I HAVE PRIDE-東京レインボープライド2019- レポート①
- メディアプランナー
- 八木まどか
4月に告知した、日本最大のLGBT関連の祭典「東京レインボープライド2019」(TRP2019)が行われました。
主催者によると、今年、代々木公園イベント広場でのメインイベントには2日間で延べ20万人が来場!私の周りにも「すごく盛り上がっていてびっくり!」と教えてくれた友人が何人もいました。
TRPは来場者数だけでなく、出展するブースの数もクオリティも年々パワーアップし話題になっています。そこで、TRP2019に出展した企業ブースの様々な工夫をレポートさせていただきます。
「みんな」がもっとハッピーになれる場所をめざして
株式会社ストライプインターナショナルの二宮朋子さん
4回目の出展となる株式会社ストライプインターナショナルは「Fair Happiness みんなにみんなのハッピーを。」がテーマ。”生まれた場所も、年齢も、男か女かそうでないかも関係なく、幸せになる権利は誰にでも公平(フェア)に存在する”―そんなメッセージを「Fair Happiness」という言葉に込めて、洋服を作る過程で余った布(はぎれ)を使って来場者がハンドメイドアクセサリーを作ることができるブースを展開しました。海外の生産地で働く人と自分の接点を持つことで、それぞれの「Fair Happiness」を考えるきっかけの場となっていました。
ブースの様子(右上、右下)、「Fair Hapiness」を説明するパネル(左上)、オールジェンダー向けの浴衣(左下)
このテーマにした背景には、今年から経営戦略の一つとしている「エシカル(※1)」という概念があります。生産工程にいる人がどのようなモノづくりをしているかを可視化し、「作る人も着る人も幸せになる社会をつくりたいという思いがある」と二宮朋子さん(パブリックリレーションズ本部SDGs推進室)は語りました。TRPは年々、LGBT の方々だけでなくいろいろな個性を持った方と出会い、気づきを得られるイベントになってきています。そうした中で、自分たちが着る服の作り手にも目を向けることについて、身近に体験できるブースを目指していました。実際に、アクセサリー作りには親子連れなど様々な人が楽しんでいました。
また、ブースでは”Fair Happiness Gallery”としてこれまで同社が取り組んできたオールジェンダートイレや、性別に関係なく好きな柄を楽しめるオリジナル浴衣などの活動を紹介しました。オリジナル浴衣は、実際にブーススタッフの社員の方も着用されていました。
このほかにも2016年からLGBTへの取り組みを強化している同社では、アライを表明する人が40%から73%に増えたそうです(※2)。
さらに同社では、本社がある岡山での活動も続けており、意見交換を続けている当事者の方々もいらっしゃいます。今回のブース出展に際し、テーマである「エシカル」についても彼らに伝えたそうです。すると「まだ可視化しづらいLGBTの存在と、人に知られにくいはぎれの存在は通じるものがある」と言ってくれた人がいたりして、はぎれが活かされるブースに共感を持ってくれたそうです。
※1)エシカル:倫理的・道徳上という意味の英語で、人や社会、地球環境、地域への配慮を意味しています。
※2)社内のコミュニケーションアプリ「amily」でアライを表明した人の数をもとに算出しています。
グループ社員の総力を結集!
株式会社みずほフィナンシャルグループの中村真悠子さん
株式会社みずほフィナンシャルグループは、過去3回、LGBTファイナンス(LGBTを応援する金融系企業の合同ブース)の一部として出展していましたが、今年から単独ブースで展開。社内の協力者が増えてきたこと、また同性パートナーに対応した商品が生まれ、お客様からの目線が変わったので、会社の姿勢をしっかり伝えたかったからでした。
ブース前では社のSNS公式キャラクターの「あおまる」とハグをしてお互いの多様性をお祝いする企画を実施。また、ブース内部では、社員によるダイバーシティーメッセージパネルを展開。コーポレートカラーであるブルーを基調にした大きなパネルには、全国のグループ会社の社員が、お客様の多様性を大切にしているアライであることを、それぞれの言葉で表明していました。
「あおまる」もレインボーのリボンをつけて登場!
また、当事者・アライの方がどういう金融ニーズを持っているかをより理解するために、来場者に対してアンケートも実施しました。ちなみに、アンケートの回答者には社内のアライグループで手作りした限定500個のギフトのプレゼントもありました。
今まで同社ではeラーニングなどでLGBTに関する研修を行ってはいたものの、それだけでは一時的な理解に留まる人もいました。今回、上記のように社員が積極的に参加し、来場者とコミュニケーションできるブースにすることで、意識が変わった社員もいるとのことです。
グループ会社のみずほ銀行は2017年から同性パートナーに対応した住宅ローンを日本の銀行としては初めて販売しています。その背景には、3年前に初めて全社員向けに実施した研修をきっかけに、ある研修で「社員向けの取組みはあるのに、お客さま向けの取組みがない。金融サービスで困っている当事者がいる」と若手社員が問題提起したことでした。多くの当事者の協力を得て、最終的に社長に商品提案し、実際に商品化したとのことです。今年のTRPにおいても、来場者に積極的に声をかけて、「今まで捉えられなかった声を商品やサービスに反映するコミュニケーションの場とできたら」と中村真悠子さん(グローバルキャリア戦略部ダイバーシティ・インクルージョン推進室)は話しました。
世界への発信も加速!
野村ホールディングス株式会社のアライメンバーの皆さん。左から2番目が北村裕介さん
日本企業の中では比較的早い2009年からLGBTに取り組んできた野村ホールディングス株式会社。社内に社員のボランティアからなるMulti Culture Value Network(MCV)を設け、「LGBTA」(こちらのAはアライのAを意味しているとのことです)のみならず、「障がい者」、「多文化」をテーマに活動し、社員ひとりひとりの強みが十分に発揮できる環境づくりを支援しています。今回のTRPのブースもその一環として実施。3年前から出展を続け、今年大型化したブースは、カラフルなパネルやグッズがいくつもあり、金融系企業のかたいイメージと違って入りやすかったです。
具体的なLGBTAに対する取り組みとしては、アライ活動の一環として、社員食堂での啓発活動や「アライになろう」パンフレットとステッカーを作成・配布をしているそうです。また、社員向けのLGBT勉強会の開催、当事者を招いてのセミナーなども実施し、多くの社員へLGBTについて知る機会を提供しています。
その意図として、「5%のLGBT当事者が活躍できる職場にするには95%がアライになる必要がある」という考えがあると北村裕介さん(野村ホールディングス株式会社グループ ダイバーシティ&インクルージョン推進室)は説明しました。
また、野村ホールディングスは今年の4月、2017年に国際連合より発表された「LGBTIの人々に対する差別解消への取り組み~企業のためのグローバル行動基準~」に、日本の金融・証券業界で初めて正式に署名されています。今後もグローバル視点でさらに活動を進めていくそうです。
アライの啓蒙ポスター(左)とMCVの活動紹介ポスター(右)
ブースでは、同社がこれまで実施してきたLGBTAに関する活動を紹介するとともに、来場者に書いてもらった「夢」を展示。これは8GOALsという8つの口座に自分の好きな名前をつけられるサービスを展開したところ「パートナーとの思い出」など様々な名前がつけられたことから、もっとお客様の言葉を聞きたいと考えたからです。多様な言語で書かれたたくさんの「夢」は印象的でした。
これからは「ダイバーシティの考えが以前より社内に浸透してきたので、それをビジネスとうまく掛け合わせられるようにしたい。それがさらにダイバーシティ推進の起爆剤になる」と北村さんは語りました。
取り組みを続けてきた各社は、さらなる進化へ
比較的早い時期からTRPに関わってきた企業はTRPがLGBT当事者だけでなく、様々なバックグラウンドをもつ人が来場することも意識していると感じました。ダイバーシティ&インクルージョンの視点をより本質的にとらえた施策を展開し、メッセージ発信をしているのが印象的でした。
共同執筆:八木まどか・伊東孝哲
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