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18

Sep.

2019

column
26 Aug. 2019

バイアスに挑むヘアケアブランド

大塚深冬
デジタルプランナー
大塚深冬

その検索結果に、女性はどう表わされていますか?

「偉大な画家」、「成功したエンジニア」と検索すると、男性の写真ばかりが表示されました。「女学生」や「アジア人女性」と検索すると、セクシャライズ された女性のイメージで画面は埋め尽くされました。

このようなインターネットの検索結果は、社会における人間模様を正しく反映しているといえるでしょうか。これから世界を学ぼうとしている少女たちに、女性の過去の功績や未来の可能性を見せてくれるものといえるでしょうか。

 

バイアスに気づき、バイアスに挑む

cococolorでは以前、バイアスがいつどのように生まれるかという問いに対して、「バイアスって、いつどこでどのようにうまれるのだろう? ー ネット検索と肌色から考えてみた ー」という記事を掲載しました。インターネットが十分に普及した世界の国や地域で、人々は検索行動によって欲しい情報を欲しい時に手に入れられるようになりましたが、その利便性の裏で、検索エンジンの提示する検索結果は、受け取り方次第では時にバイアスを生む可能性があるという点について考えた記事です。

このようなインターネット検索とバイアスに関する課題について、前回は自らの肌色を定義するサービスを紹介しましたが、本稿では検索結果からバイアスを取り除く検索サービスS.H.E. を紹介します。

※公式ウェブサイトより

 

S.H.E.が見せる世界

S.H.E. は、「女性」や「彼女」を指す「she」という単語と「Search Human Equalizer」の頭文字からできています。「Equalizer」は「イコールにするもの、等しくするもの」という意味を持つ言葉で、インターネット検索結果から女性におけるバイアスを取り除こうと今年4月に P&Gのヘアケアブランド、パンテーンがローンチしたサービスです。以下はS.H.E.というツールの理念です。※本ツールは英語のみ対応

S.H.E. transforms the way we see women by transforming the way we search. With S.H.E.., you’re helping give women’s accomplishments the visibility and representation they deserve by elevating them in search results. S.H.E. will continue to help transform the world through search.

邦訳:S.H.E.は、検索行動の変革を通して女性に対する見方に変革をもたらすものです。S.H.E.を活用することで、検索結果から女性たちの功績に対して正しい可視性や承認の機会を与えることができます。検索を通じて、S.H.E.は世界の変革を支援し続けます。

※公式ウェブサイトより

 

S.H.E.はGoogleクロムというインターネットブラウザに任意で追加できる拡張機能です。通常、ブラウザに表示される検索結果はユーザーが入力する検索語句によってアルゴリズムが導き出しますが、S.H.E.がインストールされた状態のブラウザでは、検索結果から一部の内容が隠されたり、掲載順序や掲載場所に並び替えられたりします。S.H.E.は Search Human Equalizerの名と理念に基づき、検索結果によって女性のachievements(功績)やpotential(可能性)が歪められないように再整理を行うツールなのです。

実際にS.H.E.の公式ページでは、アメリカにいる作家のうち56%が女性であるにも関わらず、インターネット検索結果における女性の割合は25%であったというワシントン大学とメリーランド大学の共同調査が紹介されています。

また、S.H.E.に対応しているキーワードは以下の通りですが、「GREATEST」「FAMOUS」「BEST」「TOP」という形容詞と職業や社会的役割がセットになっているキーワードが目立つことからも、特に、社会課題の解決や自己実現をこれからしていこうとする若い女性たちにS.H.E.は寄り添っていると言えるでしょう。

※公式ウェブサイトより

 

誰が誰のためにしているのか

サービスとして、S.H.E.はテクノロジカルなツールといえますが、このツールがユニークであるのは、開発者がIT企業ではなく美容ブランドという点にもあります。公式ページによると、S.H.E.の開発にあたって、パンテーンは20年以上イェール大学と共同研究してきた女性の髪と自信の関係性について調査を基にしているといいます。その調査で明らかになったことは、女性は自分の髪に自信を持てる時には、自分自身の能力や目標を達成したいという気持ちに対して自信を持てるという結果がでています。しかし一方で、95%の女性は自分の髪に自信を持っていないというのです。自社ブランドを通じて自社のターゲットである女性を応援したいというブランドの意志を、このツールに感じ取ることができます。

※参照:TRANSFORMING THE EVERYDAY TO TRANSFORM THE WORLD

ダイバーシティ&インクルージョンに関する社会課題に企業やブランドが取り組む際には、「その企業だからこそ取り組むべきことは何か?」、「そのブランドだからこそ解決できる課題は何だろうか?」という視点や、自社の製品やサービスへの誇りや、事業領域との親和性、ターゲットに対する真摯な姿勢などが求められます。

また、ユーザーとして私たちに求められていることは、現存の検索アルゴリズムを批判することでもなければ、S.H.E.の検索結果のみを信じることでもありません。社会全体の検索行動が検索アルゴリズムに影響する仕組みである以上、情報の受け手側である一人一人のユーザーが、そこにバイアスが生まれてしまう可能性を知ることが大切といえるでしょう。

※S.H.E.がローンチされた4月30日にアメリカの新聞USA TODAYに掲載されたS.H.E.の新聞プロモーション(表面・裏面)

 

取材・文: 大塚深冬

 

参照:

取材・文: 大塚深冬
Reporting and Statement: mifuyu

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