立って考える思慮深さが発案のきっかけとなったようだ。

 

「普段の自分ならアイデアだけで終わっていたかもしれない。」と椎野さん。

ちょうどこの日、椎野さんが尊敬する方と会う機会があったという。その際に電車内で起きたこと、もしマークがあれば問題解決になるのではないか、という話をしたところ、「それは、すぐに作った方が良い!」と背中を押してもらったことがきっかけとなり、制作に踏み切った。

 

椎野さんのパートナーの出産前にマークを作成することを決意。

そこから1週間でデザインの考案、発注をし、無事1か月で作成するに至った。

 

 

■マークのデザインに込められた想い

 

たった1週間でのデザイン考案であったが、誰もが使いやすく、理解しやすいよう、マークにはいくつかの工夫が施されている。

 

一つ目は、よく知られたマタニティマークを使用したこと。

ピクトグラムを作成することも考えたが、新しく作ったマークでは一目でわからない可能性が高く、車内でつけている人がいてもその場では理解されないと思い、元々多くの人が知っているマタニティマークを使用している。

 

二つ目は、「席、ゆずります 声かけてください」という具体的なアクションの言葉を入れたこと。

敢えて、ターゲットを“妊婦”、アクションを“席を譲る”という行為に絞って伝えるマークを作成することで、このアクションをきっかけとし、妊婦や妊婦以外の人にサポートを行う人が増えることを狙っている。

 

三つ目は、誰でもつけやすいデザインにしたこと。電車を利用する頻度の高い通勤中の人でもつけやすいよう、スマートな印象になることを心がけたという。マークとしては珍しいタグの形状であること、可愛く柔らかい印象のマタニティマークが施されていても可愛く見えすぎないこともこのマークの魅力だ。

 

デザインへのこだわりの甲斐もあり、これまでに老若男女問わず約9000個も購入されている。中には、企業としてまとめて購入する方、在日外国人からの購入もあるという。

 

サイズ違いも販売されている

 

 

 

デザインへの工夫に加えて、当事者ではない立場からの発信だったからこそより多くの共感が得られたのではないだろうか。当事者の気持ちをよく理解し、本人が伝えづらいことを受け手目線で代弁してくれるというマークの役割は、椎野さんだからこそ生み出せたものである。

 

 

 

■予想外の話題の広がり方に、椎野さんが困ったこととは…

 

 

「席をゆずりますマーク」というと爆発的に話題になった印象がある。椎野さん自身この話題の広がり方は予想外だったという。知人や友人にマークを配ったのち、徐々にSNSでも情報発信を行おうと思っていたところ、椎野さんの知人の知人による投稿をきっかけに大きな反響を呼ぶこととなった。

想定外の大きな反響に、完全に個人で行う発送作業にはとても苦労したそうだ。

 

個人で発送したとは思えない量…

 

マークの購入者の声やSNSでの反響としては、「こんなマークが欲しかった」という声が多くあったそうだ。中には、マークを購入してから、自ら困っている人に声をかけられるようになり、「お守り代わりとなっている」といった声もあった。

 

椎野さん自身も驚いたと話すのは、普段ヘルプマークを使用している方が購入してくれたこと。自分自身の体調の良い時には、席を譲りたいという思いで購入したそうだ。

 

 

■マークの本当の目的は「優しさの見える化」

 

椎野さんは、このマークの本当の目的を、周囲の人が協力的であることを知るための「優しさの見える化」だという。

これまでに9000個売れたという実績も、妊婦の力になりたい優しい人が9000人もいるという安心感につながるのではないか。

 

もしこのマークがなくなっても、周囲の人たちが協力するための勇気を持ち続けることができ、当事者は困っているときは助けてほしいと安心して声をかけられるようになることが椎野さんの描く理想の社会だという。

 

 

 

■次の目標は、駅の売店での販売

 

椎野さんは次のステップとして、オンラインだけではなく店舗での販売を目指しているという。オンライン上では認知してもらえる層が限られているため、店舗での販売をすることで、今まで以上に広くマークの存在を伝えていくことが目的だ。

 

第1歩として整体院などターゲットに近い場所での販売を考えているが、いずれは駅の売店などより多くの人の目に留まる場所での販売を目指している。

 

今まで非営利でマークの制作や発注、販売まで行っていたが、それは椎野さん自身が育休期間中だったからできていたこと。育休が明ける12月までには、もう少しシステム化できるよう準備を進めたいとのことだ。

 

 

今回の取材を通して、今まで妊婦さん以外が他人事だと感じていた問題を、誰しもが自分事化できるようにしたことがこのマークの意味の一つではないかと感じた。

ダイバーシティを考える上でも、当事者以外の人たちでも、自分にかかわる問題であると感じられることが重要なのではないだろうか。

 

 

 

 

 

■「席ゆずりますマーク」公式HP

椎野さんを支援したい、マークを購入したいという方は下記リンクより公式HPをご覧ください。

http://sekiwoyuzuru.starfree.jp/

 

取材・文: 海東彩加
Reporting and Statement: ayakakaito

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