10/11は国際カミングアウトデー ~「聞くという支援」のための3つのステップ~
- ビジネスプロデューサー
- 秋田ゆかり
10/11 は国際カミングアウトデー(英語:National Coming Out Day)。
1988年アメリカで、心理学者Robert Eichberg氏やロサンゼルスのLGBTQ+活動家Jean O’Leary氏らによって制定された日です。
日本ではまだ認知度が高いとは言えませんが、カミングアウト(=自身の性的指向や性自認について、自ら周りに打ち明けること)した人々を祝い、LGBTQ+の認識向上をめざす世界的な記念日になっています。
カミングアウトによって暮らしやすくなる場合もあれば、差別や偏見で暮らしにくくなる場合もあります。ひとりひとりの状況が違うため、カミングアウトは「するべき」「しないべき」と一概には言えず、本人の意思が尊重されるべきことです。
問題なのは、カミングアウトしたいと思っても、しにくい環境であること。
そんな状況を打破するためには、私たち一人一人が「聞くという支援」を心がけることが重要です。
ここでいう「聞くという支援」というのは、カミングアウトというとても勇気がいる行動に対して、ゆっくり最後まで話を聞くことで支援することを指します。
国際カミングアウトデーの日に、「聞くという支援」のために必要なことは何なのか、これまでのcococolor記事なども振り返りまとめながら、著者の経験を踏まえて考えていきたいと思います。
※後ほどご紹介するステップなどは、あくまで筆者個人の体験に基づく個人意見になりますので、あらかじめご了承ください。
STEP➀:LGBTQ+のコンテンツにふれる
電通ダイバーシティ・ラボ(2021)『LGBTQ+ 調査 2020』によると、57.4%の当事者が誰にもカミングアウトしておらず、また、70.2%にものぼる多くの当事者がカミングアウトしやすい環境になっていないと回答しています。
カミングアウトしにくい環境だからこそ当事者はカミングアウトをしない/できないのですが、周りのストレート層にとっては「LGBTQ+の当事者には会ったことがないから身近に感じられない」といったように、カミングアウトされない→身近に感じられない→カミングアウトされない→・・といった負の循環が存在してしまっています。
だからこそ、ストレート層がLGBTQ+を身近に感じるようなアクションが大切です。
そのために、まずはLGBTQ+のコンテンツにふれることから始めるのがおすすめです。
LGBTQ+のコンテンツとは、LGBTQ+を題材として扱ったり、LGBTQ+の登場人物が出てきたりするコンテンツのことです。
例えば、動画配信サービスのNetflixでは、LGBTQ+にまつわるコンテンツを豊富に配信しています。
(Netflixは昨年の国際カミングアウトデーに大規模キャンペーンを展開しました。)
当事者に実際に会わなくとも、コンテンツに触れることで、当事者がどんな想いを抱えているかを感じ取ったり、当事者が自分の身近にいる感覚をもったりすることができます。
著者自身もLGBTQ+のコンテンツにふれることから始めましたが、日本の映像作品でも「昨日なに食べた?」「彼らが本気で編むときは、」「ミッドナイトスワン」「カランコエの花」「おっさんずラブ」など、人気かつ有名なLGBTQ+作品も多く輩出されていますので、ぜひ見てみてください。
STEP②:LGBTQ+についての正しい知識を身につける
続いてのステップは、LGBTQ+の正しい知識を身につけることです。
ステップ➀でLGBTQ+コンテンツにふれるようにはなったけれど、当事者の方の現状や課題がまだ分からない、という方も多いかと思います。
正しい知識を身につけておかないと、実際にカミングアウトされた時に当事者に寄り添えなかったり、傷つける言動をしてしまったりすることもあるかもしれません。
そのような事態を避けるために、このステップが重要になってきます。
LGBTQ+に関する記事や本など様々なメディアを通して学ぶこともできますが、今回は2つの方法を紹介したいと思います。
まず1つ目が、各地で行われているレインボープライドに参加することです。
レインボープライドとは「“性”と“生”の多様性」を祝福するイベントであり、誰でも無料に参加することができるイベントです。
コロナの影響で昨年からリアルイベントではなくオンラインでの実施が増えており、地理的にも心理的にも参加ハードルが下がっており、いつでもどこでも見ることができるのが特徴です。(著者も自宅で東京レインボープライドにオンライン参加しました。)
イベントでは、様々なゲストを招いたトークセッションが行われたり、企業によるブース展開が開催されたりと、参加するだけで多くの知識や経験を得られるものになっています。
今年も残り少なくなってきましたが、奈良レインボーフェスタ(11/7)・明石プライドパレード(11月開催予定)・九州レインボープライド(11/6-7)などが開催予定ですので、ぜひ多くの方に参加していただきたいと思います。
続いて2つ目の方法が、電通ダイバーシティ・ラボが作成している「アライアクションガイド」を読むことです。
(電通ダイバーシティ・ラボ編集:LGBTQ+について「知る」「考える」「行動する」アライアクションガイド)
LGBTQ+の方の力になりたいけれど、どういう行動をすれば良いか分からないといった声に答えたガイドになっており、「知る」「考える」「行動する」の3つの章で構成されています。
こちらも無料でダウンロードや転用ができることに加え、図や絵柄がふんだんに使われていたり、1テーマ1ページにまとめてあったりと、かなり読みやすい資料になっています。
ちょっとしたすき間時間などに読んでいただくと、LGBTQ+の知識を身につけることができると思いますので、ぜひ読んでみてください。
STEP③:アライを表明する・発信する
最後のステップは、アライを表明する・発信することになります。
ステップ➀②だけでは、当事者はカミングアウトをされた人がLGBTQ+に対してどう思っているのか、どういった反応をされるかが分からない状況です。
だからこそ、LGBTQ+のことを理解し、LGBTQ+フレンドリーであることを表明・発信することが重要になってきます。
アライであることを周囲の人々に話したり、SNSで発信したりといった様々な表明・発信方法もあるのですが、今回は「レインボーグッズを持つ」方法を紹介したいと思います。
6色のレインボーは LGBTQ+ のシンボルになっており、レインボーグッズを持つことでアライを表明することができます。
そのため、大々的にアライを表明・発信しなくとも、レインボーグッズを持っているだけでアライであることを伝えることができるのがポイントです。
(例えば、丸井グループはプライドハウス東京とコラボしたレインボーマークが印刷されているエポスカードを発行しています。)
レインボーグッズを持っていることで、アライ同士での交流が増えたり、もしかしたら当事者が声をかけてくれたりするかもしれません。
著者もちょっとしたポーチやケースなどの小物にレインボーがあしらわれているものを持つようにしています。(そしてこういったレインボーグッズは可愛いものが多いので、持っているととてもハッピーな気持ちになれます。)
さいごに
国際カミングアウトデーに合わせて、「聞くという支援」を実践するための3つのステップを紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
もちろん紹介したステップや方法以外にも、たくさんの手法が存在しますが、そのなかでもすぐに取り組めたり、取り組みのハードルが低かったりする内容を紹介しました。
国際カミングアウトデーはこれからも毎年やってきます。
その日に私たちがどういうアクションをしているかを省みるとともに、1人でも多くの当事者が「カミングアウトしたいと思った時に、しやすい環境になった」と答えてくれるような社会を一緒に目指していきましょう。
以下のリンクもご参照いただけますと幸いです。
・一番多いのは「知識ある他人事層」~LGBTQ+に対するストレート層のクラスター分析
・LGBTQ+調査を読み解く。「知識ある他人事層」は無自覚に差別に加担している?
・LGBTQ+をアクティブにサポートする人に欠けている視点とは