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25

Nov.

2024

interview
14 May. 2020

植物性ミートで目指す「すべての人が楽しめる食」

坂野広奈
プランナー
坂野広奈

環境保護などを理由として、アメリカやヨーロッパではプチブームが起きつつある植物性ミート。大手食肉メーカーに取材をした前回に続いて、日本における植物性ミートの現状を伺いました!

今回お話を伺ったのは、「テーブルを創るすべての人を幸せに」をミッションに掲げ、動物性原料 を使用しない商品を中心に 展開をする食品メーカー、株式会社SEE THE SUN社長の金丸美樹さんです。


株式会社SEE THE SUN社長、金丸美樹さん

 

大豆たんぱくを用いた植物性ミート「ZEN MEAT(ゼンミート)」を中心とした商品展開をするSEE THE SUNですが、お菓子メーカーのトップ企業である、森永製菓株式会社のグループ会社でもあります。どのようなきっかけで、植物性ミートの販売をはじめたのでしょうか。

SEE THE SUNの主力商品「ZEN MEAT」

 

元々金丸さんは森永製菓でスタートアップ支援に携わり、プロジェクトの一環で学童保育所へお菓子を供給していました。その際に、食物アレルギーのある子供がまわりと一緒にお菓子を食べられず、区別されている事を知り、「みんなが共に楽しめる食」の必要性について考え始めたそう。はじめグルテンフリーに対応したお菓子の製造を検討されていましたが、アレルゲンの混入を防ぐための製造管理体制を確立する必要性や検査に要するコストなど、高いハードルがあることが分かりました。

金丸さんの願いは、アレルギーなど特定ニーズのある人のためだけの特別な商品を開発することではなく、特定ニーズを区別しなくても、これらの人を交えたすべての人が美味しく共に楽しめるような商品をつくること。そんな中アメリカを中心に話題となり始めていたのが、植物性ミートでした。これまでヴィーガンの方が肉の代わりとして食べるものという位置づけであった植物性ミートが、味の進化やヘルシーであることを理由に、より多くの人から受け入れられ始めていたのです。グルテンフリー対応の商品を検討する中で出会った食品製造会社が、ちょうど植物性ミート商品も扱っていたこともあり、「ZEN MEAT」の販売を決めました。

こうして今では、玄米入り大豆ミート「ZEN MEAT」やZEN MEATを用いたレトルトカレーなど様々な商品展開をしています。

動物性原料は一切使用していない、ブロックタイプのZEN MEATを用いた

「照りマヨZEN MEAT丼」

 

商品販売を続ける中で、実際にZEN MEATはヴィーガン以外の方からも受け入れられているといいます。例えば、ZEN MEATの取り扱いをしているレストランで、最も大きな顧客の一つがシニア層です。ZEN MEATは動物性原料を使用していない為、胃もたれがしづらく、コレステロールなどを気にせずにお肉料理を楽しむことができるのです。また、低脂質で高たんぱくであることから、健康を気にする女性などからも人気だといいます。

一方で日本での植物性ミートの販売は、まだまだ多くの課題があります。日本ならではの課題として、植物性ミートが加工食品であることが挙げられます。食品の鮮度に加えて、「イベリコ産のハム」や「魚沼産の米」など、食品がどこの産地で生産されたものなのかということまでを重視する日本人。伝統的な食品である豆腐などを除いて、加工食品よりも鮮度や産地が分かりやすい素材のままの食品のほうが好まれる傾向にあります。

また、日本ではまだあまり植物性ミートが普及しておらず、多くの人が調理法や味に慣れていないことも課題の一つです。一般的なレストランでもヴィーガン対応メニューを目にする機会が多い欧米と異なり、日本ではまだ植物性ミートはヴィーガンの為だけの特別な食材として扱われることが多いです。そうした結果、多くの人にとって植物性ミートを食べる機会が限定的で、たまたま商品を手に取ったとしても、適切な調理法が分からず食べることをやめてしまう人がいるそう。

SEE THE SUNでは、2020年4月よりZEN MEATの販売について、親会社の森永製菓に事業移管をしたうえで、レストランや宿泊施設等向けの業務用商品のみに専念します。まずは外食先でプロに調理された植物性ミートを食べる機会を増やし、食材としての認知や味の理解が浸透してから、改めて家庭でも振舞われるように挑戦するための選択です。

 

近頃、特に若い世代を中心に、植物性ミートを日々の食生活に取り入れる人が増えています。環境保護や健康を理由に植物性ミートを食べる日もあれば、焼き肉やステーキといったお肉料理を楽しむ日もあるなど、フレキシブルに多様性のある食生活を実施しているのです。

鶏や豚、牛とならんだ第4の肉として、植物性ミートが一般的な食材の一つになる日が来るのは、そう遠い未来ではないかもしれません。

宗教や体質など特別なニーズがある人にとってだけでなく、そうでない人にとっても食生活における選択肢が増えることで、新しいメニューが生まれるのは楽しみでもあります。

新しい食文化の一つとして、植物性ミートを使った料理も試してみませんか。

 

取材・文: 坂野広奈
Reporting and Statement: hirona

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