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2 Aug. 2018

世界のテクノロジー・コミュニケーションの祭典とダイバーシティ(前編)

大塚深冬
プランナー
大塚深冬

私たちの日常生活に大きく関わりながら、眠ることなく進化し続けているテクノロジーという存在を、ダイバーシティの視点から探求するために始まったcococolorの新プロジェクト「TECHNOLOGY MEETS DIVERSITY」。

今回は、2つの国際的な祭典「サウスバイサウスウェスト」と「カンヌライオンズ」をダイバーシティに注目して振り返りながら、今この領域で何が起きているのか、これからどうなっていくかについて、前編と後編にわけてお届けしたいと思います。

 

さうす、ばい、さうす、うぇすと?

サウスバイサウスウエスト(South by Southwest、以下:SXSW)とは、米テキサス州オースティンで毎年開催される、音楽祭と映画祭を統合させた様な国際イベントで、毎年世界中から20万もの人が集まります。 かつてTwitterがここで誕生したことから、SXSWは新興テクノロジーの登竜門としてのイメージが強く、あるいは”ライブ音楽の都”と呼ばれるオースティンを象徴するアートフェスティバルとして注目されています。

今年のSXSWの特徴は、テクノロジー自体の先進性や話題性よりも、それが人や世界に対してどのような役割を担っているのか、担っていくべきかという点に注目が集まったところではないでしょうか。特に、ほとんど全てのセッションでダイバーシティ・アンド・インクルージョンというテーマが触れられた様に、SXSWは テクノロジーの社会に対する責任、人類の尊厳について議論する空間へと変化しているのです。 ここでは2つのセッションを例にとってみます。

 

SXSW:巨大テックカンパニーの文化革命

Uber / Break & Re-Make Your Brand with Uber

今や世界70カ国で配車ビジネスを展開する巨大テクノロジー企業、Uber。そこでチーフブランドオフィサーを務めるセント・ジョン氏がSXSWのセッションに登壇したのは、新しいサービスの紹介のためではなく、企業文化におけるダイバーシティの重要性を伝えるためでした。 

というのも、数年前Uberもダイバーシティにかかわる問題を抱えていました。2017年当時Uberに勤めていたある女性プログラマーが受けたセクハラと、それを放置したマネジメントを告発したことに端を発したものでした。セント・ジョン氏が前職のAppleからUberへとやってきたのはその直後。そこで実際に彼女が実施したインクルーシブな企業文化をつくるため雇用や人事の施策を紹介しました。

セント・ジョン氏はUberだけでなく、シリコンバレー全体として黒人や女性の雇用比率が低いことを多様性課題のひとつと捉え、シリコンバレーが一体となって雇用のダイバーシティ実現をしていくこと、そしてそれをマジョリティーが推進していくことが必要だと訴え、会場は賛同の声に包まれました。

 

SXSW:多様性は数字に貢献する

ダイバーシティ・インフルエンサー/ Resistance & Disruption Through Diversity & Data

インフルエンサーマーケティングに関するこのセッションは、ファッション業界で活躍する3名の女性アクティビティストが話し手です。

テクノロジーの発達はブログやSNSなど、一般消費者が情報の受発信ができる巨大な空間を作り出しています。同時に、インフルエンサーと呼ばれる影響力をもつ個人がうまれ、彼らの影響力を企業がマーケティング活動に起用することも増えてきています。消費者に対して直接的にメッセージを発信する従来のマーケティングと比較して、インフルエンサーが企業のサービスを宣伝するこの手法は、認知や購買意欲の向上だけでなく、企業が生活者との距離間を縮めるブランディング戦略としても注目されています。

インフルエンサーの中でも、人種や肌の色、体格や年齢などの点でダイバーシティの要素を持つ個人を”ダイバーシティ・インフルエンサー“と呼びますが、彼らはまだ、企業のブランドイメージ向上のために起用されるケースが多いといえます。しかしこのセッションでは、ある大手ECサイトで、オーバーサイズのインフルエンサーの起用が化粧品とアクセサリーの売り上げに最も貢献したという実例が紹介されるなど、その効果がマーケティングデータをもって可視化されました。

企業にとって、ブランディング活動にダイバーシティの要素を取り入れることは、マイノリティーのためだけのものという視点から脱却して、マジョリティーにも効果がでることが事実、証明されはじめているのです。

※インフルエンサーとは、ブログやSNS上で多くのフォロワーを持つオピニオンリーダーのこと。芸能人、スポーツ選手といった有名人を指す場合に加え、インターネット上で消費者の購買意思決定に大きな影響を与える個人を指す場合もある。

加えて、このセッションでは、先日cococolorでも紹介したインクルージョン・ライダーをファッション業界にも取り入れていくべきだという論調にも触れられました。今、改めて、企業にとってダイバーシティの視点がいかに重要であるかという議論が、様々な業界でおきているようです。 

 

さて、春のテキサスの次は、夏のフランス、カンヌへ。

後編では、カンヌライオンズ×テクノロジー領域についてお届け致します。

取材・文: 大塚深冬
Reporting and Statement: mifuyu

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